北朝鮮が新たなミサイルを開発か=米報道
米紙ワシントン・ポストは30日、北朝鮮が新たな弾道ミサイルを開発しているもようだと、米政府高官が明らかにしたと報じた。シンガポールで行われた米朝首脳会談では、両国の関係改善と朝鮮半島の非核化への期待が高まったが、北朝鮮による核開発継続の懸念も続いている。
同紙によると、北朝鮮で初めて米国に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」が作られた平壌近郊の研究施設で活動が続いていることを、情報収集衛星が察知したという。
同紙は匿名米政府筋の話として、平壌近郊の山陰洞(サヌムドン)にある施設で、体燃料を使ったICBMを1基ないしは2基、建造しているようだと伝えた。
一方でロイター通信は、開発がどの程度進んでいるかは分かっていないと米政府筋が語ったと伝えた。さらに、液体燃料を使った大陸間弾道ミサイル(ICBM)は「燃料充填(じゅうてん)にあまりにも時間がかかるので、固体燃料のタイプの脅威とは比べものにならない」と話したという。
ロイター通信はさらに、研究施設から車両が出入りする様子が衛星写真にとらえられているが、ミサイル製造の状況については確認できていないと伝えた。
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6月12日の米朝首脳会談では、ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が朝鮮半島の非核化への強い決意を表明した。トランプ大統領は、北朝鮮の「核の脅威はなくなった」と述べていた。
しかし、米国ではトランプ大統領が核・ミサイル開発を停止する確約を金委員長から取り付けなかったと批判する声が出ていた。
専門家の見方
北朝鮮が武器開発を続けていると報じられたのは、今回が初めてではなく、米朝首脳会談にどれほどの効果があったのか疑問が生じている。
山陰洞の施設を撮影した衛星写真からは、施設が依然として活動しているのが分かると、米ミドルベリー国際研究所(MIIS)の核専門家、ジェフリー・ルイス氏はワシントン・ポストに話した。
ルイス氏は、「どう考えても(施設は)活動を停止していない」とし、「コンテナや車両が出たり入ったりしている。ここはICBMやローンチ・ビィークル(発射ロケット)の製造施設だ」と語った。
同じくMIISの北朝鮮専門家、メリッサ・ハンハム氏はBBCに対して、施設への「出入りは日常的に続いており」、この「活動パターン」は「板門店(4月の南北北首脳間)やシンガポール(先月の米朝首脳間)での会談の間も変わらなかったとコメントした。
このことから、2つの首脳会談が開かれるなかでも、施設の活動は完全に停止していなかったことがうかがわれる。
さらにハンハム氏は、衛星写真では「明るい色のコンテナ」が見えると指摘。これは「金氏が過去にICBMを視察した際に登場したコンテナに似ている」という。
一方でハンハム氏は、「明確にしておきたいが、(米政府から)漏洩(ろうえい)された機密情報の真偽を、MIISの専門家たちが裏付けることはできない」とも断っている。
米朝首脳会談の合意内容は
北朝鮮は、これまで合計6回の核実験を行っており、最近では昨年9月に実施された。過去2年間で北朝鮮の核開発は大幅に進展した。
しかし、シンガポールで開かれた歴史的な米朝首脳会談でトランプ、金両氏は「朝鮮半島の完全な非核化」に取り組むことで合意した。
「完全な非核化」が何を意味するのか明確にはなっておらず、北朝鮮がどのようにして核兵器を放棄し、またそれをどのように検証するのか、時期や方法のさらなる詳細は明らかにされていない。
「非核化」の約束を北朝鮮が本当に守る意思があるのか、疑問視する専門家もいる。
北朝鮮が北西部・東倉里(トンチャンリ)にあるミサイル発射施設の解体を開始したとみられると、先週報道されたものの、情報機関から漏れた情報では、北朝鮮はいまだ秘密裏に核兵器開発を続けている可能性がある。
報道によると、北朝鮮が唯一公式に認めているウラン濃縮設備を増強し、他の秘密の施設でも、ウラン濃縮を続けている兆候があるという。
マイク・ポンペオ国務長官は先週の上院外交委員会で、北朝鮮の施設が核兵器製造に使われる「核物質の生産を続けている」と証言せざるを得なかった。
(英語記事 North Korea 'working on new missiles', US officials say)