情報のすり合わせを目的とした報告会を開くため、久しぶりにナザリックへ帰還したのだが────
◇半月ぶりに自室でゆっくり────
「お帰りなさいませ、アインズ様」[アル]
「うむ。すまんなアルベド、長らく留守を任せて…………で、その格好はなんだ?」
「
「そう、だな。大変魅力的だぞ、アルベド」
「くふーーーーーっ! アインズ様ーーーーー♡!」[アル]
「あ、ちょ、報告会は!?」
「まずは私♡でございます、アインズ様♡!」[アル]
「あ、はい」
◇コキュートス敗戦報告(前)────
「ねぇ…………あの、アレは?」[アウ]
「第八階層守護者のヴィクティムですよ、アウラ」[デミ]
「あぁ、よかった。アインズ様とアルベドの赤ちゃんだったらどうしようかと思ったよ」[アウ]
「私モソウナノカト思ッテイタ」[コキュ]
「ぼ、ぼくも…………」[マレ]
「わたしもでありんす」[シャル]
「…………だから皆遠巻きに見ていたのかい?」[デミ]
「
「なに語!?」[アウ]
「確か天使言語であるエノク語を元にした…………エノグ語とかいうものだったと記憶していますが…………」[デミ]
「聞キ取リヅライナ」[コキュ]
「あなたが言うでありんすか?」[シャル]
「すみません。ふつうにはなします」[ヴィク]
「あ、ああ、普通に喋れるのだね、ヴィクティム。じゃあすまないがそれで頼むよ」[デミ]
「コキュートスは…………」[アウ]
「私ノ言葉ガ聞キ取リヅライノデアレバ、ソレハ喋リ方ガドウコウトイウヨリモ、声質ニヨルモノダ。変エルコトハ出来ン」[コキュ]
「ま、そうでありんしょうねぇ」[シャル]
「あんたも普通に喋ったら?」[アウ]
「わたしのこれは、ペロロンチーノ様によって定められたものでありんす!」[シャル]
「でもたまに普通に喋ってるじゃん」[アウ]
「う…………」[シャル]
「そこまでにしたまえ。拝謁に関する打ち合わせをしますよ(口唇蟲を使えばコキュートスの声を変えることもできるのですが…………まあ、余計なことは言わないでおきましょう)」[デミ]
◇コキュートス敗戦報告(中)────
「まずは────デミウルゴス」
「はっ」[デミ]
「ことあるごとに呼びつけていることに加え、低位の
「おお、感謝などもったいないことでございます、アインズ様! 私はあなたのシモベ。至高の御方の為に働くことこそ我が喜びでございます!」[デミ]
「うむ。だが、その忠勤に対する私の感謝は是非にも受け取ってくれ」
「はっ、ありがとうございます! アインズ様!」[デミ]
「よい。では次にヴィクティム」
「はっ、アインズさま」[ヴィク]
「……………………」
「? アインズさま?」
「あ、ああ、すまん少し考え事をな(俺とアルベドの子供を想像しちゃったよ)」
「しゃざいなどふようでございます、アインズさま」[ヴィク]
「う、うむ。だが、それでも新たに謝罪はさせてもらう。想定外の事態が起こった際には、お前の
「もったいないおことばです、アインズさま。しこうのおんかたのおやくにたてるのであれば、このいのち、なんどでもおつかいください」[ヴィク]
「わかった、ヴィクティム。謝罪ではなく、お前の愛に感謝しよう」
「アインズさま…………!」[ヴィク]
「では次に────シャルティア」
「はっ、はい!」[シャル]
「我が元まで寄るがよい…………お前の胸に刺さった棘の件だ」
「ああ! アインズ様! どうか、どうかわたしに罰をお与えください! 守護者の地位に就くものでありながら、あのようなことをしでかした罪深き愚か者にふさわしい罰を!」[シャル]
「うむ…………シャルティアは、あの映像を観たのだったな? アルベド」
「はい、アインズ様の戦い方を学ぶためにも、守護者全員で百回は観させていただきました。その後はダビングして各自持ち帰り、
「ひゃっ…………んん! あー、それだけ観たのであれば、それは十分な罰ではないか? シャルティア」
