厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会が2018年度の地域別最低賃金を答申した。全国の時給平均を26円引き上げ、874円とする内容だ。

 最低賃金の目安は都道府県の経済状況に応じ、A~Dの4ランクに分けられている。

 Aランクの東京都は27円の引き上げで985円となる。来年度にも千円を超えそうな勢いだ。一方、最も低いDランクに属する沖縄県は23円で、目安通りに引き上げられても760円にとどまり、依然として全国最低だ。

 Aランクの東京とDランクの沖縄の格差は現在の221円から225円になる。大都市圏と地方の格差は拡大するばかりである。

 沖縄の最低賃金が760円になり、フルタイム(1日8時間、週40時間)で働いた場合でも、月収は約13万2千円、年収は約158万5千円にしかならない。

 沖縄は仕事に就く世帯のうち、年間所得200万円未満の「ワーキングプア」(働く貧困層)といわれる層が全国の約3倍で最も高い。

 今回の引き上げでもワーキングプアを脱することができないのである。最低賃金法がうたう「労働者の生活の安定」には程遠い、と言わざるを得ない。

 今後、各都道府県の地方審議会が目安を踏まえて最低賃金を議論し、沖縄は8月中に改定額を決める見通しだ。新たな最低賃金は10月ごろから適用されることになる。

 沖縄地方最低賃金審議会には格差をなくす努力をしてもらいたい。

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 一方、経営基盤の弱い中小・零細企業の立場からすると、最低賃金の引き上げが人件費の増加を招き、マイナスの影響を及ぼしかねない。

 特に沖縄は中小・零細企業が大多数を占めているからなおさらだ。

 中央最低賃金審議会では、労働者側が賃金の底上げを求めたのに対し、経営者側は中小企業の経営を圧迫しかねないとして大幅引き上げに反対して対立したという。

 政府が昨年3月にまとめた「働き方改革実行計画」では「全国平均千円」を目標に、「年3%程度の引き上げ」を掲げている。

 安倍政権は政策として打ち出しており、最低賃金千円の実現に向けて、確かな道筋を示してもらいたい。

 今回の引き上げが政権主導の「官製賃上げ」の決着であることを考えると、中小・零細企業の負担を緩和する支援策も同時に実施すべきだ。

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 県内の子どもの貧困率は29・9%と3人に1人に上り、全国で最も高い。その背景にあるのが親の貧困であり、その元になっているのが低賃金である。

 構造化された沖縄の「貧困の連鎖」を断ち切るには、最低賃金の大幅な引き上げが効果的であると指摘されている。引き上げがなされたとしても、全国最低であることに変わりはなく、まだまだ不十分であることはいうまでもない。

 格差を拡大しているランク付けの在り方も再検討する必要がある。