ナザリックの隠蔽にとりかかるモモンガ。
マーレとデミウルゴスを連れて地上に出ると夜空に万点の星々が輝いていた。
「この世界にも月があるのか、それにしても美しい、きらきらと輝いていてまるで宝石箱みたいだ」
「この世界が輝いているのは、モモンガ様を飾るための宝石を宿しているからかもしれません」
「ふっ、そうかもしれないな」
デミウルゴスはすぐ褒めるからむずがゆい。
「お望みとあらばナザリック全軍をもって手に入れてまいります」
「なぁ、デミウルゴス。アインズ・ウール・ゴウンは多数決を重んじるギルドだ、仲間達がいない今、私一人の独断でそんなことはできない」
「これは大変失礼しました、モモンガ様。ですが、現在のナザリックの全権はモモンガ様唯お一人に集約しております」
なに、それはと言って言葉に詰まるモモンガ、確かに自分はギルド長ではあったがその役割は連絡と調整で権限なんてなかった。そもそもこのナザリック地下大墳墓の防衛用NPCを防衛以外の目的に使うことに対して抵抗がある。
「マーレ、お前もそう思うか?」
「はい、みんなモモンガ様に従うと思います」
モモンガは自分がナザリックに属する全ての者の上位者として位置する認識が甘かった。彼らに人格がある以上は個人の意思を尊重するべきだと思っていたため、命令ではなく強制しないお願いするという形で力を貸してもらうつもりだったのだ。
この様子では自分に異を唱えることなどないだろう、自分の不用意な発言で大変な事になりかねない、すでに思いあたる節がいくつかある。
「デミウルゴス、マーレ、お前達にとって私はどのような存在だ」
「モモンガ様はアインズ・ウール・ゴウンのギルド長で至高の方々の頂点に位置する、まさに端倪すべからざる者といった言葉が相応しい方です」
「すごく優しい方だと思います」
過分な評価を受けて考え込むモモンガ、マーレは精一杯考えたのが伝わってくる微笑ましい回答だがデミウルゴスが言った端倪ってなに、すごいってこと?
「デミウルゴス、私はギルド長でこそあったが皆とは対等であった、頂点なんて思ってないよ」
「それは、謙遜というものでございます」
「私はお前がこのナザリックの頂点でもいいと思っているぞ」
モモンガが投下した爆弾発言に2人とも凍りつく。
2人の反応を見て少し軽率だったかなと思ったが、これはモモンガのNPC達に対するスタンスを確認するために必要なことだ。モモンガとしてはかつての仲間達と同様に仲良くやっていきたいが上下関係をはっきりさせるのも組織としては重要だと思う。
「まぁ、お前達が望むならお前達の上司、いや支配者として振舞うとしよう」
この発言で2人の表情が明るくなった。
モモンガは話し方から立ち振る舞いまで支配者っぽくしていこうと決めた。
 それにしてもこの2人から話してよかったと思う。マーレは安全牌だ、これからもイエスマンであり続けるだろう、しかしデミウルゴスの
◆
本来の目的に立ち戻る、ナザリックの隠蔽方法として決まっていることは壁に土をかけて周りに小高い丘を作るところまでだ、とりあえずマーレに指示して作業に取り掛かってもらう。
「上空に幻術を展開するとして・・・・・・」
モモンガは空を見ながら閃いた。
「お前は人工衛星というものを知っているか?」
「申し訳ございません、私にはなんのことか」
モモンガは以前映画で見た監視衛星について簡単な概要をデミウルゴスに説明した。
「なるほど、素晴らしい考えです。さすがモモンガ様」
「すでに誰かの人工衛星が飛んでいる可能性さえある、さっき説明した衛星は機械だったが例えばアイボール系のアンデットを宇宙に飛ばして、魔法でその視覚情報を伝達すれば代用は可能だ」
「確かに、その方法であれば情報系魔法で探査するよりも防ぎにくいかもしれません」
情報系魔法の探査は魔法やアイテムによる防御手段があるが、監視衛星にしたアイボール系のモンスターがただ目で見てるだけなのを防ぐのは難しいだろう。
「まぁ宇宙空間でアンデットが活動できるかわからないし、いくら視力に優れたアイボールでも宇宙から地上の様子が見れるのか不明だな」
 現代知識と魔法や
マーレの『アースサージ』が発動し、土が津波のようにナザリックの外壁に移動し始める。そんな光景をぼんやりと眺めていると、当たり前のことだが移動した土があった地面は一段低くなっている、つまり地面が掘れることに気づく。ユグドラシルはゲームなのでフィールドを大幅に改変することはできなかった、土を掘っても自然と穴は塞がれその痕跡はなくるがそんなことは現実には起こらない。