「確かに、あの映像を観るのは辛く苦しいものでありんした。わたしの罪の証拠とも言えるものでありんすから…………ですが、アインズ様に討たれるわたしの姿を何度も見ているうちに、なんだか、その、だんだん気持ちよくなってきてしまって…………」[シャル]
「うわぁ」[アウ]
「ですから、ですからあれでは罰にならないのでありんす! アインズ様、どうかわたしにさらなる罰を!」[シャル]
「……………………(うわぁ…………いや、ペロロンチーノさんがマゾという設定もつけてたんだっけ? でも、そうなると結局どんな罰を与えても悦んじゃうんじゃ…………)」
「アインズ様?」[アル]
「はっ、いや、うむ。そうだな…………それについては
「嗚呼、アインズ様! 愛などと!」[シャル]
「よい、シャルティア。では下がるがよい…………次に、コキュートス」
「ハッ!」[コキュ]
「敗北で終わったな」
「ハッ、コノ度ノ私ノ失態、誠ニ申シ訳アリマセン!」[コキュ]
「コキュートス、アインズ様に失礼よ。面を上げて謝罪なさい」[アル]
「失礼シマシタ!」[コキュ]
「よい、アルベドよ。…………それで、コキュートス。兵ではなく将として戦い、何を感じた?」
「
「素晴らしい!」
「ハッ?」[コキュ]
「学んでいるではないかコキュートス。それでいい、それでいいのだ。誰にでも失敗はある、しかし、そこから何を学ぶか、それこそが大事なのだ。お前はこの世界でも成長できるということを示してくれた。それは失態などではなく、むしろ賞賛に値する必要不可欠な失敗だったと言えるだろう」
「デスガ…………」[コキュ]
「ああ、そうだろうな。失敗して褒められてもその心は晴れまい。ゆえに命じるぞ、コキュートス」
「ハッ!」[コキュ]
「自らの失敗を、自らの功によって打ち消す機会を与えよう────
「ア、アインズ様…………」[コキュ]
「ん? どうした、コキュートス」
「オ願イノ儀ガゴザイマス!」[コキュ]
「コキュートス! 自らの失敗を拭う機会をアインズ様から与えられながら、それに応えるでもなく請願をするとは…………っ! いったいどういうつもりなの!」[アル]
「よい、アルベド」
「しかし、アインズ様…………!」[アル]
「よいのだ。私は今、実に機嫌がいい。その願いとやらを言うがいい、コキュートス」
「ハッ…………ナニトゾ、
「ほう…………」
◇コキュートス敗戦報告(後)────
「感謝スル、デミウルゴス。オ前ノ口添エガナケレバ、
「いや、礼の必要はないとも。アインズ様はこの結果に満足されているようだったしね」[デミ]
「そうなのでありんすか?」[シャル]
「そうだとも、全てはアインズ様の想定された通りに運んでいたのだよ。でなければ、あれほどご機嫌麗しくあるはずがないだろう?」[デミ]
「は、はい。アインズ様は、とても嬉しそうにしてた、と、思います」[マレ]
「そうねー。なんていうか、威厳あるオーラの中に、喜び成分が混じっているような感じだったものね」[アウ]
「そ、そうなのでありんすか?」[シャル]
「私ニモ、分カラナカッタ」[コキュ]
「アインズ様のご寵愛を受けた者と受けてない者の差、かもねぇ」[アウ]
「えっ!? チ、チビスケ、アインズ様からのご寵愛を受けたでありんすか!?」[シャル]
「ん? そうだよ?」[アウ]
「マ、マーレも?」[シャル]
「は、はい…………////」[マレ]
「い、いつの間に…………」[シャル]
「あたしはこの前の映像撮影のご褒美に」[アウ]
「くひぃ! マ、マーレは…………?」[シャル]
「ぼ、ぼくは、ナザリックを丘に偽装した時の、ご褒美に…………////」[マレ]
「チ、チビスケどころか、マーレにまで先を越されるなんて……………………ん? 寵愛を受けた者と、受けていない者の差…………? ま、まさか! デミウルゴスも!?」[シャル]
「そんな訳ないでしょう。私は男ですよ?」[デミ]
「それは…………でも…………そう! それを言うならマーレだって男じゃありんせんか!」[シャル]
「チチチ、それが違うんだな、シャルティア」[アウ]
「アウラ…………なにが違うというでありんすか?」[シャル]
