俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:コヘヘ
<< 前の話
これ以上、思いを踏みにじらないために。
ドワーフとの交渉を終えた俺は、過去の行動を思い出してみた。
接触した人物、地形、国等だ。さらにそこにユグドラシル時代の思い出も…。
…過去を振り返った俺は、一つ『世界滅亡』の可能性を思いついた。
主義主張どころでなく、その可能性を検証しなければならなくなった。
俺の『方針』を曲げてでも、それだけは確認しなければならなかった。
絶対に知られてはならない可能性だ。…考えたくもない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺は、ナザリックの宝物殿にンフィーレアを呼び出した。
ンフィーレアと『世界』を救うために。
ンフィーレアには、彼のタレントの『実験』という誤魔化しで呼び出した。
…だが、ンフィーレアは俺と同じ可能性に気が付いた。即座に。
…『ゴブリン将軍の角笛』と『叡者の額冠』の存在を知っていたからだ。
二つとも彼はその脅威を知っていた。
『叡者の額冠』についてはエ・ランテルで何が起こる予定だったのか、
その詳細を彼は知っていた。
もはや全てを誤魔化せないと悟った俺は、ンフィーレアを助けるために『説得』をした。
俺の『指輪』を見せて、説明した。
これならンフィーレアを確実に救えるし、
逆に『世界』も救える可能性が高いと説得した。
だが、ンフィーレアは即座に自分を殺すべきだと主張した。
…『エンリ』の幸せの為に。
こう言われると、『それ』がわかるようになってしまった俺は、
ンフィーレアに妥協案を提示した。
想定される最悪の、『万が一』の可能性がなければ、ンフィーレアを殺さないという案を。
その後、ンフィーレアと俺は様々な角度から実験を行った。必死で。
その可能性が存在するなら、ナザリックの『財』を惜しんでいる場合ではなかった。
様々な実験の結果、最悪の可能性『世界滅亡』はなくなった。
俺の、最悪が想定された『真の能力』をンフィーレアは持っていなかった。
俺とホッとした。
だが、ンフィーレアはやはり自分を殺すべきだと主張した。
ナザリックの『財』を用いた実験のせいで彼は、『危機』をより確信していた。
『世界滅亡』ではなく『危機』を、だ。
それは俺が必ず防ぐと言っても、ンフィーレアはその『可能性』を語った。
…ンフィーレアの話にはあまりに筋が通っていたため、俺は反論できなかった。
何より俺は愛することを、愛されることを知ってしまったから。
彼を、ンフィーレアを決して否定できなかった。
…俺は『流れ星の指輪(シューティングスター)』を彼に与えた。
その『覚悟』の対価として、そしてンフィーレアの言う『可能性』を摘むために。
ンフィーレアは『指輪』の説明を改めて聞いて、装備して納得した。
そして、自分が死したら『指輪』を俺に必ず返すことを誓った。
…俺は、『世界』の危機を悟れる『男』を永遠に失うことを残念に思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
全ての実験と様々な話し合いの後、ンフィーレアは言った。
「ゴウン様。あなたに全て任せます。エンリのことも、『世界』のことも」
ンフィーレアは覚悟をしていた。目でわかった。
「ですが、ゴウン様。あなたは『優し過ぎ』ます。
だからこそエンリを託せるのですが…
だけど、いつか今回のような『可能性』を見つけたら即座に切るべきです!
…どうかエンリをよろしくお願いします」
そう言ってンフィーレアは俺に頭を下げた。
俺は黙って頷いた。その『覚悟』の全てを受け入れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…俺は覚悟が足りなかったかもしれない。
ンフィーレアとのやり取りで確信した。
『個人』で世界を滅ぼせる可能性を持った存在がいる。…無茶苦茶な条件を満たせば。
それこそワールドアイテム20のような理不尽さの権化の可能性が。
或いは、それを上回るかもしれない。
ンフィーレアから、この『世界』のタレント持ちの重要性を理解した。
もちろん、最悪のシナリオである『世界滅亡』クラスの可能性は極めて低い。
ンフィーレアはそうではなかった。言い方は酷いが、ただの有益なタレントだ。
法国最強の切り札、『番外席次』のタレントも強力だが、『世界滅亡』とまではいかない。
だが、タレント持ちの把握、研究は、将来的に必要不可欠と確信した。
だが、『魔王国』ではまだ無理だ。おそらく五年から十年はかかる。
…さらに、『法国』の協力がいる。最適解のためには。
スルメさんに遠慮していたところもあったが相談すべきだ。
今回の気づきはツアーやスルメさんに報告すべきだろう。
『世界』を救う者、皆が知るべき緊急性の高い情報だ。
秘匿すべきでない情報だ。少なくとも二人は絶対知らなければならない。
これは、ナザリック地下大墳墓を支配する、『財』を極めた俺だから気づけた可能性だ。
…『セラフィム』のような上位ギルドが転移していたらと思うと恐ろしい。
今回の実験で、ンフィーレアには可能性がないと確定したが、
少なくとも『セラフィム』なら間違いなくンフィーレアを用いて『それ』を実行した。
俺のおかしかった頃の思い込みでなく、『セラフィム』ならやる。
…『世界滅亡』の可能性に気づかずに。
『セラフィム』は、自分の身を守る感覚で行ってしまう。そこに悪意はない。
ナザリックの、ユグドラシル最大の仮想敵だったからわかる。
