◆Laing, Ronald David 1960,1969 The Divided Self : An Existential Study in Sanity and Madness Tavistock=19710930 阪本健二・志貴春彦・笠原嘉訳,『ひき裂かれた自己』,みすず書房,304p. ASIN: B000JA223Y 1500 [amazon]→ISBN-10:4622023423 ISBN-13: 978-4622023425 2940 [amazon] m.
◆Cooper, David 1967 Psychiatry and Anti- Psychiatry=1974 岩崎学術出版社→19810820 野口 昌也・橋本 雅雄 訳,『反精神医学』,岩崎学術出版社,208p. ASIN:B000JA19X8 [amazon] m.
◆Mannoni, Maud 1970 Le psychiatre, son « fou » et la psychanalyse,Editions du Seuil=19741210 松本 雅彦 訳,『反-精神医学と精神分析』,人文書院,309p. ASIN: B000JA19ZG \2900 [amazon]/[kinokuniya] ※ m01a
まず、東京医科歯科大の島薗安雄が精神分裂病の生物学的研究の歴史経過を、東京精神医学総合研究所の荻野恒一が病理学・精神分析学的立場からの現状を述べた後、サズが「Schizophrenia:The Sacred Symbol of Psychiatry(精神分裂病:精神医学の神聖なる象徴」、クーパーが「What is Schizophrenia?(精神分裂病とは何か?)」と題してそれぞれ講演している。
サズは、ここでも従来からの主張を繰り返す。要約すると1点目は、精神分裂病の症状といわれている現象があることは認めるが、精神分裂病なるものは存在しない。なぜなら、精神分裂病の診断は「行動上の諸症状」を基礎に行っているものであり、はっきりした細胞上の病理などを示されていないからである。精神分裂病とは絶対的・科学的な研究の結果ではなく倫理的・政治的な判断によって生じたものである。すなわち発見されたものではなく、社会的に構成され考えだされたものであるとする。症状はあるが病因は不明のまま作為的な病名だけが与えられているとする従来の反精神医学の主張である。2点目に、サズはこのような精神分裂病が社会的なものであるという前提にたち、患者の市民権や法的権利において人権侵害がなされていることにふれる。3点目としては、医学一般と精神医学を対比し、医師と患者関係について述べている。自由な資本主義社会において、精神医学の需要と供給、すなわち検査や診断、治療といったものは当事者である医師か患者のどちらかが拒否すれば成立しないはずである。しかし、「伝統的な医学においては、医師は患者の代理行為者であるが、伝統的な精神医学においては医師は社会の代理行為者」であるという現実上、医師によって患者が精神分裂病の診断名を冠されてしまうことにより、患者はどのように危険なのかも明確でないまま危険視され、患者の意思に反しても施設に監禁することが精神医学にも必要で法的にも正当化されていること、また患者はその診断や診断過程、診断によって正当化された治療を拒否することができず、そのような同意を得ないままの診断や治療が行われていることは暴行に等しいという(精神神経学会 1976:308 )。そうしたうえで、分裂病の問題を解決するのは「医学的な研究であるよりも、むしろ分裂病患者の行動を哲学的・道徳的・法律的な観点から再検討するということである。」と展望する。つまり、「悩むことと病気の相違、個人的な(誤った)行動と病態生理学的な機能障害との相違、治療と規制を加えることの相違を明らかにしたうえで、精神科医は患者に対して何を行うのか」という問題の方向性を指し示したといえる。
次にクーパーであるが、クーパーもサズと同様「精神分裂病など存在しない」と前置きしたうえで講演を始めている。クーパーは自身の理論の出発点である"家族"研究についてふれている。要約すると「精神分裂病は一人個人の内部で生起するものではなく、複数の人間の間で生起する」ものであり、その「複数の人間の間」に値するのが家族である。レインやエスターソンの家族研究も引き合いに出しつつ、精神分裂病を多くは家族内部において「他者によって無価値化され、彼は選りぬかれ、一定のやり方で『精神的に病的』と決められるに至る」というのだが、クーパーにとっての家族はマクロな社会につながるミクロ社会ととらえている。ゆえに、クーパーは"家族"とは「ブルジョア社会の疎外的な服従・順応主義体制を、単に媒介するもの」とし、そのミクロ社会として家族を名指している。
◆Laing, Ronald David 1961,1969 Self and Others, Tavistock=19750925 志賀春彦・笠原嘉訳,『自己と他者』,みすず書房,236p. 2266 m
◆Foucault, Michel 1961 Histoire de la folie a l'age classique Plon →1972 (増補版)=1975 田村俶訳,『狂気の歴史――古典主義時代における』,新潮社 ※ m
◆Foucault, Michel 1973 Moi,Pierre Riviere ayant egorge ma mere,ma souer et mon frere... Un Cas de Parricid3e au XIX siecle, Editions Gallimard/Julliard,Paris=19750926 岸田 秀・久米 博 訳,『ピエール・リヴィエールの犯罪――狂気と理性』,河出書房新社,291p. 2000
◆広田 伊蘇夫 197606 「トーマス・S・サズの反精神医学――その反科学思想」,『臨床精神医学』5-6
→Szasz, Thomas S. 1970 Ideology and Insanity=19750816 石井毅・広田伊蘇夫訳,『狂気の思想――人間性を剥奪する精神医学』,新泉社,300p. ASIN: B000JA1LPO [amazon] m.
