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日銀は30~31日に開いた金融政策決定会合で金融緩和の強化を決めた。物価が上がりにくいことを踏まえ、「きわめて低い長期金利の水準を維持する」と明確に約束した。ただ緩和長期化の副作用にも配慮し、長期国債は「弾力的に買い入れる」とし、事実上、長期金利の一時的な上振れも容認する。
新たに導入するのは「フォワードガイダンス」と呼ばれる将来の金融政策を約束する手法だ。緩和を続ける明確な条件は示していないが、「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」とした。長期金利はすでに0%程度と低く、追加緩和余地は乏しいため、現状の低金利をより明確にすることで「物価安定の目標の実現に対するコミットメント(約束)を強める」。
短期金利と長期金利の誘導目標はそれぞれ「マイナス0.1%」「0%程度」で据え置く。国債の購入については「年80兆円をめどとしつつ、弾力的な買い入れを実施する」とした。金融緩和が長引くと、銀行収益や国債市場の取引への悪影響が広がる副作用を重視。金融市場でも事前に「日銀が長期金利の誘導を柔軟化する」との観測が広がり、市場金利は先週から上昇していた。
上場投資信託(ETF)の購入方法も見直した。日経平均株価に連動するETFの購入配分を減らし、東証株価指数(TOPIX)などに連動する分を増やした。日経平均型はTOPIX型より対象銘柄が少なく、一部の銘柄で株価が振れやすいとの指摘が出ていた。年6兆円の購入額は据え置き、株式市場全体への影響は抑えられる。金融緩和の効果を大きく落とさない範囲で、副作用に配慮した形だ。
18年度の消費者物価上昇率(生鮮食品除く)見通しは4月時点の1.3%から1.1%に引き下げた。19年度は1.8%から1.5%に、20年度は1.8%から1.6%に改めた。日銀が翌年度以降の見通しを引き下げるのは珍しい。新しい物価見通しに沿えば、強力な金融緩和は少なくとも20年度まで続くことになる。
「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価が上がりづらい背景を点検した。労働需給や家計、企業の行動など構造要因を分析。「長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価があがりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っている」と評価した。