キャリー・オーバーロード    作:はやかお
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なんか“――”が多くなったけどあんまり気にしないでください。
あとパンドラとニグレドの登場シーンはさっらといきます、こっちもあんまり気にしないでください。


ナザリック把握編
プロローグ1


 プロローグ1

 

  

 

 豪奢な漆黒のローブを身にまとい、黄金の杖を携えた骸骨が巨大な椅子――玉座の前で右往左往している。

 

「なんだこの状況は……ありえない……まさかゲームが現実に」

 

 かつて体感型DMMORPG『ユグドラシル』で猛威を振るったPKギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のギルドマスター、モモンガは動揺していた。

 『ユグドラシル』のサービス終了と同時に意思をもったNPC、ゲームだったら使えるはずのコンソールが使用できず、当然ログアウトもできない。

 状況がうまく飲み込めず、不安と恐怖で心が押しつぶされそうになったその瞬間体が発光し、それと同時に落ち着きを取り戻したアインズはあることに気付かされる。

 

(アンデットだから精神安定化の恩恵がうけられるのか?)

 

 立ち止り、自分の体を触りながら確かめる。

 

(きょえ~!、頭蓋骨の内側に触れる!感触もある!)

 

 ゲームではありえなかった事に驚く。

 スケルトン系の異形種は見た目には骨しかない状態でも、その実見えない肉体が骨の周りについていため、肋骨の内側や頭蓋骨の中は不可侵領域で触れなかった。

 この見えない肉体がないと指ぱっちん等の動作――指ぱっちんはゲームで真空破を飛ばして敵をまっぷたつにする素晴らしいスキルを使う際必要だったり、配下に特定の行動をとらせる合図として一般的な動作――ができない。

 また、サイズ調節機能がついた魔法の全身鎧を身につけた際に、骨に沿って調節されるため腕や足が異常に細くなってしまうという不具合が生じる。

 

(まばたきもできるな、目蓋ないのに。ゲームでもできたっけ?まばたき)

 

 モモンガが自分の体についてさらに調査していると、玉座の間と通路を唯一繋ぐ扉がノックされた。

 

「モモンガ様、どうか私だけでもいいので中にいれてください」

 

 先程、一人になりたかったアインズが玉座の間から追い出したNPCのアルベドの声だ。

 NPC――かつて仲間達と共に攻略しギルドの拠点としたナザリック地下大墳墓を守るために作られた存在――の中でもアルベドは守護者統括の地位についており、防御に秀でたクラスをとっている。彼女が世界級アイテム『ギンヌンガガプ』を装備しているので、それを自分に使われたらという懸念から彼女を遠ざけたかった。

 しかし、このナザリック地下大墳墓の現状を把握するには彼女の力が必須だ。

 

「アルベド、お前一人だけで入ってこい」

 

 扉がわずかに開き、白いドレスを着た絶世の美女が入って来た。

 アルベドが手を広げ抱きついてくる。豊かな2つの膨らみが押し当てられて、とてつもなくやわらかくスライムのような感触が伝わる。

 

「モモンガ様、さっそく続きをしましょう!」

 

 先程、ログアウトできなかったため、自分のアカウントが消されるのを覚悟でアルベドにハラスメント行為に及んだ。続きとはそのことだろうとあたりをつけるが、なんであんなことをしたんだという羞恥心と罪悪感から続きなんかできる訳がない。

 

「いや、それはさすがに……」

 

 思わず後ずさるが、さがった分だけ距離を詰められどうしようもない。これはマズイと思い扉の向こうに控えているセバス達に助けを求めようとするが、すごい力で顔を引っ張られアルベドと目が合う。

 彼女の体全体からどす黒い負のオーラがでている。その黄金の瞳はまっすぐこちらを射抜いて、正直に言うと怖い。

 

「モモンガ様、私はあなた様を愛するように作られた存在です。もちろん英雄色を好むというように――」

 

 モモンガは自分が変えた設定――ビッチである設定をモモンガを愛している設定に変えた――を忠実に再現しているアルベドを見て思う。

 

 (ごめんなさい、タブラさん)

 

 かつての仲間に謝罪し、可能なら弁明する機会が欲しいと願いながら<伝言(メッセージ)>の魔法を発動するがどこにも繋がる気配がない、落胆する気持ちから精神安定化が発動する。

 

