杉田水脈議員について

性的マイノリティの人に対し「『生産性』がない」と雑誌の寄稿文で書いた、衆議院議員の杉田水脈。彼女が所属する自民党本部の前で行われたデモに、4000人が集まるなど、日に日に怒りの声が大きくなってきています。未だに誤読やら言葉足らずやら、彼女やその周辺の人たちが言い訳を繰り返していますが、本当の問題とは一体何なんでしょうか。

好きな言葉は「自分と未来は変えられる」

「人が嫌がることを言ったり、人を傷つけて喜ぶ人間をなくそうと本気で思うのなら、根本から見直す必要があります」と記したのは杉田水脈議員である(「杉田水脈のなでしこリポート」産経ニュース)。「民間企業ならば一日でクビ、という類の政治家、いっぱいいますけれどね」と発言したのも杉田議員である(『月刊WiLL』2017年3月号)。杉田議員の好きな言葉は「過去と人は変えられない。自分と未来は変えられる」だそうである。

自分と未来は変えられるのに、それをしようともせずに、人が嫌がることを言ったり、人を傷つけたまま、根本から見直さずに開き直っている杉田議員は、民間企業ならば一日でクビという類の政治家である。『新潮45』(2018年8月号)に掲載された杉田議員の原稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」で、「LGBTのカップル」に対して「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」などと記し、問題視されている。結論を先に出しておくが、人間に対して、生産性という言葉を使う人間を許してはいけない。直ちに謝罪するか、辞職するべきだ。

全文読め。全文読むと更に酷い

杉田議員は、既に削除したツイートの中で、『新潮45』を読んだ先輩議員から「雑誌の記事を全部読んだら、きちんと理解しているし、党の立場も配慮して言葉も選んで書いている。言葉足らずで誤解される所はあるかもしれないけど問題ないから」と言われたと記した。この先輩議員が誰なのか、実際に存在するのかすら定かではないが、言葉が足りずに誤解を生んでいる所があるとひとまず認めた上で、「問題ない」と判断した先輩議員も問題である。

全文を読んでから言え、と逃げる政治家のテキストを全文読むと更に酷い、というのは、ここ最近のお約束になりつつあるが、私たちに対して全文読むように促さなければ、「もうわけが分かりません。なぜ男と女、2つの性だけではいけないのでしょう」や、このまま「多様性を受けいれて、様々な性的指向を認めよということになると」、いずれは「ペット婚や、機械と結婚させろという声も出てくるかもしれません」などと書いていたことがバレずに済んだのにな、とは思う。このまま「様々な性的指向」を認めていくと、機械と結婚させろと言い始める人が出てくるのではないかという、常人には持ち得ない想像力をお持ちなのだから、その突出した想像力を「2つの性だけにしろ」と制約に使うのではなく、自分とは違う誰かの考え方を受け入れる、という方向には使えないのだろうか。

必死に彼女を守る年長者

「保育園落ちた日本死ね!!!」が話題となっていた頃、そもそも子供を保育園に預けることすら認めない杉田議員は、「子供を家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳教育をする。旧ソ連が共産主義体制の中で取り組み、失敗したモデルを21世紀の日本で実践しようとしているわけです」(「杉田水脈のなでしこリポート」)と記していた。ちょうど自分と打ち合わせをしていた編集者が、子供を保育園に預けていたので、「どうです? 洗脳教育されてます?」と聞くと、「暑いからアイス食べようかな」との返事が戻ってきた。まさか、洗脳されているのに気付いていないのだろうか。

今回の暴言を受け、杉田議員を必死に守ろうとする年長者があちこちから登場しているが、とにかくフォローが粗い。二階俊博自民党幹事長は「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」と擁護し、その上で「多様性を受け入れていく社会の実現を図ることが大事」としたが、先述した通り、杉田議員は多様性を受け入れるとヤバいことになると書いており、誰より「いろんな人生観」を排除しているのだから、この擁護はとっても珍奇である。まさか、全文読んでいないのだろうか。

「誤読に基づく冤罪」だそう

「新しい歴史教科書を作る会」副会長の藤岡信勝は、今件について、「『生産性』という言葉は、杉田さんが日常的に使っている言葉ではなく、引用符が施されており、(中略)今回のことは、誤読に基づく冤罪というべきものだ」(朝日新聞・7月28日朝刊)と述べている。「杉田さんが日常的に使っている言葉」を藤岡が知っているのは、杉田が同会の理事でもあるからなのだろうが、2015年3月に杉田がブログに記した「LGBT支援策が必要でない理由~私の考え」には、「生産性のあるものと無いものを同列に扱うには無理があります」と、引用符が施されていない「生産性」が用いられた文章が書かれており、これは誤読しようがないので冤罪ではないだろう。

杉田本人にしろ、周囲の擁護者にしろ、こうやって発言する自由を認めないなんて、そっちこそ不寛容で差別的と返してくる。とりあえず、全部読めば違うで牽制し、思ったことを言わせないなんて、そっちのほうが言論を萎縮させている、と突っかかる。これは、昨今の政治家や極端な論客が、自ら放った暴言への批判を回避する手段として、実にありがち。彼女らのいつもの手癖を受け止めて、許してはいけない。

このまま逃れるべきではない

杉田議員は、事務所のメールに「お前を殺してやる!絶対に殺してやる!」と殺害予告が届いたことを理由に、LGBTに関連するツイートを全て削除した。当たり前だが、そういった殺害予告など、絶対にしてはならないこと。殺されていい命なんてどこにもない。杉田議員に対して「日本の中で一番生産性がないのはお前だ」(橋下徹)と切り返すのも間違っている。杉田議員にも生産性を問うてはならない。

世の中がとんでもない方向へ転がり、殺されていい命を作り出してきた歴史がある。あるいは特定の人々の命を表立って軽視することを許してしまった時代や場所がある。その多くで、人間を「生産性」で区分けする残忍な判断があった。その判断を新たに芽生えさせてはいけない。暴言を吐いた杉田議員はこのまま逃れるべきではない。自分はこれまでこう思ってきた、なんて関係ない。あなたの信念、本気度などどうでもいい。あまりに多くの人を傷つけた。杉田議員の好きな言葉をそのまま送る。「過去と人は変えられない。自分と未来は変えられる」のだ。謝罪、ないしは、辞職するべきだ。

(イラスト:ハセガワシオリ


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「それでも、僕たちは書く。~『一発屋芸人列伝』(新潮社)『日本の気配』(晶文社)について」

出演 山田ルイ53世(お笑い芸人)、武田砂鉄
時間 19:00~21:00 (18:30開場)
場所 本屋B&B(東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)
入場料 前売1500円+1ドリンク 当日2000円+1ドリンク
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武田砂鉄
晶文社
2018-04-24

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

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365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

MacBack1986 一般の団体であればヘイトスピーチになる。これは政治家によるヘイトスピーチ防止法違反だ。黙りの安倍晋三は卑怯だ。警察も逮捕しろよ。 #スマートニュース 12分前 replyretweetfavorite

daisukeHORIKAWA “結論を先に出しておくが、人間に対して、生産性という言葉を使う人間を許してはいけない” #クロス #アベプラ 約2時間前 replyretweetfavorite

muku_dori_ 緻密にストレートに真剣を打ち込んでいる緊張感がある 約6時間前 replyretweetfavorite

viewchuo いつもとは違うストレートな文体で心に突き刺さる。拍手を送りたいし、彼女には謝罪&辞職してほしい。→ 約7時間前 replyretweetfavorite