「マーレはね、男の娘なんだよ!」[アウ]
「…………男の子なんでありんすよね?」[シャル]
「ちがうちがう。男の
「それは…………どこがどう違うのでありんすか?」[シャル]
「私もそれは一度確認しておきたかったんですが…………その男の娘というのは、マーレが少女の格好をしていることとなにか関係があるのですか? アウラ」[デミ]
「お、さすが鋭いねー、デミウルゴス。そう! 何を隠そう、男の娘というのは『えるじーびーてぃーをちょうえつしたあらたなるせいのふろんてぃあ』にして『せつなのきらめきとはかなさのちょうわがうみだすびのけっしょう』なんだよ!」[アウ]
「…………デミウルゴス、分かりんしたかぇ?」[シャル]
「二つ目の言葉は『刹那の煌きと儚さの調和が生み出す美の結晶』だと思いますが、一つ目のえるじーびーてぃーという言葉の意味が分かりません。それを超えるなにかすごいものだということだけは伝わってきますが…………アウラ、えるじーびーてぃーとはなんなのですか?」[デミ]
「うーん、実は私もよく分かってないんだよね」[アウ]
「分からないのに、なぜああも自慢気だったでありんすか!?」[シャル]
「いやぁ、ぶくぶく茶釜様が嬉しそうにそう仰ってくださっていたのはちゃんと覚えてるんだけど、その意味までは…………」[アウ]
「ああ、なるほど、ぶくぶく茶釜様のお言葉をそのまま伝えてくれていたのですね」[デミ]
「デミウルゴス、なにか分かったでありんすか?」[シャル]
「いえ、容易には分からないだろうという事が分かっただけですよ。至高の方々が残された言葉は難解で、我らが理解できるものは数少ない。アウラが先ほど言っていた言葉も、その一つになるでしょう」[デミ]
「確かに…………わたしもペロロンチーノ様のお言葉はいくつか覚えていんすが、その意味までは分からないものが多いでありんす」[シャル]
「しかし、何ものにも代え難い大切なお言葉であることは間違いありません。アウラ、ぶくぶく茶釜様のお言葉を教えてくれてありがとうございます。私もその言葉の意味がいつか理解できるよう、精進を重ねていきますよ」[デミ]
「えへへー…………あ、でね、ぶくぶく茶釜様が仰るには、男の娘は男性に愛されてもなんの問題もないんだって。むしろその方が圧倒的に『もえる』って仰ってたから、マーレがアインズ様のご寵愛を受けたことを知れば、ぶくぶく茶釜様もお喜びになると思うよ」[アウ]
「もえる…………燃える、でしょうか? 炎系の状態異常を示す言葉? いや、それでは前後の文脈に繋がらない…………むしろ精神的な何かだと捉えたほうが…………」[デミ]
「ち、な、み、に、あたしは『
「ナルホド、勉強ニナッタ。因ミニマーレ、一ツ質問ヲシテモイイダロウカ?」[コキュ]
「静かにしてたと思ったら、急に会話に加わってきたでありんすね、コキュートス」[シャル]
「え、あ、あの、はい。ぼくに答えられることでしたら…………」[マレ]
「男ノ娘トハ、オ世継ギヲ産ムコトハデキルノダロウカ?」[コキュ]
「「……………………」」[アウ、デミ、シャル]
「ドウナノダロウカ?」[コキュ]
「いやー、流石にそれは無理じゃない?」[アウ]
「男性に愛されるべき存在でありんすとはいえ、性別的には男でありんしょうから…………」[シャル]
「どう、なのだろうね。私は男の娘の詳しい生態を知らないからなんとも…………」[デミ]
「あ、あの!」[マレ]
「わっ、な、なにマーレ、急に大きな声出して」[アウ]
「う、産める、と、思います…………」[マレ]
「えっ!? う、産めるんでありんすか!? ど…………どこから?」[シャル]
「それは、その…………ぼくもわからないんですけど…………」[マレ]
「ふむ、その割には確証を持った声に聞こえたんですが…………なにか根拠のようなものでも? マーレ」[デミ]
「は、はい、あの、ぶくぶく茶釜様が、そう仰ってたんです」[マレ]
「えっ、なにそれ、あたし知らない!」[アウ]
「あ、うん、あの時は、お姉ちゃんいなかったから…………」[マレ]