やはりゲームが現実になったと再認識するとともにこういうゲーム感覚が不測の事態を招くことを懸念した。
おもいつきで『ブラックホール』を地面に発動、穴ができる。
(『ブラックホール』に吸われた土はどこにいったのだろうか、ほんとにブラックホールならどうなるんだ、重力がなんかこうすごいことになってなんかそんなんだろ、あくまで魔法で再現しただけだから違うとは思うが、さっきのマーレの魔法で子山羊を埋めた時みたいに凶悪な性能があるかもしれない)
「素晴らしい魔法です、モモンガ様。なるほど確かにこれは確認しておかねばなりません」
デミウルゴスはモモンガの意図を汲み取り笑みを浮かべる。当然モモンガは思いつきで行動で意図なんてない。
「マーレ、すまないが地面を掘って地下からナザリックに侵入できるか確かめてくれないか」
モモンガは戸惑いつつも理解した。ナザリック地下大墳墓はその名の通り地下にある、つまり地下にトンネルを掘ってナザリックに繋げたら上の階層を攻略せずに下の階層に侵入できる。
「はい、お任せ下さい」
マーレの魔法が発動した。
結論から言うと杞憂だった。どんなに穴を掘ってもナザリックに繋がらなかった、地上部分の入り口の下には土しかなかったのだ。じゃあナザリックの階層はどこにあるんだという話になるが気にしないことにした、ギルド拠点だからこうなのかダンジョンだからかはたまた玉座にあるワールドアイテムの効果か分からないし答え合わせのしようがないからだ。
そして現在ナザリックの周りを囲むよう巨大な穴がいくつもあり掘り出した時の土が山のようにつまれている。そして温泉が湧いた、山の近くだからか?
「これは元に戻すのも一苦労だな」
「モモンガ様、よろしければ拠点をつくるのはいかがでしょうか?」
「ほう、面白そうだな、しかしナザリックの隠蔽はどうなる、その拠点からこちらの情報が漏れることは避けたい」
デミウルゴスは拠点の概要を説明し始める。簡単な話だ、掘った穴にモンスターの待機場所を設けるだけだ。
「私に良い考えがある」
 モモンガはそう言うと穴に『
 『
モモンガの思惑としてはこの塔を幾つも埋めてモンスターをそこに配置したうえで土を被せて小高い丘に偽装。出入り口が埋まってしまってもマーレの魔法で無理やり地上と繋げるなり転移魔法を使うなりすれば良いと思った。だが魔法でつくったものは魔力を供給し続けなければやがてくずれさることに気づく、供給し続けるいのはたやすいが自身のMP回復量と消費量が拮抗してしまうためMPが回復しない。
(なにが「私に良い考えがある」だ、数秒前の自分を分殴りたい。2人にどう言い訳するか)
ふと空を見上げると夜空に星が輝く。
(ブループラネットさんが作った第6層の空もすごかったなぁ、今日は空ばっかりみてるな。あっっ!!コンテニュアルライトはなぜずっと続くんだ、なんとか別の魔法にも応用できないのか?)
コンテニュアルライトの説明文を読む。ユグドラシルは作り込みが細かいので魔法の来歴についても書かれている、それによると<星の加護>というもので魔力の拡散を防ぐっとあった、加護なら自分にもある<不浄なる加護>といういうものだがこれはいくつか効果があるが主なのは自身の能力若干上昇させるパッシブスキルで大したものじゃない、魔力の拡散を防ぐという文面から魔力とはことなる力で包みこめばいいんじゃないかと考え、ネガティブタッチを発動した手で塔に触れる、負のエネルギーが塔を包む、なんかできた。
負のエネルギーによる魔法の永続化に成功、また魔法に負のエネルギーをのせれることにきずく、塔が纏っている負のオーラに触れるとダメージが発生、塔内部は変化ないが念のため負のエネルギーに耐性のあるアンデット以外は中に入らないように注意。
パッシブスキルの効果にしては破格の成果にあせり、体が発光して高ぶった精神が安定する。
(まさかとは思うがフレンドリィファイアの解禁と共にネガティブタッチを自分自身に使ってHP回復できるのでは)
ダメージを受けようとするが、デミウルゴスとマーレが泣いて止める。あとでパンドラにさせるよう指示。
(もう今日は帰ろう疲れた)
モモンガはマーレとデミウルゴスにリングオブアインズウールゴウンを渡して転移した。