いいモノ調査隊
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超小型デジカメ「RX0」の写りを徹底検証! 小物や上手な使いこなし方も。

皆さまに、あまりなじみのなかったソニーの「サイバーショット DSC-RX0(以降RX0と表記)」というカメラを、前回の記事でご紹介しました

前回の記事はこちら→プロが絶賛! フィルムケース大の謎カメラ「RX0」の正体を暴く

かなり反響があったようでして、「こんなのあったのか!」「すげえ、欲しい!」と
いった声があったと聞いております(やはり皆さん、RX0の存在自体を知らなかったんですね……)。

本稿では、前回紹介しきれなかったRX0の写真画質がどの程度のものかを検証してみることにします。

RX0の画質に関してのご自慢ポイントは以下の2点となります。

1)高い描写性能を実現するツァイス テッサーT* 24mm F4(単焦点レンズ)
2)メモリー一体1.0型積層型 Exmor RS(R)CMOSセンサー

【比較・検証-1】
GoPro、コンデジ、デジ一と画質比較

まずは、混同されがちなGoPro 6を含め、ほか3機種と写真画質の描写比較(建物外観) をしてみることにしました。

こちらが、なるべく同じ位置から撮影できるように工夫して固定した、検証用装置です

こちらが、なるべく同じ位置から撮影できるように工夫して固定した、検証用装置です

画質比較カメラ

・SONY DSC-RX0 【1インチセンサー 単焦点コンデジ】
・GoPro HERO6 【アクションカム代表】
・SONY DSC-RX100M3(zoom設定24mm) 【1インチセンサー 高性能コンデジ代表】
・Nikon D810 + Ai AF-S Zoom Nikkor 17-35mm f/2.8D IF-ED(zoom設定24mm) 【フルサイズ一眼レフ代表】

※都議会議事堂を撮影。画素数が違うカメラのため、幅4000pixにリサイズして画像を比較。
※特に高画素機であるD810のデータは、面積比1/4ほどに縮小しており、実際は4倍解像しているので、その事情を考慮してご覧ください。

写真画質比較(画角・解像感比較)


引きで見るかぎり、焦点距離(画角)が極端に違う、GoPro 6(推定15mm)以外は同じように見えます。
次に、詳細描写を確認するために、部分的に切り出して拡大してみていきましょう。

赤枠部の拡大比較(中央・左・右上端)

赤枠部の拡大比較(中央・左・右上端)

【中央部】拡大比較するとGoPro 6の解像感がきわめて悪いことがわかります(動画機なので当然かと思われます……)

【左部】端においては、RX100M3の描写がややヌルくなっています

【左部】端においては、RX100M3の描写がややヌルくなっています

【右上端部】フルサイズカメラ D810 + Nikkor広角ズームレンズの解像感に迫るRX0の描写。この小さなカメラが、ここまでいいとは驚きです

RX0を半年使っているので、ていねいな描写をすることはわかっていましたが、今回の検証で改めて高画質ということが実証されたと思います。RX100M3の画質は、コンデジの中では比較的いいほうだと思いますが、コンデジのズームレンズは利便性優先に作られているため、周辺描写では明らかな差が現れる結果となりました。

※24mm比較においてニコンの高級F2.8ズームレンズには若干及ばないものの、張り合えているレベルではあります。小さなカットであれば、仕事の広角撮影でも十分使えそう(私はすでに仕事でも使っています)。
※繰り返しますが、高画素機であるD810のデータは、面積比1/4ほどに縮小しており、実際は4倍解像しているので、その事情を考慮してご覧ください。

【比較・検証-2】
GoPro 6と「ゆがみ」「レンズ性能」比較

次に、同じようなサイズ、ルックスで混同されるGoPro 6との比較です。同一箇所から撮影し、ゆがみの度合いを比較しました。

レベルを合わせて水平に構えて建物を撮影

レベルを合わせて水平に構えて建物を撮影

24mm相当にトリミング。中心部だけなのに、画面端の垂線は内側にたわんでしまいます

24mm相当にトリミング。中心部だけなのに、画面端の垂線は内側にたわんでしまいます

RX0は、グリッドラインと比較しても、ほとんどゆがみがなく正確に表現されていることがわかります

RX0は、グリッドラインと比較しても、ほとんどゆがみがなく正確に表現されていることがわかります

この広角24mmのゆがみの少ない正確な描写が、RX0独特の持ち味の1つです。同じくゆがみの少ない銘玉と誉れ高きレンズ、ライカの「SUPER ANGULON(スーパーアンギュロン)21mm」をほうふつとさせるのではないでしょうか?
※スーパーアンギュロンはライカブランドであるが、製造元はドイツの名門シュナイダー社