彼らが、そういう『思考』ができることを。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『タレント』というのは、恐ろしい。
ランダム性というところが。
おおよそ200人に一人ということも含めて。
きっといつか俺の考える『世界滅亡』に当たる人物が誕生しかねない。
該当しても、数百年に一度くらいの杞憂な可能性が高いが。
『タレント』は使いこなせればこの上なく有益だ。
俺だって、生まれ持った能力を否定したくはない。
迫害したいわけでも、差別したいわけでもない。それは論外だ。
今回ンフィーレアで想定された『世界滅亡』の前提を壊すことは、百年あれば余裕だ。
今だと可能性が残るからンフィーレアを呼んだ。
現段階では絶対ないというのは不可能だった。
…それがなくてもンフィーレアの寿命で潰えた可能性だ。
もう、彼の可能性はなくなった。
…飽くまで『タレント』のだ。
『薬師』や『錬金術師』の才能は健在であり、彼は極めて有能だ。
俺が『世界滅亡』の可能性に気づかなかった頃、
想定していたンフィーレアの『タレント』の最適な運用法等はあった。
しなかったのは、『世界』を救うのにあまり『個人』に依存したくなかったのと、
俺が、ンフィーレアをこれ以上利用したくなかったからだ。
要するに俺の『我儘』だった。
覚悟している彼を否定はもうできない。
『薬師』として『錬金術師』として全力で頑張ってもらう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『タレント』の可能性は身近にあることに気が付いた。
たとえば、『商会』には沢山の有害とされて迫害されたタレント持ちがいる。
その一人に『信仰系魔法拒否』のタレント持ちがいる。
文字通り、彼女には信仰系魔法が効かない。
生まれ育った村で『魔女』扱いされて拷問されていたところを『冒険者モモン』が拾った。
あのままなら彼女は処刑されていただろう。『魔女』として。
その村の関係者から彼女の記憶を消し、『商会』に任せた。
一々構う暇がなかったのもあるが、彼女が『従業員』として扱える存在だったからだ。
『商会』は初期で人材不足だったのもある。
今は八本指、ラナーを始め様々な伝手があるが。
だが、そんな彼女を上手く活用すれば、信仰系魔法を全て防ぐ『盾』になる。なってしまう。
俺は『神聖攻撃無効』のワールドアイテムの能力があるからいらない。
しかし、アンデッドのプレイヤーやNPCなら役に立つ。
要は、生きていれば『盾』になるのだ。どんな状態でも。
…我ながら非道な発想だが。
アンデッドとなり精神が変化したら、そういうことをやるプレイヤーもいるかもしれない。
身を守るために。
実際、そうされたら脅威だ。
なりふり構わない存在、しかも、プレイヤーは初期の鎮圧に成功しても被害が大きくなる。
彼女に身を守る訓練をさせるべきかもしれない。
…いっそのこと事実を明かして話し合うべきかもしれない。
彼女の『説得』はこれからの『訓練』にもなる。
ある意味で有害で有益なタレント持ちの勧誘の。
…幸い俺は忙しいながらも、時間に余裕がある。
あの『策』以降、俺は仕事を大分ナザリックの皆に任せるようになった。
俺は最低限の仕事をするだけで良いと確信したからだ。
勿論、まだ忙しいのには変わらないが。
俺の『休憩時間』は確実に増えた。
『番外席次』の告白から逃避した『俺』の、
意味のないオーバーワークで得た数少ない有益なものだ。
タレント持ちの彼女を過去の恐怖で従わせるのは心苦しいが、彼女自身のためにもなる。
…後日、接触しよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
害となるタレントでも、活用によっては有益であり危険なのだと確信した。
…『世界』を守るためにタレントの管理は必須だと確信した。
法国のノウハウが今すぐにでも欲しい。
一刻も早くスルメさんが法国を、国の『意識』を完全に掌握できることを祈った。
…十数年後、掌握された法国がニートだらけになって、
今までのノウハウが喪失するなんてないよな?
流石にスルメさんを馬鹿にし過ぎだが…
彼、いや『彼ら』は、本当に何やらかすか想像できない。
スルメさんが有能なのはわかっている。
あの六人を纏めて…一人だけあまり知らないが。
バードマンだったのは知っている。どこかで何度か見た記憶もあるが…
とにかく、『世界』から人類を救ったというだけで本当に凄い。
六百年前など、人類の文明は碌にない時代だったはずだ。
実際ツアーからもそう聞いている。
「彼らは全て変態だったが、その異常な生命力で有り得ない結果を出した」、と。
…『死神』としても、為政者としても尊敬できるのは当然だ。
何せ、ドワーフの文献のお陰とはいえ、
『霜の竜(フロスト・ドラゴン)』のヘジンマールすら俺のことを知っていたくらいだ。
本当に凄まじい影響力だ。
ヘジンマールから俺を、『魔王』を知っていると言われた時、
俺が演技を忘れて喜んでしまったくらい偉大な『友』だ。
…だが、どうしても不安になってきた。
俺はふと、るし☆ふぁーさんを思い出した。
彼ならどう行動するかと考えて、すぐに『鉱山』を思い出した。
…結果的には大丈夫な方向に行くだろう。問題ない…はず。
ンフィーレアの可能性については、
活動報告の『ンフィーレアが怖すぎる件(恐怖の展開一部抜粋)』にあります。
読まれる方は私の駄作の雰囲気を壊しかねない内容なので読むのに注意をお願いします。
元々タレントの恐怖を言うつもりでした。
『彼女』のエピソードを加えるつもりでした。
ですが、ンフィーレアの件に気が付いたときこれ以上ない恐怖でした。
感想のお陰で書けました。本当にありがとうございます。