電通の新入社員で2015年に過労自殺した高橋まつりさん(当時24歳)に違法残業をさせたとして、労働基準法違反(長時間労働)の疑いで書類送検され、不起訴(起訴猶予)処分となっていた元上司の男性について、東京第1検察審査会は27日、不起訴を相当とする議決を公表した。議決は12日付。
議決要旨によると、元上司は部下の1日当たりの残業時間への認識が薄かったうえ、まつりさんの長時間労働も把握していたことから「(検察審内で)責任を問うべきだとの意見もあった」と指摘。まつりさんについて「入社1年目で自殺した無念さや親族の心情は察するにあまりある」としつつ、長時間労働が横行する社内で個人ができる対策は限定的▽元上司のみを罰するのは不公平▽法人としての電通が有罪判決を受けた--などから、不起訴を妥当と結論づけた。
検察審査会に審査を申し立てていたまつりさんの母幸美さん(55)は議決について「上司は処罰されないというのは残念で納得できない」とのコメントを出した。【服部陽】