目黒5歳女児虐待事件に潜む、親子制度の問題 --- 山本 ひろこ

2018年07月27日 06:00

Facebookより:編集部

記憶に新しい目黒区の幼児虐待事件。その後、目黒区議会でも「虐待のない目黒区を目指す決議」が採択されました。結愛ちゃんの残したあまりにも切ないノートの内容が涙を誘い、社会問題化したこの事件ですが、本当に問題なのは行政対応だけなのでしょうか?児童相談所間や警察との連携不足が大きく問題視され、厚労省は児童相談所に警察との連携強化を求めました。

近年、東京都23区では児童相談所の都から区への移管が話題になっています。2016年6月の児童福祉法改正により、特別区に児童相談所を設置することが可能となりましたが、人材・財源・場所など様々な課題があることから、区によって設置予定時期が異なります。

1300万人を抱える東京都が、基礎自治体レベルの細やかな住民ケアができるわけがなく、東京都からすれば、「何町の何丁目」がリアルではありませんが、基礎自治体からすれば、リアルにその地域を把握しているわけです。

それゆえに、地域の子どものセンシティブな問題を取り扱う児童相談所などは基礎自治体が所管するのが妥当で、東京都からの移管は望ましいことだと考えます。目黒区では移管の具体的時期がまだ未確定の状態ですが、早期移管を求めて区議会からも決議文を出しました。

ただ、今回の事件で母親として一番気になるのは、連れ子にだけ虐待を行ったという点です。実父かそうでないかによって、子供へ対応レベルが異なりやすいというリスクについては、米国の研究などでも証明されています。

もちろん児童相談所対応が至らなかったのは致命的ですが、被疑者の父親には実子もいて、その子は虐待されることなく育てられており、連れ子の結愛ちゃんだけが虐待されていた今回のケースなどは、日本の親子制度のありかたそのものにも焦点があたるべきところを、幼児虐待に対する児童相談所対応だけの問題にすり替えられてしまっています。

連れ子も実子も同じように虐待をしているのであれば、幼児虐待だけが問題となりますし、もちろん、ハイリスクだと言っても、一般的には連れ子も実子も同様に接している円満ケースが大半です。一方で、今回のケースでは連れ子にだけ虐待を行っている点からして、虐待の原因として、実子かどうかが大きく影響していることがわかります。

現在の日本は、単独親権制度を採用しており、離婚して親権を失えば親の責任がなくなるどころか、懇願しても会えなという断絶状態が散見されています。共同親権制度により、実夫に離婚後も子供の養育の義務があれば、結愛ちゃんのSOSが伝わり、虐待死に至る前に救えたかもしれません。

欧米諸国では、共同親権が採用されています。もちろん、別れても住所が追跡されるなどのデメリットもありますが、子どもの権利や利益を中心に考えると、共同親権が妥当ではないでしょうか。日本でも共同親権化に向けて、動き出しました。

子どもにとって一番大切なことは、たくさんの選択肢があることです。親の都合で離婚したとしても、子どもには両方の親に世話をしてもらえる権利があります。幼いうちに、どちらかを選ぶことなんてできません。大きくなっても、どちらかを選ぶというのは、究極の選択にしか過ぎません。離婚により親権を失えば、子どもに対する義務も責任も無くなる、というのは大人都合のルールです。子どもは自立するまで両親に育ててもらう権利を持っているという、子ども中心のルール作りが必要ではないでしょうか。

山本ひろこ 目黒区議会議員(日本維新の会)
1976年生まれ、広島出身、埼玉大学卒業、東洋大学公民連携学修士、東京工業大学イノベーション科学博士課程後期。
外資金融企業でITエンジニアとして勤務しながら、3人娘のために4年連続で保活をするうちに、行政のありかたに疑問を抱く。その後の勉強会で小さな政府理論に目覚め、政治の世界へ。2015年、目黒区議選に初当選。PPP(公民連携)研究所、情報通信学会所属、テレワーク学会所属。健康管理士でもある。

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