【この性能を伝えたい-1】
最高16コマ/秒 の高速連続撮影

RX0は高速読み出し自慢のメモリー一体1.0型積層型 Exmor RS(R)CMOSセンサー搭載で、16コマ/秒の高速連続撮影を可能としています。また、この高速読み出しセンサーの恩恵は最高1/32000秒のアンチディストーションシャッター(高速移動の被写体がゆがみにくい)であることも忘れてはいけません。
※ソニーのDSC-RX100M4、RX100M5、RX100M5A、RX100M6、DSC-RX10M2、RX10M3、RX10M4 も、同じくExmor RS 1インチCMOSセンサーを搭載しています。(2018.7.31現在)

0.5秒の出来事の間に、8コマ撮れます。撮影の瞬間を逃さない高速連続撮影(最高16コマ/秒)

0.5秒の出来事の間に、8コマ撮れます。撮影の瞬間を逃さない高速連続撮影(最高16コマ/秒)


最高16コマ/秒の高速連続撮影は、急に訪れるシャッターチャンスの瞬間を逃しません(イルカウォッチング船でもいつチャンスが訪れるか、イルカの気分次第なのです……)。アンチディストーションシャッターは、高速移動をするイルカであっても、従来の電子シャッターの弱点であったゆがみ(ローリングシャッター現象)が起こりません。そして10m防水だから、動く船上からの水しぶきがかかるイルカ遊泳シーンも気にせず撮れるのでいいですね(RX0が小さすぎるので、海に落っことさないように注意! ストラップ必須です)。

【この性能を伝えたい-2】
ゆがみの少ない「単焦点広角24mmレンズ」

起動から撮影まで4秒の快速速写スナップができることを合わせて考えると、RX0はスーパースチルカメラといえましょう。高価な価格も致し方ないのではないかと思わされます。それでは、そんなRX0でどのような写真が撮れるのか、作例をお見せしていきたいと思います。

京都・名もなき墓地

京都・名もなき墓地

長崎・出島

長崎・出島

京都・幡枝 円通寺の庭

京都・幡枝 円通寺の庭

長崎・グラバー邸の廊下

長崎・グラバー邸の廊下

京都・吉田神社内、菓祖神社

京都・吉田神社内、菓祖神社

建物を水平に構えて撮ると、このレンズの誠実さがよくわかります。通常のコンパクトデジタルカメラのズームレンズではこうはいきません。それどころか、一眼でも安価なズームレンズ(広角24mm)だと、このきわめて正しい形の表現はできません! 柱の垂直具合を見てください。ビシッと垂直が取れているではありませんか。

京都・年の瀬の錦市場(比較的寄りの画)

京都・年の瀬の錦市場(比較的寄りの画)

長崎・グラバー邸内の家具(下にあおって撮影)

長崎・グラバー邸内の家具(下にあおって撮影)

通常のワイドレンズ(24mm)で寄ったりあおったりして撮ると、周辺のゆがみが強調され、周辺に変なパースが付いて下品な表現となることがよくあります。しかしRX0ではそれがなく、自然と見ることができます。不思議に思えますが、それはこのレンズが誠実な単焦点広角レンズであるからこそできる描写なのです(多くの広角ズームレンズは、形をちゃんと表現できていないという事実……あ、言っちゃダメだったか?)。

【この性能を伝えたい-3】
大型1.0型センサー&ツァイスレンズの豊かな階調描写

何度も言いますが、RX0はあんな小型のボディに1インチセンサー、名門Carl Zeiss(カールツァイス)製レンズを搭載したカメラです。その豊かな階調描写をご覧ください。

世界遺産に登録されたばかりの長崎・大浦天主堂(国宝)

世界遺産に登録されたばかりの長崎・大浦天主堂(国宝)

同、長崎・大浦天主堂(国宝)の聖マリア像

同、長崎・大浦天主堂(国宝)の聖マリア像

冬の京都・四条通りの黄昏時

冬の京都・四条通りの黄昏時

長崎・夜明け前の島原湾

長崎・夜明け前の島原湾

東京湾上空から東京アクアラインを望む

東京湾上空から東京アクアラインを望む

東京・羽田空港、B787のロールスロイス社製のジェットエンジンと、ドラマチックな雲の様子

東京・羽田空港、B787のロールスロイス社製のジェットエンジンと、ドラマチックな雲の様子

朝まずめ・夕まずめ(日の出・日の入り付近)の繊細な光の時間帯の写真を集めてみました。ご覧になってわかるとおり、大きな1インチセンサーとカールツァイスレンズの階調描写がすばらしく、スマホ写真とは伝わる感動の質が違うことがわかっていただけるかと思います。

【この性能を伝えたい-4】
RX0のレンズとセンサーが生み出す高解像感

RX0に搭載された24mm単焦点レンズ。単焦点と割り切ることで、高解像の写真を撮ることができます。風景や建物を撮ってきましたので、オリジナルサイズの画像と合わせてご覧ください。

ISO125 F4 1/3200秒 オリジナルの撮影写真(4800x3200pixel、1.56MB)を見る

ISO125 F4 1/3200秒 オリジナルの撮影写真(4800x3200pixel、1.56MB)を見る

ISO125 F4 1/60秒 オリジナルの撮影写真(4800x3200pixel、1.75MB)を見る

ISO125 F4 1/60秒 オリジナルの撮影写真(4800x3200pixel、1.75MB)を見る

ISO125 F4 1/800秒 オリジナルの撮影写真(4800x3200pixel、1.41MB)を見る

ISO125 F4 1/800秒 オリジナルの撮影写真(4800x3200pixel、1.41MB)を見る

さすが名門カールツァイス製 高性能単焦点超広角24mmレンズ! いかがでしょうか?

