ハント英外相、中国人の妻を日本人と言い間違え
ヘリエ・チュン、BBCニュース
7月上旬に着任したばかりのジェレミー・ハント英外相が中国を公式訪問しているが、訪問内容よりもいきなりの恥ずかしい失言の方が話題となっている。
ハント外相は中国側に良い印象を与えようと、自分の妻が中国人だと説明しようとしたが、代わりに「日本人」と言ってしまった。
外相はすぐに訂正したし、その場の人たちは笑って済ませた。
しかしこの失言はたちまちニュースとなり、ハント氏自身も「とんでもない間違い」だとその場で認めた。
ハント氏の妻のルシア・クオさんは中国中部の西安市で生まれ、英ウォリック大学で働いていた2008年にハント氏と知り合った。2人には3人の子どもがいる。
ハント外相は何と言った?
ハント外相は中国の王毅外相との会談で、英語で「私の妻は日本人で……いえ、妻は中国人です。失礼、とんでもない間違いだ」と述べた。
ハント氏はその後、王外相とは「公式晩餐会で日本語で会話した」と述べ、「でも妻は中国人で、子どもたちは半分中国人です。中国人の祖父母が西安にいますし、家族として中国と強くつながっています」と続けた。
どうしてこれが失言なのだろうか。
1. 中国と日本は積年のライバル
中国政府のご機嫌を取ろうという時に、中国を他の国と混同するのは良くない。
しかしあらゆる国の中で一番の悪手は日本だろう。
なぜなら中国と日本は何十年にもわたって苦々しい関係にあるからだ。過去に2度の戦争を経ているほか、現在も東シナ海の領有権について争っている。
中国の高齢者世代には、日本が戦時中の残虐行為を過小評価しているとして、日本製品を買ったり日本へ旅行するのを渋る人が沢山いる。
2012年に尖閣諸島をめぐる争いが再燃した際には、中国各地で反日デモが行われた。
2. 妻のことなのに
うっかり口を滑らせたり、誰かの人種を混同したりすることは誰にでも起きることだ。
ハント氏は過去に日本で働いていたことがあり、日本語を話す。王外相とも日本語で会話していたと言っていた。ハント氏が会議中に日本について考えていた言い訳にはなるだろう。
しかし、中国政府高官の前で自分の妻について話す際に、なぜ「日本人」という単語が出てきたのか。なかなか説明しにくい。
ハント外相はこの会談の後、ツイッターに「新外相としてのルール1:前に日本語で会話したことのある中国人に英語で中国人の妻について話すとき、何一つ混同してはいけない! 長年いろいろ我慢してくれているハント夫人に謝罪する……!」と投稿した。
混同すると言えば……
3. 悪いステレオタイプに当てはまる
東アジア人が「みんな同じに見える」というのはありふれたジョークだ。東アジア人の多くは自分の人種について、軽率に憶測されて文句を言ったことがある。
例えば私は中国系だが、知らない人から「こんにちは」と叫ばれることがある。一方、英系日本人の友人は、何度か「你好(ニーハオ)」と呼びかけられたと言う。
東アジア人の知人のほとんどは、人種の取り違いは最悪と言うほどのミスではないと、同意するはずだ。それでもやはり、かなりイラッとすることではある。
ハント外相の失言は悪意のないうっかりだったかもしれない。しかし何より、そもそも中国側に良く思われようとして妻の話を持ち出したはずが、そこであのような間違いをしてしまったのだ。
4. そもそもうまく行くアテはあったのか
経済大国としての中国の台頭や中国人消費者の影響力を受け、多くの政治家や企業が中国人のご機嫌取りに力を入れている。
しかし、口で言うほど簡単ではない。
フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ氏やエマニュエル・マクロン仏大統領は、中国の聴衆を感心させようと北京語で話したが、評価は賛否両論だった。
中国と家族関係があるからといって、必ずしもそれで順風満帆とは限らない。
例えば、2011~2013年に米国の中国大使を務めたギャリー・ロック氏は、この地位初の中国系米国人として注目を浴びた。
しかし、米国大使館が人権活動家の陳光誠氏を保護するなど、米中間の緊張が高まった際には中国メディアの批判の的となった。
国営・人民日報傘下の環球時報は、ロック氏は中国系だが米政府の利益を優先する「普通の」米国人政治家だと書いている。