「あー、もう、アウラ! 話の腰を折りんせんでくんなまし!」[シャル]
「あー、ははは…………ごめんごめん、ぶくぶく茶釜様のことになるとつい、ね…………マーレもごめん、続けて続けて」[アウ]
「う、うん。ぶくぶく茶釜様は、ぼくの頭を撫でながら、こう仰ったんです。『いつか可愛い赤ちゃんを産んでね』って…………」[マレ]
「「……………………」」[アウ、デミ、シャル]
「だから、う、産めると思います!」[マレ]
「ぶくぶく茶釜様が仰ったのなら…………」[アウ]
「ええ、産めるのでしょうね」[デミ]
「ど、どこから…………」[シャル]
「…………確かに、それは疑問ですね。一度、体を調べさせてくれませんか? マーレ」[デミ]
「だ、ダメです! あ、す、すいません。でも、ぼくの体は、アインズ様のものですから…………////」[マレ]
「…………そうですね。すみません、マーレ。デリカシーのない発言でした。撤回します」[デミ]
「い、いえ、いいんです。ぼくこそ、大きな声をだしてごめんなさい」[マレ]
「ア、アインズ様のもの…………アインズ様のもの…………きぃーーーーっ! なんて羨ましいセリフでありんしょうか!」[シャル]
「あんたもそのうちお呼びが掛かるよ」[アウ]
「上から目線!!」[シャル]
「…………ということらしいが、納得したかい? コキュートス」[デミ]
「ウム、オ世継ギヲ産ムコトガデキルノハ、大変喜バシイコトダ…………マーレ!!」[コキュ]
「ひゃ、はい! な、なんでしょう、コキュートスさん…………」[マレ]
「丈夫ナオ世継ギヲ産ンデクレ。ソシテ、教育係リニハ是非コノコキュートス…………イヤ、爺ヲ!」[コキュ]
「…………それが狙いだったんですか、コキュートス…………」[デミ]
「なんかコキュートスってさ、お世継ぎの話になると人が…………蟲が? 変わるよねー。あたしも同じこと言われたし」[アウ]
「なんか面倒くさそうでありんすが…………それでも羨ましいでありんすーーーーー!!」
「アインズさまのおよつぎ…………たのしみです」[ヴィク]
「あれ? いたの? ヴィクティム」[アウ]
「ひどいです…………」[ヴィク]
◇
「さて、アウラ。ここに留まることを無理に決めて悪かった。お前は私にふさわしくない場所だというが、そんなことはない。お前が私の為にわざわざ作ってくれたのだ、私は気に入ったぞ? 時にはここで共に過ごすのも悪くないと思える程にな」
「ア、アインズ様…………」[アウ]
「ア、アインズ様…………♡」[アル]
「にじり寄るな、アルベド、今はよせ」
「も、申し訳ございません!」[アル]
「よい…………ところでアウラ、ひとつ聞きたいことがあるのだが…………」
「はい! なんでしょうかアインズ様!」[アウ]
「アレはなんだ?」
「あー、アレは…………」[アウ]
「簡素ですが、玉座を用意させていただきました」[デミ]
「(お前か! デミウルゴス!)そう、か。うむ、なるほど、な」
「
「ほう…………それは、よいもの、だな?」
「当然ナザリックの玉座には遠く及びませんが」[デミ]
「いや、うむ。アレもお前が私の為にわざわざ作ってくれたもの。私は気に入った、ぞ。…………特にその、あれだ、あの手を置く辺りの丸みなど、そう、手を置くのにちょうど良さそうではないか」
「流石はアインズ様! あの部分は数百体の中から厳選に厳選を重ねたものでございます。アインズ様の手のひらの大きさにちょうど収まり、かつ歪みが少なく、そして同じ大きさのものを探し出すのには少々時間が掛かりましたが」[デミ]
「(どう見ても人間の頭蓋骨だけど! 数百体って…………え? 数百体ってどっから出てきたの!?)…………それは、苦労をかけたな」
「とんでもございません! 至高の御方のために働くことこそ至上の喜び。頭蓋骨を厳選する作業も楽しいものでした」[デミ]
「……………………(言った! いま頭蓋骨って言った! いや人間のとは言っていないけれども!)」
「さ、どうぞお掛けください、アインズ様」[デミ]
