雨宮日銀副総裁:緩和副作用に目配りしつつ強力な緩和持続
日高正裕-
執行部の判断で変わることはない-上下0.2%の変動幅
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持続性という観点からは全体として金融緩和効果は強化される
日本銀行の雨宮正佳副総裁
Photographer: Akio Kon/Bloomberg日本銀行の雨宮正佳副総裁は、長期金利が急速に上昇する場合は「迅速かつ適切に国債買い入れを実施する」と述べた。2日に行われた京都市内での講演や記者会見で語った。
先月31日の金融政策決定会合で示された0%が誘導目標である長期金利が「上下にある程度変動しうる」方針について、雨宮副総裁は「金利水準が切り上がっていくことを想定しているものではない」と語った。上下0.2%程度の変動幅については「政策委員の間でも微妙な感覚の違いがある」ものの、「おおむね合意された」と説明。変動幅は「執行部の判断で変わることはない」と述べた。
長期金利は2日、昨年2月以来の水準である0.145%まで上昇。日銀は指定した利回りで国債を無制限に買い入れる指し値オペは見送ったが、同日午後、残存5年超10年以下で予定外の買い入れオペ4000億円を通知し、急激な金利上昇をけん制した。
日銀は、長期金利目標についてある程度の変動を認めたが、具体的な変動幅は発表文に明記せず、黒田東彦総裁が会合後の会見で、従来の上下0.1%から倍程度に変動しうることを念頭に置いていることを明らかにした。債券市場では日銀が実際にどこまで長期金利上昇を容認するか試す動きが続いている。
ソニーフィナンシャルホールディングスの菅野雅明チーフエコノミストは1日付のリポートで、上限の0.2%は「当面維持される」とみる。しかし、円相場が1ドル=120円を超える円安になり、米国から円安批判が出てくるような局面になれば、0%程度の目標は変えずに上限を「引き上げてくる可能性は残る」としている。
副作用に目配り
雨宮副総裁は、長期金利の変動を容認した理由について「緩和の副作用にも目配りしつつ、強力な金融緩和を持続させること」だと述べた。「持続性という観点を踏まえれば、全体として金融緩和効果は強化されることになる」と主張した。
ただ緩和の継続は、貸し出し利ざやの縮小による収益力低下を通じ、金融機関の経営体力に累積的に影響を及ぼし、「金融仲介機能が停滞方向に向かうリスクがあることも認識」とも説明。リスクについても「しっかりと点検していく」と語った。
日銀は長期金利柔軟化に加え、「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」とした政策金利のフォワードガイダンス(指針)を導入。指数連動型上場投資信託(ETF)や不動産投資託(J-REIT)の買い入れ額の変動も決めた。
雨宮副総裁は「常に適切な政策運営の枠組みや政策運営の仕方を柔軟に考える必要がある」と指摘。「今後の効果や副作用の出方によっていろいろ考えていくべきだ」と述べ、指針に関わらず今後も政策運営の修正があり得ることを示唆した。
年間約6兆円のETFの買い入れ額の変動については「どの程度増えたり減ったりするかは市場動向に依存して決まってくる」と述べ、「今の段階から必ず増えるだろうとか、必ず減るだろうと言うことは適当ではない」と語った。
20年度の2%は困難
経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、18年度以降の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)を軒並み下方修正。20年度は1.8%上昇から1.6%上昇に引き下げた。
雨宮副総裁は、物価目標については「2020年度までに2%を実現することは難しい状況」と明言。需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く持続し、現実の物価の上昇が予想物価上昇率の高まりにつながるモメンタム(勢い)を維持することが、「実現に向けた最も確実なルート」だと話した。