タル収差もみられず、24mmとは思えないほどゆがみをまったく感じません。合わせてメモリー一体1.0型積層型CMOSセンサー(裏面照射型)を用いることで、すばらしい階調描写を可能としています。画質のため、そして小型化のため、単焦点と割り切る潔さは、利便性を追求する通常のコンデジにはマネできないことでしょう。

逆をいうと、RX0が売れない理由もそこにあると思います。そんなことをわかりながら、RX0を世に送り出したソニーを個人的には褒めたたえたい!(お前が言うなよ……って言わないでね……)

RX0は、開発・技術者の夢を担った唯一無二(オンリーワン)な商品ではないかと……。デンスケやウォークマンを世に送り出した昔のソニーは、確かそうでしたよね。

こういうプロダクトアウトの製品にはソニーのモノ作りの魂みたいなのが感じられて、私は大好きなんです。ですが、この製品はあまり理解をされておらず悲しいかぎり……。売れていないため、カタログ落ちしてからでは遅い! 欲しい方はBuy Now!ですよ!!


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あと書きコラム

RX0の“手ブレ”対策

RX0は小型軽量ボディのため、残念ながら「手ブレ」補正機能は付いていません!
しかも、ホールドしにくい形状と極小ボディのため、ブレに関しては細心の注意が必要です。そこで「ブレ防止のポイント」を簡単にまとめてみました。


・歩きながら写真を撮らない! 必ず立ち止まってシャッターを押すようにしましょう。
・必ず両手でホールドしましょう(片手で撮らない!)。
・ISOオートを使用。ISO AUTO低速限界(シャッタースピード)=1/125秒くらいに設定。
・疑似シャッター音(電子音)を鳴らすと、その瞬間を意識するようになるのでブレ抑制になる。

スマホ連携

RX0に限った話ではないですが、最近のソニー製のカメラはスマホ連携を得意としています。極小写真機のRX0は、その恩恵を最大限に受けます。


まずはお手持ちのiPhoneやAndroidに「PlayMemories Mobile」をインストールしましょう。

ダウンロードはこちら→https://www.sony.jp/support/software/playmemories-mobile/download/

カメラの「スマートフォン操作=入」にして、スマホのWi-FiでSSID(DIRECT-XXXX : DSC-RX0)を受けます。

プレビュー・シャッター・露出操作・主な設定が、遠隔操作できるようになります(丸がシャッターボタン)

プレビュー・シャッター・露出操作・主な設定が、遠隔操作できるようになります(丸がシャッターボタン)

水平な天板(テーブルなど)に置くだけで、背景を含めた全身自撮りが、いとも簡単にできます

水平な天板(テーブルなど)に置くだけで、背景を含めた全身自撮りが、いとも簡単にできます

あると便利な小物

RX0使用時には、長いネックストラップよりクリップ付きのコイルストラップが意外と便利! 落下防止としてポケットに付けて使います。

コイルストラップ 伸びるくん NBR-204

コイルストラップ 伸びるくん NBR-204

また、筆者が持ち運びに使っているのはナイロン製の小銭入れですが、RX0がぴっちり入ります。新品時はちょっときついかなぁ的なピチピチ感がありますが、使っていくうちに生地が伸びて、いい感じにフィットしてくれます。

NOMADIC(ノーマディック) 小銭入れ PA-15

NOMADIC(ノーマディック) 小銭入れ PA-15

珍しい純正オプション

ソニーの純正オプションとして、VMC-MM2(RX0用レリーズケーブル)があります。これはソニーのマルチ/マイクロUSB端子が付いたカメラに接続して使います。


マスターカメラ(この場合はα9)のシャッターを押すと、スレーブカメラ(この場合はRX0)のシャッターが同時に切れるという、珍しいレリーズケーブルなのです。このケーブルには向きがあり、逆につなぐとRX0でα9のシャッターを切ることもできます。

※VMC-MM2はケーブルだけの商品です。写真で使用しているシューにマウントする機材は付いていません!
※シューにマウントする機材は「Micro Ball-Head with Shoe Adapter Kit



有限会社パンプロダクト代表 
中居中也(なかい・なかや)のショップとブログ

「使える機材のセレクトショップ」

「使える機材Blog!」

中居中也

中居中也

銀塩カメラマンとして広告や雑誌でキャリア開始。2010年より「唯一無二の撮影機材通販」にも参入。写真が上手になると定評があるブログを参考にするカメラマン続出中!

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