トランプ米大統領、イラン大統領と会う意欲示す
ドナルド・トランプ米大統領は30日、イランのハッサン・ロウハニ大統領と「前提条件なし」で「向こうが会いたい時にいつでも」会談する用意があると表明した。
「僕は誰にでも会う。僕は、人と会うのは大事だと信じている」とトランプ大統領はホワイトハウスで記者団に語った。
トランプ氏はこの融和的な姿勢とは対照的に、7月初めにはロウハニ氏と敵対的な警告を送りあっていた。
米国は5月、国際的な経済制裁の棚上げと引き換えにイランの核計画を制限するイラン核合意から離脱した。
米政府は、イランに対する経済制裁を数日以内に再開するため準備を進めている。米国やイランと2015年に核合意を結んだ英国、フランス、中国、ロシア、ドイツは、米国の経済制裁再開に反対している。
米国は中東でのイランの活動に深い疑念を抱いており、またイランと敵対するイスラエルとサウジアラビアの2カ国と同盟を結んでいる。
「もし向こうが会いたいと言うなら、僕は会う」とトランプ大統領は述べた。
ロウハニ大統領顧問のハミド・アブタレビ氏はトランプ氏の発言に対し、「イラン核合意への復帰」と「イランの国としての権利の尊重」が会談への道を開くだろうとツイートした。
米国とイランの首脳が最後に会談したのは、1979年のイラン革命以前にさかのぼる。首脳会談が実現すれば、それ以来初となる。
トランプ氏が態度をいきなり変えるのは、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党書記長との首脳会談に向けて見られた行動の繰り返しでもある。米朝首脳会談も、両首脳が侮辱や脅しを交換した後に実現した。
トランプ発言の直後、マイク・ポンペオ米国務長官は、イランが自国の行動を変える意志を示せば、自分も首脳会談実現を支持すると述べた。
ポンペオ氏は米CNBCに対し、「大統領は色々な人と会って問題を解決したいと望んでいる」と述べた。
トランプ氏は先週、イランと米国との争いの結果について警告したロウハニ氏に対し、怒りとともに応答していた。
トランプ氏はツイッターに、米国を脅せばイランは「史上まれにみる結果に苦しむことになる」と大文字を使って投稿した。
ロウハニ氏はイランの外交官に対し、「米国はイランとの平和があらゆる平和の母親になり、イランとの戦争はあらゆる戦争の母親になる」と語っていた。
ポンペオ氏は5月、シリアからのイラン軍引き上げやイエメンの反政府勢力への支援停止を含む12項目を、イランのいかなる「新合意」においても要求する事項として提起した。
米国とイランの対立点
- イランの核計画制限と引き換えに米国が数十億ドルの凍結資産を解除していた2015年のイラン核合意に、トランプ氏はたびたび反対してきた
- トランプ政権はイランを中東の不安定化要因とみなし、核合意がイランの強引な地域政策の継続を可能にしてきたと主張している。イランは兵士数百人と志願民兵数千人をシリアに送り、同国での軍事的存在感を強化してきた
- ペルシア湾岸諸国は、イエメン反政府勢力のフーシ派を資金と兵器の両面で支援しているとしてイランを非難している。イランは支援を否定している。米国にとって重要同盟国のサウジアラビアはイランの主要な敵対国でもあり、イランの意図について繰り返し警告している
米国がイラン核合意から離脱した理由
トランプ氏は5月、包括的共同作業計画(JCPOA)とも呼ばれるイラン核合意を「ひどく、一方的な取引」と呼んだ。
同氏は、中東地域におけるイランの「不安定化をもたらす活動」を合意が十分に制限できなかったと主張した。
複数の専門家は、ポンペオ氏やジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)といったホワイトハウス内のイランに対するタカ派の影響をはじめ、トランプ氏がバラク・オバマ前米大統領の主要政策を次々と白紙に戻そうとしていることが、核合意への強硬姿勢につながっていると指摘する。
対するイランは、自分たちの核計画は完全に平和的なものだと主張する。国際原子力機関(IAEA)も、イランによる合意順守を認定している。
イランは世界最大の石油産出国の1つで、数十億ドル相当の石油を毎年輸出している。同国は既に経済的圧力を感じており、石油価格の上昇と通貨リアルの価値下落に対する大規模な抗議行動も起きた。
<解説>トランプ氏、交渉への自信――タラ・マケルビー BBCホワイトハウス担当記者
トランプ氏がロウハニ氏に喜んで会うと表明したとき、私は会見場のイーストルームにいた。発言にはほとんど驚かなかった。
ほとんどの人は、そのような会談には慎重に身構えるはずだ。特に、トランプ氏が展開したような罵倒合戦に巻き込まれたばかりだったら。
しかし、トランプ氏は交渉人としての自分の能力に自信があり、自分のやる気に好意的に反応するものだと信じている。過去2年間にわたってトランプ氏を観察してきた経験から、私もそれは承知しているい。
トランプ氏は1987年の著作「The Art of the Deal(交渉の技術、邦題「トランプ自伝」)」で、「人は必ずしも自分では大きい発想を持たない。それでも、大きい発想の人に大興奮することはある」と書いた。
トランプ氏はこれまでも、問題の多い国家指導者と会談してきたが、成功したとは言い切れない。それでもトランプ氏は、再挑戦をためらっていない。