「う、うむ。では、腰掛けさせてもら…………はっ! そうだ、シャルティア、お前には罰を与えるという約束だったな」
「はっ!」[シャル]
「今この場でそれを与える────屈辱という罰をな」
「畏まりました!」[シャル]
「そこに膝を折って頭を垂れるのだ。四つん這いになれ」
「はい!」[シャル]
「流石はアインズ様!」[デミ]
「(えっなに!?)…………ほう、デミウルゴス、気がついたか」
「もちろんでございます! しかしお見事ですアインズ様…………いえ、すぐに思い至ることのできなかった非才なるこの身を悲しむべきでしょうか」[デミ]
「(だからなに!?)…………ふむ」
「階層守護者であるシャルティアを
「(微塵も考えてなかったよ! でも、今更断れる雰囲気じゃないな、これ。デミウルゴス涙ぐんじゃってるし)……………………うむ」
「しかも! 本来であれば私自身が務めるべきその栄光あるお役目を、シャルティアに罰を与えるという口実で実行させることで、実際にはすでに赦しているというご自身のお言葉を偽ることなくシャルティアの心に刺さった刺をも取り除く…………! ああ、ああ、御身はなんと、機知と英知と慈悲の心に溢れた方であらせられるのか!」[デミ]
「(足置き台にされるのって栄光あるお役目なの!?)ふ、ふふふ、よせ、デミウルゴス」
「アインズ様…………アインズ様は、私が考えに考えてたどり着いた答えを、瞬きすらも追いつかない刹那に組み上げ、言葉として発し、命を下されました。このデミウルゴス、まさに智謀の神を見た思いでございます!」[デミ]
「いや、うむ。そこまで思いつくに至ったお前は、すでに私に追いつきつつある。誇るがいい、デミウルゴス(どうしてそこまで深読みした! もはや俺の意図の介在率は0%だよ!)」
「勿体無きお言葉…………っ!」[デミ]
「デミウルゴス? ひとつ、間違っているわよ」[アル]
「(お前もかアルベド!)ほう…………」
「アルベド…………間違っているところ? いったいなにが…………はっ!」[デミ]
「(俺には全く分からん。俺の方を向くな、デミウルゴス。いいから気づいたならそのまま口にしろ!)…………よい、デミウルゴス。思うままを口にするがよい」
「智謀の神、私は先ほど申し上げました。しかし! アインズ様のお力はその英知のみにあらず! シャルティアを圧倒したあのお姿は、まさに戦いの神そのもの! つまり、アインズ様を表すに相応しい呼称とは、全知全能の神に他なりません!」[デミ]
「「おおぉぉぉぉぉぉ!」」[アウ、マレ、コキュ、シャル]
「そう、その通りよ、デミウルゴス」[アル]
「アルベド、そしてアインズ様…………私の思い違いを自ら正す機会をいただき、感謝の言葉もございません。非才の身でありながらアインズ様の力を推し量り、狭い範囲に収めようとするなど不敬の極みでございました。どうぞ私にも相応しい罰を」[デミ]
「アインズ様?」[アル]
「…………よい」
「デミウルゴス。アインズ様はお許しになるわ」[デミ]
「ですが…………!」[デミ]
「あなたが言ったことよ? アインズ様は全知全能。当然その愛も私たちが量ることができないほどに広く深いものだわ…………もちろん、
「はぁ、はぁ、アインズ様、おみ足は…………おみ足の重みはまだでありんしょうか…………っ」[シャル]
「……………………(こいつら…………マジだっ!)」
◇
「クルシュ・ルールー、お前たち
「…………! はい、全ておっしゃる通りになるかと存じます」[クル]
「その割には浮かない顔をしているようだが?」
「そんな、そのようなことはございません! 偉大なる御方の庇護下に加えていただいたことで、
「ザリュース・シャシャ」
「!!」[クル]
「お前の
「なぜ…………それを…………」[クル]
「その程度のことを、私が分からないと思ったのかね? …………まあ、いい、本題に入ろう。クルシュ・ルールー、お前に頼みがある」
「頼みなど…………絶対の支配者であるゴウン様がご命令くだされば、どのようなことでも…………」[クル]
