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2018年07月29日14時07分掲載
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沖縄/日米安保
全国知事会、日米地位協定の抜本的改定を全会一致で提言 国に住民の米軍基地負担の軽減策を求める
7月28日、札幌市で開かれた全国知事会は、日米地位協定の抜本的な見直しを含む「米軍基地負担に関する提言」を全会一致で採択した。米軍基地のない自治体を含む全47都道府県の知事が地位協定改定を含む提言をまとめたのは初めてであり、画期的な意義を持つ。提言内容は後記のとおりであり、7月29日、沖縄タイムス、琉球新報の社説でも積極評価されている。(伊藤一二三)
この提言は、2016年7月に翁長沖縄県知事の要望で設置した「全国知事会米軍基地負担に関する研究会」が出発点であり、12人の知事で構成され、2年間で6回の会合を開催、専門研究者やイタリアとドイツの地位協定について現地調査した沖縄県から意見聴取し、外務省日米地位協定室長からも政府の立場を聴取してきた。こうした調査研究を進めた目的について、全国知事会は「在日米軍基地に係る基地負担の状況を基地などの所在の有無にかかわらず広く理解し、都道府県の共通理解を深めること」を挙げている。極めて民主的で妥当性がある。
そして研究会の報告を受け、提言では「現状や改善すべき課題を確認できた」として、「米軍基地は防衛に関する事項であることは十分認識しつつも、各自治体の生活に直結する重要な問題であることから、国民の理解が必要だ」との認識を示し、日米地位協定の抜本的な改正などを求めた。
2016年6月に琉球新報が行った沖縄県を除く46都道府県知事へのアンケートで、米軍海兵隊を受け入れると答えた知事はゼロ、45都道府県知事は「外交・防衛は国の専権事項」として回答すらしなかった。そうした状況からすると今回の全会一致は、米軍基地の問題を全国的な議論に高めてきた証左であり、研究会の取り組みを高く評価したい。(全国知事会のホームページに充実した研究会資料がある。)
▽独、伊は自国の法律を米軍に適用
日米地位協定は、1960年、日米安保条約の延長と同時に締結されたが、過去、一度も改定されたことがなく、歴代の自民党政権が改定交渉を提起したこともない。周知のとおり、日米地位協定によって、米軍関係者の事件・事故に刑事責任を問えず、住民が危険や騒音を訴える訓練も止められず、基地内で環境汚染が発覚しても立ち入りを拒否されてきた。地位協定は米軍が駐留しているすべての国で締結されているが、その内容は各国で異なり、ドイツやイタリアは基地管理権を確保し、自国の法律を米軍に適用できている。地位協定における日本政府の立場は、アフガニスタン政府の立場よりも低く世界最低である。
そうした最も米軍に従属した形となっているにもかかわらず、歴代の自民党政権は「おもいやり予算」などと詐称して駐留経費を増加させ、今ではその過半を負担して、米軍に「好きな時に、好きな場所で、好きなだけの期間と規模で、居続けてもらっている」のが実情である。
歴史的経緯に鑑みるなら、日本国憲法と日米安全保障条約(及び日米地位協定)はコインの裏表の関係にあると言わざるを得ない。かつて旧大日本帝国憲法を制定するに際し、明治政府は先に不平等条約の改正に苦心惨憺した。アベ首相が『自主憲法』などとウソブイテ改憲を目論むのであれば、まず、世界一不平等な状態にある日米地位協定の改正を始める必要がある。そうでなければ、仮に自衛隊を国防軍としても、自動的に米軍指揮下の軍隊が出来上がるだけの改憲に終わってしまう危険性が高い。日米地位協定の改正ができない者が改憲を発議するなどおこがましいのではないか。
<米軍基地負担に関する提言>
全国知事会においては、沖縄県をはじめとする在日米軍基地に係る基地負担の状況を、基地等の所在の有無にかかわらず広く理解し、都道府県の共通 理解を深めることを目的として、平成28年11月に「米軍基地負担に関する研究会」を設置し、これまで6回にわたり開催してきました。 研究会では、日米安全保障体制と日本を取り巻く課題、米軍基地負担の現状と負担軽減及び日米地位協定をテーマに、資料に基づき意見交換を行うとともに、有識者からのヒアリングを行うなど、共通理解を深めてきました。 その結果、 � 日米安全保障体制は、国民の生命・財産や領土・領海等を守るために重要であるが、米軍基地の存在が、航空機騒音、米軍人等による事件・事故、環境問題等により、基地周辺住民の安全安心を脅かし、基地所在自治体に過大な負担を強いている側面がある。 � 基地周辺以外においても艦載機やヘリコプターによる飛行訓練等が実施されており、騒音被害や事故に対する住民の不安もあり、訓練ルー トや訓練が行われる時期・内容などについて、関係の自治体への事前説明・通告が求められている。 � 全国的に米軍基地の整理・縮小・返還が進んでいるものの、沖縄県における米軍専用施設の基地面積割合は全国の7割を占め、依然として極めて高い。 � 日米地位協定は、締結以来一度も改定されておらず、補足協定等により運用改善が図られているものの、国内法の適用や自治体の基地立入権がないなど、我が国にとって、依然として十分とは言えない現況である。 � 沖縄県の例では、県経済に占める基地関連収入は復帰時に比べ大幅に低下し、返還 後の跡地利用に伴う経済効果は基地経済を大きく上回るものとなっており、経済効果の面からも、更なる基地の返還等が求められている。 といった、現状や改善すべき課題を確認することができました。
米軍基地は、防衛に関する事項であることは十分認識しつつも、各自治体住民の生活に直結する重要な問題であることから、何よりも国民の理解が必要であり、国におかれては、国民の生命・財産や領土・領海等を守る立場からも、以下の事項について、一層積極的に取り組まれることを提言します。 記 1 米軍機による低空飛行訓練等については、国の責任で騒音測定器を増やすなど必要な実態調査を行うとともに、訓練ルートや訓練が行われる時期について速やかな事前情報提供を必ず行い、関係自治体や地域住民の不安を払拭した上で実施されるよう、十分な配慮を行うこと 2 日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍に適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の保障などを明記すること 3 米軍人等による事件・事故に対し、具体的かつ実効的な防止策を提示し、継続的に取組みを進めることまた、飛行場周辺における航空機騒音規制措置については、周辺住民の実質的な負担軽減が図られるための運用を行うとともに、同措置の実施に伴う効果について検証を行うこと 4 施設ごとに必要性や使用状況等を点検した上で、基地の整理・縮小・返還を積極的に促進すること
平成30年7月27日 全 国 知 事 会
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