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俺の幼馴染が勇者に魅了されて・・・そして婚約破棄された。(農民編) 作者:みずは
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豹変

間もなくすると、彼女が領主様の館から出てきた。

再会の挨拶もそこそこに、領主様の館ではなく、なぜか彼女が泊ってるという宿に案内された。

今までは、何処の馬の骨とも知らない平民の娘を領主様の館に泊めるわけにはいかないということで、この宿に泊まっていたそうだ。

今では討伐の功績が認められ、領主様の館に滞在してるそうだが、まだ肩身が狭い思いをしてるらしく、この宿と行ったり来たりしてるらしい。あと3日もすれば王都に向かう予定なので、それまで引き払わずに使うつもりだそうだ。


宿に着くと、彼女は荷物のいくつか持ち出す為に宿泊してる部屋に向かった。

俺は1階の食堂で待つように言われていたが、彼女の部屋の前で待つことにした。

しばらくして部屋から出てきた彼女は、俺の顔を見るなり少し困ったような顔をした。

その後は1階の食堂で早めの夕食を取りながら、彼女の両親が王都で待っていること、村の近況などを伝え、その後は彼女の冒険譚で大いに盛り上がった。

日も暮れ始めた頃、彼女は領主の館に戻るということで、その日は解散となった。

もう少し飲んでいたい気分だった俺は、別の店に梯子することにした。

彼女は口を付ける程度でほとんど酒を飲まなかった為、俺も遠慮してしまい、少々飲み足りなかったのだ。


夜の帳も下り、いい気分で飲んでいたところに、聞き覚えのある声が聞こえたので、店の外をちょっと覗いてみると、勇者らしき男と着飾った彼女が仲良く腕を組んで、通りを歩いていた。

一気に目の前が真っ暗になった、何が起きているか理解できない、いや理解したくないだけだ。

そう・・・彼女は勇者と浮気をしていたのだ。


少し落ち着いてから店を出たが、彼女の姿はとうに無く、その後どこをどう歩いたのかわからないが、いつの間のか彼女の泊ってる宿の前に戻っていた。

彼女の部屋の窓を見るが、灯りは付いていなく、少しばかり安心するのだった。


その後も彼女の部屋の窓を見ながら道端に座り込んでいた俺はいつの間にかウトウトしていた。

朝日が差し込みだし目が覚めると、すぐさま昨晩の情景が鮮明に思い出され俺を苦しめた。

彼女の幸せそうな顔・・・あんな顔、村でも一度も見たことが無かった。

悔しい気持ち、悲しい気持ち、そして怒りが・・・いろんな感情が湧き出てきて、俺は頭を抱えて呻いた。

そうするうちに、もしかしたら酒に酔って見間違いをしたかもしれないという一縷の望みにしがみ付く、

そうしなければ、何もできなくなってしまったいただろうから。

何はともあれ、とにかく調べてみることにした、結論は先延ばしにしたかったからだ。


まずは、彼女を尾行しようと思い、領主様の館の入口を見張った。

すると、大して待つことなく一人外出する彼女を見つけた。

だが、しばらく尾行しているうちに、俺はこのまま彼女を尾行を続けるのではなく、彼女から話を聞いてみた方がいいのではないかと悩みだした。

しかしながら残念なことに、気が付くといつの間にか彼女を見失っていた。

仕方なく次に、彼女と勇者の仲を中心に街の人たちに聞き取りを行った。聞き取りが進むうちに、彼女と勇者の仲睦まじい様子がわかり、俺は暗澹たる気持ちに陥っていった。

また証拠集めの一環として、彼女の部屋への侵入も試みるも、どこからか大きな物音がして、宿屋の人に気付かれそうになったので断念した。


今日一日の成果でわかったことは、彼女と勇者が付き合っているのはほぼ間違いなく、確たる証言は得られなかったが、肉体関係があるという嫌な噂もあった。

さらに勇者には姫様との婚約の噂、聖女様や賢者様とも関係があるという噂もあり、もし事実であれば、一夫一妻制のこの国おいては許されないことだ。

もしかしたら、彼女は騙されているかもしれないし、彼女に直接会って話をすれば彼女をすくえるかもしれない、なにしろ!今、彼女を救えるのは俺だけなのだからと明日の対面を決意した。


翌日の朝、彼女たち勇者一行が王都へ向かう前に彼女に会う為に、俺は領主様の館に再び赴いた。

また門番に手紙を見せ居て彼女への面会を頼むと、どういう訳か数人の衛兵がやって来て取り囲まれた。

それからすぐ後、彼女と勇者一行がやって来た。

彼女は俺を見ると、まるで汚いモノを見るかのように一瞥した後、何も言わずに去っていった。

俺は大声をあげて彼女を引き留めようとするも、勇者の言葉によって遮られた。

「彼女は迷惑している。もう君には会いたくないそうだ。君は彼女のことは諦めておとなしく村へ帰り給え!」

一昨日とまるで違う彼女の態度、そして勇者から告げ告げられた彼女の言葉、茫然自失になった俺は何も言えず、衛兵たちに引き摺られるようにどこかに連れて行かれた。


どうでもいい裏話


【勇者】:気ままな自由騎士 村を魔物から救っていたら、王様から「勇者」の称号を賜る。


【聖女】:女神官 石大工の娘が出家 厳しい修業の結果、教皇様から「聖女」の称号を賜る。


【賢者】:子爵令嬢 数々の魔術研究の成果より、大賢者様より「賢者」の称号を賜る。


【騎士団長&騎士たち】;勇者たちの露払いが役目の人たち 15名全員男性


【幼馴染】:狩人 村人

幼馴染みは当初完全に浮いた存在で、しかも女性なので、領主も扱いに困っていた。

爵位も称号も実績もないので、丁重に扱うこともできず、かといって無下にもできなかった。

近くの宿を紹介して住まわせる形を取った。一応、宿代は領主持ち

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