巨大なステンドグラスから射しこむ陽の光が、シャンデリアの魔法の光と混ざり、荘厳な室内をより幻想的に照らす。
ステンドグラスを背に六人の神官が並び、それに向かい合う形で妙齢の女が跪いている。
女の服装は古びた獄衣で、手足には薄く光を発する枷が付けられている。
神官の表情は一様に険しく非難の色を浮かべているが、対して女は何かを悟ったかのように無表情を貫いている。
「それで……そのような下らない理由でお前は組織を裏切り、よりにもよってアンデッドを信奉する秘密結社に力を貸していたと言う訳だな?」
黒いケープを着た老人が苛立ちを募らせながら女を糾弾する。しかし女は表情を変えず顔を上げて一言返事をすると口を閉ざし再び俯き、まるで彫像の様に微動だにしなくなる。
女は所属していた組織を抜け出し、秘宝の一つを奪い逃走を計った。しかし追っ手を撒くために、奪った秘宝を使い行った計画はたった二人の冒険者によって邪魔された挙句、殺された。
それを国の諜報部隊が女の死体を持ち帰り、復活の儀式を行い拘束の魔法が込められた枷をされた後、質疑応答を繰り返し今に至る。
「それでは次の質問だ。お前を殺したのは漆黒の鎧に二刀の大剣を携えた冒険者か?」
苛立っている神官とは別の緑色のケープを着た神官が問うと、女の顔色が目に見えて変わった。
神官の言葉の内容が頭に染み込むにつれ、体中から冷や汗が噴き出し
殴っても、蹴っても、引っ掻いても、噛み付いても、まるで手応えのないあの化け物の姿を。
体の中身が圧迫され、次第に苦しく、喉の奥から何かが沸きあがってくる感覚を。
自身の体から『ミシッ』『ゴキッ』と、聞いたことも無い音が聞こえてくるのを。
少しずつ、しかし確実に自身へ近づいてくる
チリチリと首の後ろに嫌なものを感じる。あの化け物は自身を
もしかしたら今この瞬間もアイツに見られているのではないだろうか。
もしも自分がアイツの正体をバラしたと知られたら、次は死では済まされない予感がする。
あの強さ、もしかすると百年の揺り返し、
自分より弱い人間を殺して優越感を得ていたのは事実だが、そんな存在と自分が邂逅するなどと誰が予想できただろうか。
神官に進言して
いっそもう一度死にたいという考えが脳裏を過ったところで、黄色いケープを着た神官が口を開いた。
「どうした、クレマンティーヌ。復活後の混乱がまだ抜けないのか?」
腹部に走る鋭い痛みを堪えつつ、お前たちにこの恐怖は理解できないと叫びたい気持ちを何とか抑え、冷静に考えを巡らせる。
「……いいえ、申し訳ありません。死の直前の記憶が無いのです。墓場でズーラーノーンの幹部の持っているマジックアイテムについての会話までしか覚えておりません……」
何とか言い繕ったが、実際復活後に死の直前の記憶が無くなるというのはあるらしい。死の恐怖に耐えられない精神が記憶を封じてしまうという事らしいが、それならば何故私の記憶は封印してくれないのかと問いかけたい。
恐らく肉体のみならず精神も英雄の領域に踏み入れていたのだろう。死ぬ前の私を呪いたい。
神官達は私の言葉が真実か否かを議論しているが、精神支配で聞き出された場合私は無実だと信じてもらえるだろうか。
もしも贖罪によって再び国に仕えることを許されるならばそれに従事しよう。もしも死罪となったならば喜んで受け入れよう。しかしアンデッドを狩るのだけは勘弁してほしい。
願わくば二度とあのような
いっそ戦場から身を引いて商業や農業に従事するのも悪くないのかもしれない。
自身の行く末の議論を聞き流しながら、あるかも分からない未来を思考する。
しかし哀れ女は外の情勢を知らない。大きな力が様々な種族を飲み込もうとしていることを。
そう遠くない未来、最も会いたくないアノ国と戦争が起こるかもしれないということを。
そして戦場で仲間と共にアイツに向き合う自分の姿を。
―――その頃のアインズ様――――
「アインズ様が悪いのです! 我慢していたのに、我慢できないことを言うからぁ!!」
「落ち着けアルベド!」
「アルベド様、ご乱心!なんという豪腕!!」
――――――――――――――――
色々ごめんなさい