総合的な冠婚葬祭ビジネスを展開している（株）ラック。逆風下の業界にありながら、毎年着実に成長を続けているその強さの秘訣は何か。先日発行されたばかりの同社代表・柴山文夫氏の著書『ストーリーで語る 強い会社の創り方』の内容を踏まえて、同社の事業戦略を探る。
＜ニーズを捉えたマーケティング＞
今日のブライダル業界における「勝ち組」と「負け組」の決定的な違いは、成約率ではなく、集客力の差にあるという。成約率自体は平均50％程度と言われており、稼動率日本一を誇る同社のRITZ５でも成約率は47～48％。施行組数を増やすためには、圧倒的な集客力（見込み客の形成）こそが絶対条件となっている。そのため、同社のブライダル事業では、とくにマーケティング戦略の構築に重きを置く。
たとえば、RITZ５では、「福岡一リーズナブル」な低価格で高品質なサービスを提供することで、マーケットシェアを拡大する戦略を採っている。また、「わがままウェディング」と名付けられた顧客の個性的で多様な要望に応える基本コンセプトによる差別化。さらに、iPadなどのタブレット型PCをプレゼンテーションに取り入れ、会場見学に来た来館者に実際の披露宴の動画をその場で見せるほか、花嫁料理教室の実施など、顧客のさまざまなニーズに応えるべく、新たな試みも積極的に取り入れている。
ブライダルビジネスは、リピートビジネスとも言われる。挙式者の周りから新規客の挙式を誘致することが重要であり、提供されるサービスが高品質であればリピート率は高くなる。RITZ５のリピート率は48％という高水準であり、このリピート率の高さこそが同社のブライダルマーケティング戦略がうまく機能している何よりの証拠だろう。
＜葬儀ビジネスの新たな可能性＞
冠婚葬祭ビジネスのなかでも、とくに葬祭ビジネスは、長い間「互助会」というビジネスモデルのうえに成り立っていた。しかし、このモデルは崩壊しつつある。なぜなら、少子高齢化という人口動態の変化や若者文化の流行の変化などによって、結婚式の形式が多様化し葬儀とは別の市場が生まれ、それまで一体だった結婚と葬儀というパックでのサービス提供が成り立たなくなったからだ。また、日本のコミュニティの変化による大家族制の崩壊で、直葬・家族葬などが流行した結果、葬儀マーケットは混乱状態にある。
同社では、この現在の"無縁社会"の日本で葬儀ビジネスを成功させるために、"有縁社会"を構築する新たなビジネスモデルの打ち出しにも積極的に取り組んでいる。
たとえば、「葬儀事前相談」というセミナーの開催。これは、一般的に葬儀の知識がほとんどない顧客に対して、周辺分野の情報提供や価格以外の判断基準のレクチャーを行なう。それにより、疑問・不安を解消して短期間で信頼関係を築くことにつながっている。ほかに新たなマーケット囲い込みツールとして、「エンディングBOX」という試みも提案している。これは、登録者のエンディングノート（万が一のことがあったときのため、必要な情報や家族への思いを書き留めるもの）やプロフィール、メッセージ、写真、ビデオなどをまとめたもので、データ化してバーチャルの世界に保存するほか、バーチャル上のメモリアル（お墓）などへの発展も考えているという。
葬儀事前相談やエンディングBOXなどを武器に新たなビジネスモデルをつくり、未開拓市場に切り込む戦略を展開していくことが、同社の葬儀ビジネスの強さにつながっている。
冠婚葬祭とは、いわば喜びや悲しみといった日本人の人生における通過儀礼である。この分野での究極のサービスを追い求めていく同社は、これからもさらに強くなっていくことだろう。
【坂田 憲治】
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（株）ラック
［COMPANY INFORMATION］
（株）ラック
代 表：柴山 文夫
所在地：福岡市博多区東比恵3-14-25
設 立：1967年12月
資本金：6,575万円
売上高：（11/3）約51億5,500万円
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