2015年7月開催 第一回日本酒プロコース卒業試験 筆記試験問題解答
問Ⅰ:日本酒の発酵、醸造、後処理などに関する設問
1、酵素と酵母の違いを、一般の方に分かり易く説明してください。
一般的に、人や動物の細胞に含まれてる物質の一種が酵素で、細胞が大量に集まり生物としての機能を
持っているのが酵母。酵母は酒を醸造するには欠かせない微生物の一種である。またその代表的な機
能は、アルコールを生産する為の分解酵素を働かせることである。
2、アルコール発酵経路で、ブドウ糖からピルビン酸を経て、後に生産される成分名を、どのような特徴があるかと合わせて説明してください。
成分名:アセトアルデヒド/日本酒の香の中では、青々しい、若々しい、瑞々しい印象を与える香りと
して知られ、例えるならハーブの様な、植物の様な香りを呈する。特に生酒には出やすい。
3、吟醸香はどのように造り上げられますか?2つの経路から説明してください。
2つの経路には、糖分からの分解経路とアミノ酸からの分解経路に大きく分かれ、糖からはカプロン酸
エチルが主に生産され、アミノ酸からは酢酸イソアミルや酢酸エチルなどが生産され、吟醸香に大きな
影響を与える。
4、発酵経路でかかわる酵素の中に「CoA」と呼ばれるものがありますが、これはなんですか?
コエンザイム・エーの略で、アセチル構造を持つ補酵素の一種である。
5、酵母の特徴でカプロン酸エチルを多量に生産する酵母と、あまり生産しない酵母を、協会酵母群から選んで各1つずつ答えて下さい。
・カプ系→9号、1801号など。
・イソ系→14号、6号など。
6、50%の精米でほぼなくなる成分がありますが、その名称を正確に答えて下さい。
脂質
7、生?づくりでの微生物変遷において、硝酸還元菌が繁殖し亜硝酸を生成したあと、どのようにして乳酸菌を繁殖させ、のち乳酸を生成させるのかを説明してください。
醪に暖気入れを行うことで、醪の温度が上がり、麹の酵素活性が促進され、デンプンの分解が進み糖が
増え、その後、乳酸菌が糖を食べて増殖しながらその代謝成分として乳酸を生成する。
8、瓶火入れを行うと、酒質にどのような影響が出るかを解説してください。
アセトアルデヒドの沸点は21℃であるため、63℃程度で火入れすればすぐに揮発する事をベースに解
説する。瓶火入れは、火入れしない状態のまま瓶に詰め火入れを行う為、アセトアルデヒドは揮散せ
ず瓶内に留まる。また、味わいは加熱時のメイラード反応により、糖分やアミノ酸や脂肪酸に熱が加
わり変質しソトロンが増える。よって、香りの影響として、生酒の様な若々しさやフレッシュ感は保
たれるが、酒質の変質により、丸みを帯び穏やかに感じられるようになる。
9、日本酒を貯蔵熟成した場合、黄色味が増し、やがて褐色化しますが、何故黄色味が増し褐色化するのかを、その成分名と反応名を挙げて説明してください。
総合的な見地から、反応名として「アミノカルボニル反応」が挙げられる。また、その反応の一部でも
ある「メラノイジン反応」「メイラード反応」も同様であるが、これらは「糖」と「アミノ酸」の結合
によるものと、双方の熱反応によるものがあるが、これらの成分が存在することにより、ソトロンや
HEMFなどが増えて着色物質を造り、また時間経過とともにその成分が増し黄色化から褐色化する。
10、通称4VGについて解説してください。
正式には「4-ビニル・グアヤコール」。米の細胞壁にあるキシランから麹が生成する酵素によっ
て、フェルラ酸が遊離し、酵母が脱炭酸して生じるのが一般的だが、他の理由による報告も挙が
っている。
問Ⅱ:日本酒の特徴や表現に関する設問
1、「フルーティー」と表現する場合、大きな影響のある成分を2つ答えて下さい。
「カプロン酸エチル」「酢酸イソアミル」
2、「ふくよかな」という表現を使う場合、何を満たせばその表現が可能か、考えられるすべてを答えて下さい。
香りでは「米や麹の香が強いとき」「アルコール濃度が高いとき」
味わいでは「甘味が強いとき」「旨味が強いとき」
3、「清涼感」に関する表現を使用する場合、どのような成分が影響するか、考えられるすべてを答えて下さい。
香りでは「酢酸エチル」「乳酸香」「アセトアルデヒド」「アルコール」
味わいでは「リンゴ酸」「乳酸」「酢酸」「クエン酸」「アルコール」
4、乳酸香を感じる場合、ある条件が必要となりますが、それを3つ挙げてください。
「酸度が高い場合」「お酒全体の香りが弱い場合」「加水量が多くアルコール度が低い場合」
5、「ドライフルーツ」と表現する場合、精米歩合と熟成について考えられる事柄を答えて下さい。
精米歩合は比較的小さい場合(50%以下)で、熟成期間が長い場合「ドライフルーツ」と表現すること
が多い。
問Ⅲ:知っていて当たり前の知識に関する設問
1、マロラクティック発酵とはどのような発酵ですか?
通称MLFといい、ワイン醸造時に使用する専門用語。ブドウ果汁のアルコール発酵後、しばらくして
乳酸菌がタンク内に入り込み、ワイン中のリンゴ酸を食べて乳酸に変換する働きを指す。味わいは
シャープな酸味から丸みのある酸味に変わる。
2、高級アルコールには別名がありますが、一般的に何と呼びますか?
フーゼル油
3、アル添時に用いるアルコールについて、原酒のアルコール度数は一般的に何度ですか?またそれは何を原料としていますか?
Alc.96度 サトウキビやトウモロコシなど植物や穀物を原料としている。
4、日本酒の甘味成分は、どのような成分から構成されていますか?具体的な成分名を2つ答えて下さい。
糖分(ブドウ糖、オリゴ糖)、エタノール、グリセリン、α-エチルグルコシド、1.3-ブチレングリコール
5、日本酒を熟成すると、どのような成分が増えますか?具体的な成分名を2つ答えて下さい。
アミノ酸類(ロイシン、フェニルアラニン、バリン、イソロイシンなど)、ソトロン、HEMFなど。