【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は1日、2千億ドル分(約22兆円)の中国製品を対象とした第3弾の対中制裁を巡り、追加する関税率を当初の10%から25%に引き上げるよう米通商代表部(USTR)に指示した。米政権は7月に対中関税の第1弾を発動したが、中国側も報復関税を課して膠着状態に陥っている。トランプ氏は圧力を強めて中国の妥協を促すが、貿易戦争が泥沼化する懸念もある。
トランプ米政権は中国の知的財産権侵害を批判し、7月6日に340億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課す対中制裁を発動した。さらに第2弾として160億ドル分の中国製品にも同率の関税を課すとしており、8月中に追加措置を発動する見通しだ。
ただ、中国もすぐさま米国製品に報復関税を発動し、両国は折り合うことなく貿易戦争に突入している。そのためトランプ政権は7月10日、対中関税第3弾として2千億ドル分の中国製品6000品目に10%の追加関税を課すと表明していた。
トランプ氏は1日までに、中国への圧力を一段と強めるため、2千億ドル分の輸入品の関税率を10%から25%に引き上げるようUSTRのライトハイザー代表に指示した。ライトハイザー氏は同日の声明で「関税率の引き上げは、中国に有害な政策と行動を改めるよう促すものだ」と主張した。
USTRは1日、関税第3弾を巡って民間からの意見を9月5日まで受け付けると表明した。そのため、第3弾の発動時期は同月以降になる見込みだ。ただ、さらに2千億ドルもの中国製品に追加関税が課されれば、中国からの輸入の半分が制裁の対象となり、米中の貿易戦争の深刻化は避けられない。
また、第3弾の対象となる6千品目は消費財などが含まれており、米経済にとっても悪影響が避けられない。2000億ドルのうち最大の輸入品目は家具(年290億ドル)で、ルーターなどのネットワーク機器やコンピューター部品などが次ぐ。農産品や加工食品、革製品などもあり、25%の追加関税は重荷となる。
対中関税の引き上げは、中国に圧力を強めて妥協策を引き出す狙いがある。人民元安で中国製品の実質価格が低下しており、関税率を高めて制裁効果を強める思惑もある。ただ、中国側も景気刺激策を打ち出して貿易戦争の長期化に備えるなど、歩み寄りの兆しはなく、両国の対立が先鋭化するリスクもある。