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    システム障害「業者コケるとどうしようもない」

    • 障害発生が明らかになって5日目、ようやく復旧したシステムを使って残務に追われる職員(27日、坂井市役所で)
      障害発生が明らかになって5日目、ようやく復旧したシステムを使って残務に追われる職員(27日、坂井市役所で)

     福井県あわら市、坂井市、永平寺町、おおい町で証明書発行といった住民サービスが利用できなくなり、庁内業務を含めて計9市町に影響したシステムの障害は、発生から1週間が過ぎた30日にようやく完全復旧となる見通しだ。県と全17市町の業務に関わる民間のシステム会社で発生した通信障害はほぼ1週間に及び、原因も解明されておらず、現代社会を支える情報通信技術が抱えるもろさを露呈した。

     ◆失態

     「復旧作業は順調に進んでいる。明朝には解決する」。運用する福井システムズ(坂井市)はトラブルを公表した23日以降、楽観的な見通しを示しては翌朝に撤回、という失態を繰り返した。

     障害の発生は22日未明。各役場の休みにデータをやりとりする会社のサーバーのソフトを更新しようとして突然、システムが使えなくなった。丸一日過ぎても復旧せず、23日には転出入の届け出や、庁内のメール送受信、財務会計や人事給与、電子決裁など37もの業務に支障が表れた。

     坂井、あわら両市と永平寺町の電算事務を担う福井坂井地区の広域行政事務組合(あわら市)のまとめでは、23~26日には3市町の約500人の手続きを受け付けられず、後日回しや郵送での対応となった。27日になっても、子ども医療費や重度心身障害者医療費の受給者証を更新、発行するなど一部の業務を再開できなかった。

     ◆後手

     深刻さを増すトラブルを前に、福井システムズは市町などとの協調を欠いた。若狭の事務組合職員は、「朝には『午前中に復旧』と言ったのに、昼過ぎに『今度は(サーバーの)本体がやられた』。約束した時間の連絡もなく、対策を考えようもない」と嘆いた。住民からも不信感を招き、坂井市の職員は「こちらも住民に『明日には』と説明したのに、翌日になって『できない』と電話することになり、何を伝えればいいのかも分からなかった」とため息をついた。

     行政サービスのシステムは通常、トラブルに備えて補助の系統を持つなど、万全を期すのが前提だ。住民基本台帳ネットワークシステムを運営する地方公共団体情報システム機構(東京都)は「複数の自治体から異動情報が届かない状態が数日続き、近年ない規模の深刻な状況だった。障害や故障がないわけではないが、ここまで長引くとは」と驚く。

     ◆弊害

     障害が起きている間、福井システムズの復旧作業は、次々と不測の不具合に追われた。異常に備えたバックアップのデータにもつなげず、一時は本体機器そのものが動かせなくなった。代わりの臨時サーバーを持ち出したり、データを移したパソコンを役場に持参したりしながら、サーバーのメーカーや通信技術の専門家を呼んでも、暫定的に動かすのが精いっぱいだった。

     県内では競合業者が少なく、自治体が福井システムズに乗り合うことも一因となった。同社は1966年に設立され、県庁や県内全17市町で何らかの形でサービスを利用する。もし、保存データを損なうようなトラブルに発展すれば、計り知れない範囲に影響が及ぶ。坂井市の担当者は「税金を使うので、なるべく地元の業者をと考えるが、こけられるとどうしようもない」と頭を抱えた。

     神戸大の森井昌克教授(情報通信工学)は「特に地方では請け負える会社が限られて偏りがちだ。自治体側もリスクをよく認識し、危機管理に関しても企業に対処法を徹底させるなど目を光らせる必要がある」と指摘する。(中田智香子)

    2018年07月29日 16時11分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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