「――モモンガ様が懸想したのは、ソリュシャンですか、それともナーベラルですか、まさかシズなんてことは――」 

 

「アルベド、私の話を聞いて欲しい、これは重要なことだ」

 

「いえ、モモンガ様、私は別にモモンガ様を一人占めする気はございません、ただ一番最初にお情けをいただければ結構です。とりあえず服は脱いだほうがよろしいでしょうか、いや着たままというのも」

 

「あ~、うん・・・アルベド、ナザリックの危機なのだ、守護者統括としてお前の意見が聞きたい」

 

「はい、モモンガ様。なんなりとお命じください」

 

 ナザリックの危機という言葉に反応し、態度を改めたアルベドにできる女の風格を感じ取り、これなら大丈夫そうだと安心すると同時に彼女と彼女を作ったタブラさんに心の中で称賛を贈る。

 

「アルベド、GM、運営、ユグドラシルという言葉に聞き覚えがあるか?」

 

「はい、かつて至高の方々がおっしゃていたなかに、クソ運営という言葉が多くあったと記憶しております、またユグドラシルも耳にした覚えがございますが、GMという言葉は初耳でございます」

 

 モモンガもかつての仲間たちとの会話中にクソ運営はかなりの頻出ワードであった覚えがある。

 

「うむ、では運営とユグドラシルの意味は分かるか?」

 

「あくまで推測になりますが、運営は至高の方々に刃向かう何らかの組織を運営する個人または団体のことを指し、ユグドラシルはこの世界の名前だと思います」

 

 だいたい合っている、ナザリックでも最高レベルの頭脳を持っている設定は生きている。ただユグドラシルがゲームであるという認識はないようだ、このことは伏せておいた方がいいだろう。

 

  

 

 

 次の話題に移ろうとするが、アルベドが体を震わせている。何かよくない予感がする。

 

 話の流れから、運営から攻撃を受けていると勘違いしたアルベドが暴走して、軍を編成して出兵すると言いだし、それをなんとか止めようとしたモモンガが四苦八苦しているうちに、全階層守護者が集結してしまい、話がどんどん大きくなっていく。

 

 「アインズ様、すぐに出兵をお命じください、その運営なるものを叩き潰してまいります」

 

 第七階層守護者のデミウルゴスが覇気を十全に漲らせながら宣言する。

 

 いや、違うんです、誤解なんですとモモンガは叫びたかったが、眼前で今か今かと命令を待つ者たちの目を見て思う、――こいつらマジだ。

 

 「デミウルゴス、すまない今回の事は誤解なのだ」

 

 モモンガが頭を下げると、周りからどよめきが起こる。

 ナザリックに属するものにおいて、モモンガを含むギルドメンバー『至高の四十一人』は絶対の存在だ、それが頭を下げるなどありえない。

 

「モモンガ様、どうか顔を上げてください、私が全て悪いのです。私が、私が」 

 

 アルベドは目に涙を滲ませながら、モモンガに懇願する。失望されないために。そして、見捨てられないために。

 

「泣くなアルベド、今回の件は私の落ち度だ、お前は完璧に役割を果たしている、それを使いこなせない私が愚かだったのだ、許して欲しい」

 

「そんな、許すだなんて、私達の支配者はモモンガ様だけです、モモンガ様こそ絶対なんです、どうか私たちを見捨てないでください」

 

 見捨てないでくだい、この言葉がモモンガの胸を打つ、そうかユグドラシルを引退した仲間たちのことを分かっているのか。 

 

「私は絶対お前達を見捨てたりしない!」

 

 この瞬間から、モモンガの腹は決まった。リアルでの鈴木悟としての自分は死に、このナザリック地下大墳墓の支配者モモンガとして新たな生を受けた。これより、自分の全てを懸けてナザリックを守ことを決意した。

 

「モモンガ様、ありがとうございます」

 

 アルベドが代表して応えるとその場にいた全てのものが涙をながす、モモンガも泣きそうだが、抑圧された。まぁ骸骨だから泣けないが。

 だがこれでナザリックに所属するNPC達の忠誠心に疑いの余地がないことが分かった。

 

 もう一つ確認しなければならないことがある。

 ギルドメンバーの四十一人、自分を除く四十人がこの世界に来ているのか、『ユグドラシル』のサービス終了前に会いに来てくれたギルメンは何人かいた、彼らもこちらにきているのではないか。先程<伝言(メッセージ)>の魔法が届かなかったのはなにかの間違いではないのか。

 

「私以外のギルドメンバーがどこにいるか、分かるか?」

 

 NPC達に重い沈黙が訪れる、これは失敗だったかと思っているとアルベドが口を開いた。

 

「さきほどまでヘロヘロ様が来ていることがわかっておりましたが、ふたたびお隠れに」

 

「ヘロヘロさんは、お前になにか言っていたか」

 

「いえ、私は直接顔を合わせた訳ではございません」

 

(会ってないのに、ヘロヘロさんが来ていたことが分かるものか?)

