・原子力発電所による発電量がもっとも多いのはアメリカ合衆国、次いでフランス、中国、ロシア、韓国(2017年)。
・アメリカ合衆国やフランスは原子力発電所による発電量に大きな変化は無いが、ロシアや中国は確実な増加傾向。中国は2016年にロシアを追い抜き、アメリカ合衆国、フランスに続いて世界第3位に。
・日本は前世紀末あたりから頭打ち、2011年以降は大きく下げ、2014年には絶対量でゼロに。2015年以降は再稼働により発電量を計上しているが、2011年以前と比べればわずかな量。
トップは米国、次いでフランス、中国
生活の維持に欠かせない電力を供給する、主要発電方式の一つ、原子力発電。世界におけるその発電量の実情を、国際石油資本BP社が毎年発行しているエネルギー白書「Statistical Review of World Energy」の公開値を基に確認する。
今件は基本として「自国内で発電=消費した電力」に限定している。例えばフランスでは電力の販売を自国産業の一環と見なしており、自国内の多数の原発で大量の電力を生み出し、周辺各国に輸出しているが、この場合輸入先(好例としてイタリア)ではこの値は「原発由来の電力消費」としては勘案されない。あくまでも自国内で生み出された電力のみの話。
まずは直近2017年における発電・消費量。アメリカ合衆国が群を抜いて多い。
アメリカ合衆国に続いて電力売り手としても名を知られているフランス、そして中国が続く。その次にロシア、韓国、カナダ、ウクライナが名を連ねている。普段よく耳にする国以外でも、小規模ながらも発電をしていることに「え、あの国も?」と驚く人も少なくあるまい。
そして日本だが、2011年の震災に絡んだ政治的要因もあり、発電量は大幅に縮小。2010年の66.2から2013年は3.3(×100万トン・石油換算)、そして2014年ではついにゼロとなった。直近2017年では再び値を計上し始めたが、わずか4.6(×100万トン・石油換算)でしかない。量的には台湾やスイスより少なく、ハンガリーやブラジルなどより多い。
経年変化はどうだろうか
次いでこの値を1997年までさかのぼり、いくつかの注目すべき国について逐次確認をしたものをグラフ化する。主要国の原発政策・エネルギー政策がすけて見えてくる。
アメリカ合衆国は前世紀末までは急速な伸びを見せていたが、今世紀に入ってからほぼ横ばいに推移している。フランスも状況としては似たようなもので、増やそうという雰囲気が無ければ、減らす思惑も見受けられない。一方でロシア、中国は確実に増加傾向にある。特に中国は積極的に増設、新設を続けており、猛烈な勢いを示している。2016年にはロシアを追い抜き、アメリカ合衆国、フランスに続き世界第3位となった。
日本はといえばアメリカ合衆国・フランスよりも早い時期、前世紀末あたりから打ち止め、漸減傾向を示している。さらに2011年以降は大きな下げを継続し、グラフそのもののバランスを崩す形となっている。これは言うまでも無く震災とそれに続く「要請」などをはじめとする、政治・行政上の混乱の結果。2014年は上記にある通り、絶対量の上でもゼロとなってしまった。2015年は再稼働を果たし、ほんのわずかだが値を計上し、その後も増加を示しているが、2011年より前に比べればまだわずかな量でしか無い。
最初のグラフに挙げた国は全部で31の国や地域だが、白書には微量・不明な発電量のものは未記載、あるいは「その他の国」でまとめられている。また、存在はしているものの稼働していない国、これから建設を始める国もある。
主要国ではどの国においても、エネルギー政策の柱の一つとして挙げられている原子力発電。日本の動向はもちろんだが、漸増を続ける中国やロシア、そして電力そのものを輸出する施策を継続しているフランスや、シェールガス・オイルの開発でエネルギーに関する方針に変化が生じているアメリカ合衆国の挙動も気になるところ。2018年以降の動きも、逐次確認していくことにしよう。
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