ネット整備が遅れている国や地域では、有線のサービスよりもモバイルサービスのほうが導入しやすいようです。理由はいろいろあります。サービス提供者としては、サービスエリアを迅速に広げられることや、有線ネットワークよりモバイルネットワークのほうが設備盗難や損壊などが少ないことが挙げられます。ユーザーにとっても、パソコンに比べて携帯電話のほうが導入費用が安く、頻発する停電時も使えるというメリットがあります。

機器選定は国の事情で左右

 導入するネットワーク機器の選定にも、国ごとの事情があります。例えば関税です。

 ブラジルでは、以前は電子機器に高額な関税を設定していました。このため、サーバーやルーター、スイッチといったネットワーク機器をブラジルに輸入しようとすると、課税額が機器の価格の数倍になっていたといいます。どうしても海外製の機器が必要な場合などは、高い税金を支払って購入していたようです。

 こうした政策は地元の産業を保護するのでしょうが、ユーザーの選択肢を狭めます。また、機器コストが高くつくため、海外のCDN事業者がキャッシュノードを迅速に展開できなかったと聞きました。

CDN Content Delivery Networkの略。配信データを複数のサーバーに分散させ、ユーザーが快適にWebアクセスできるようにする。
キャッシュノード コンテンツをコピーしてキャッシュしておく配信サーバー。

 機器の選定以外に、ネットワーク設計や機器の設定で苦労するケースも目にしました。通信事業者のネットワーク技術者に知識やスキルがない場合、機器の導入から設定、ネットワークの設計までベンダーに任せることになります。すると、ベンダーにいわれるがまま不必要に高価で豪華な機器を導入したり、理解しがたい設計で性能が全く出なかったりします。

 筆者が訪れたある国のモバイルサービスでは、通信事業者が実施するアドレス変換(NAT、ナット)である「キャリアグレードNAT(CGN)」がベンダーによって導入されていました。CGNでは、グローバル(IPv4)アドレスを有効に利用するため、複数のユーザーでグローバルアドレスを共有します。通信サービスのユーザーは多いので、一般的な家庭のルーターで利用するNATとは異なり、変換後のアドレスとして複数のグローバルアドレスを用意するのが普通です。

NAT Network Address Translationの略。IPアドレスを書き換えて転送する技術を指す。ポート番号を使ってグローバルIPアドレスを共有するNAPT(Network Address Port Translation)を指すことが多い。

 このサービスはユーザーから「つながらない」などの苦情が絶えませんでした。筆者が調べてみると、驚くべきことがわかりました。通信事業者はベンダーに、CGNに利用するグローバルアドレスは256個確保してあると伝えていたにもかかわらず、たった一つのグローバルアドレスを全ユーザーで共有する設定にしていたのです(図2)。これにより、アドレス変換ができずインターネットに接続できないユーザーが続出しました。

図2●キャリアグレードNATの設定ミスで接続できなくなっていた
通信事業者が実施するアドレス変換(キャリアグレードNAT)の設定ミスで、変換に利用するアドレスが一つだけしかなかった。このためインターネットに接続できないユーザーが続出しクレームが相次いでいた。
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