 

 アルベドの答えが要領を得ないためさらに質問するといくつかのことがわかった。

 

 NPC達はギルドメンバーを知覚する能力がある。これはNPCとギルドメンバーはパスのようなものがつながっており、気配を完全に遮断するスキル等を使用しない限り常にその存在を感じ取れるというもので、NPC達はこれで敵味方を識別するらしい。

 このパスは召喚したモンスターにも適用され、例えばモモンガがアルベドの知らないところで彼女の知らないモンスターを召喚したとしても、彼女とそのモンスターが顔を合わせた瞬間、同じ主に仕える者であると認識できる。

 モモンガの方からNPC達を知覚することはできないのは、ゲームでNPC達はフレンドリィファイアが禁止だったため、ゲームが現実になった辻褄を合せるためにこのパスという存在が生まれと考えたが推測の域を出ない。

 次にナザリック地下大墳墓のマスターソースの存在だ、アルベドによるとモモンガ以外にこのマスターソースにアクセス権限のある存在がいないらしい。これは自分でもすぐに確認を取ったが結果は彼女の言うとおりだった。

 このことから現在モモンガ以外のギルドメンバーは存在しないことが分かった。

  

 モモンガはこれからどうするか考える。

 

(とりあえずナザリックの外がどうなっているか確認しないとあと、ギルド拠点の維持費はどうなったんだ?)

 

 ゲーム時代の終盤、モモンガはナザリックを維持するため資金集めに苦労していた。

 

「アルベド、ナザリックの維持費はどうなっているかわかるか?」

 

「それでしたら、財務の管理者であるパンドラズ・アクターが詳しいかと」

 

「そうか、では階層守護者とセバスとニグレドは第6階層の円形闘技場(アンフィテアトルム)に移動してくれ」

 

 モモンガはパンドラズ・アクターとあるアイテムを回収後、自身も円形闘技場(アンフィテアトルム)に移動。

 ギルドメンバーはこの世界には来ていない可能性が高いが、念のため情報収集に特化した魔法詠唱者であるニグレドに魔法による調査を依頼。

 場所を移したのは攻勢防壁による反撃を警戒して、モモンガなりに考えてのことだ。

 

「ではニグレド、まずはナザリックの地表部分を映してくれ」

 

「かしこまりました、モモンガ様。<水晶画面(クリスタル・モニタ)><千里眼(クレアボヤンス)>」

 

 ニグレドの魔法が発動し、ナザリック地下大墳墓の地表部分である墓地と霊廟が映される、そしてその周りには草原が広がっており、遠くには森と山頂が雪で白くなった巨大な山々が確認できた。

 

(知らない場所だ、沼地ではないか……。『ユグドラシル』にはあんなデカい山ないよな)

 

 続けて、ニグレドが<次元の目(プレイナーアイ)>を発動しギルドメンバーを捜索しようとするが、画面は真っ暗でなにも表示されない。

 

「やはり、見つからないか。さてどうするか……」

 

 モモンガは顎に手を当てて考える。自分達以外にも転移してきているプレイヤーも調査したいが、情報系魔法は相手の攻勢防壁に引っかかると手痛い反撃を受ける。

 モモンガの頭には一つだけ候補が浮かぶ。

 

「ネコさま大王国」

 

 そうして映し出されたのは、廃墟となったネコさま大王国のギルド拠点と黄色い法被の様な服を着た青い毛並みのネコだった。

 

 

 

 

 

 

 




モモンガ以外はあんまり喋ってないですね。
ナザリックのマスターソースのアクセス権限は捏造です。
次元の目(プレイナーアイ)>はweb版で登場しましたが、対象をどうやって絞っているか不明なので、わたしは相手の名前がわかってれば使えると思ってやってます。でもこれだともっと偽名を使うと思うんですけど原作にそんな描写ないですよね……








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