「命令ではなく、個人的な頼みだよ」
「個人的な…………?」[クル]
「そう、極めて個人的な頼みごとだ。そして、その対価は────ザリュースの復活」
「! そのような、ことが…………!?」[クル]
「なに、私には容易いことだ。生を死に変えることも、死を生に変えることも、な」
「何を…………何をお望みなのでしょうか…………私の、身体ですか?」[クル]
「いやない…………ゴホン! いや、それはない。私が望むことはただ一つ────お前とザリュースが、多くの子を成すことだ」
「ザリュースと、子を…………?」[クル]
「そうだ、もちろん産んだ子を取り上げたりはしない」
「なぜ、そのような…………」[クル]
「ザリュースは
「それは…………そうかもしれませんが。なぜゴウン様がそれを望むのでしょうか。ゴウン様や、その側近の方々から比べれば、私たち
「なに、今回のことで
「…………?」[クル]
「いやなに、今のは独り言だ。そう、なぜ優秀な子を望むか、だったか。それはな、クルシュ・ルールー…………私は、学校を作ろうと思っているのだよ」
「がっこう、ですか? それはいったい…………」[クル]
「知識を教え、技術を教え、そして戦う術を教える場所だ」
「…………!! 我々
「そう、そしてその対象は
「ナザリック…………いえ、ゴウン様への忠誠、でしょうか?」[クル]
「その通りだ。流石に知恵が回るではないか、クルシュ・ルールー」
「畏れ多いことでございます」[クル]
「そこまで分かっているのなら、この後私が言いたいこともわかるな?」
「はい。学校とはつまり、知識や技術や戦い方を通して、ゴウン様への忠誠、信仰を身につけさせるための場所である、ということですね?」[クル]
「そうだ。先程も言ったが、今いるお前たちの世代の根底には、この私やナザリックに対する恐怖がある。恐怖は疑念を呼び、疑念は不満を呼び、不満は反乱を生み出すものだ。だが、これから生まれてくる子供たちにはそれがない。そのまっさらな心に、初めから私への忠誠を刻み込めたなら…………」
「全ての者がゴウン様を中心とした、新しい世界が生まれる…………」[クル]
「…………新しい世界、は言いすぎかもしれないが、まあ概ねそういうことだ。お前とザリュースの子供には、その学校教育のテストケースとなってもらいたいのだよ」
「教育を受けた私たちの子供が村に戻り、学校に行くことのできなかった子供たちにも教育を施す。そして、優秀なものが村を束ねる長に就くのもまた自明の理────つまり、私たちの子供の世代から本当の支配が始まると、そういうことなのですね」[クル]
「ん? うん、まあそういうことだ(もうちょっとライトな感じで考えてたんだけど…………)」
「畏まりました、ゴウン様のお申し出、何一つとして疑問に思うことも不満に思うこともございません。どうかザリュースを…………私のただ一人の
「ふむ…………分かった。ザリュースにはお前が伝えるといい。お前たちの子は、新しい世界に最初の一歩を踏み出す栄誉を手に入れたのだ、とな」
「はい。必ず伝えます」[クル]
「よし。ついでだから族長たちも生き返らせてやろう。武技の研究などに協力してもらう必要もあるしな」
「寛大なるご慈悲に感謝いたします」[クル]
「うむ…………(なんか、途中からクルシュの目にうちのNPC達に似た光が宿ってきた気がするんだけど…………)」
「では、ザリュースの元へご案内いたします、偉大なるゴウン様」[クル]
「あ、はい」
なぜだ。
トカゲ編はアインズ様の出番がほとんどないから、二千文字くらいで終わるかなー、と思っていたのに、書き終わってみればなぜか一万文字超…………!
どうした!?
何があった!?
……………………(プレビューを確認中)
わかった! 男の娘談義に費やしたんだ!
なら悔いはなし。
あと、だんだんシャルティアに「い、いつの間に…………」と言わせるのが楽しくなってきた。
ごめんシャルティア。
君がアインズ様に呼ばれるのはもう少し先になりそうだ。