■[1979]
◆Scheff, Thomas J. 1966 Being Mentally Ill: Sociological Theory Aldine=19790320 市川 孝一・真田 孝昭 訳,『狂気の烙印――精神病の社会学』,誠信書房,228p. ASIN: B000J8I85M 2000 [amazon] ※ m.
◆Illich, Ivan 1975 Medical Nemesis:The Expropriation of Health,Marion Boyars→1976 Limits to Medicine:Medical Nemesis:The Expropriation Of Health,with Calder & Boyars Ltd. London
=19790130 金子 嗣郎 訳 『脱病院化社会――医療の限界』,晶文社,325p. ASIN: B000J8JFJU [amazon] ※
◆阿部 あかね 2009/09/26-27 「1970年代日本の精神医療改革運動に与えた「反精神医学」の影響」,障害学会第6回大会・報告要旨 於:立命館大学
◆青木薫久,1974,「人体実験の原則について」『精神医療』3(4) 52-60.
◆朝日ジャーナル編集部 1973 「打ち棄てられたものの生存権――前頭葉手術めぐる論争」,『朝日ジャーナル』15-21:87-92.
◆朝日新聞,1970,「ルポ・精神病棟」(3月5日より12日まで7回連載→大熊一夫,1973,朝日新聞社より刊行)
◆青木薫久,1974,「人体実験の原則について」『精神医療』3(4) 52-60.
◆Cooper,David 1967,Psychiatry and Anti-Psychiatry,Tavistock Publications London.(=1974,『反精神医学』岩崎学術出版.)
◆法令用語研究改編,2006,『有斐閣 法律用語辞典』有斐閣,1250-1251.
◆広田伊蘇夫,1976,「トーマス・S・サズの反精神医学――その反科学思想」,『臨床精神医学』5(6):699-706.
◆京都大学精神医学教室 編 20031225 『精神医学京都学派の100年』,ナカニシヤ出版,121p. 3150 ISBN-10: 4888488347 ISBN-13: 978-4888488341 [amazon]/[kinokuniya] ※ m.
◆Laing.R.D,1960a,The Divided Self. An Existential Study in Sanity and Madness Tavistock Publications Ltd London.(=1971,阪本健二・志貴春彦・笠原嘉訳『ひき裂かれた自己』みすず書房.→参照は1974年版)
◆――――,1960b,Self and Others, Tavistock Publications London.(=1975,志貴春・笠原嘉訳『自己と他者』みすず書房.→参照は1998年版)
◆――――,1967,The Politics of Experience and the Bird of Paradise,Tavistock Publications London.(=1973,笠原嘉・塚本嘉壽訳『経験の政治学』みすず書房.)
◆――――,1969,The Politics of the Family,Tavistock Publications London.(=1979,阪本良男・笠原嘉訳『家族の政治学』みすず書房.)
◆Laing.R.D and Esterson.A,1964,Sanity, madness and the family,Tavistock Publications London.(=1972,笠原嘉・辻和子訳『狂気と家族』みすず書房.)
◆Mannoni, Maud 1970 Le psychiatre, son « fou » et la psychanalyse,Editions du Seuil=19741210 松本 雅彦 訳,『反-精神医学と精神分析』,人文書院,309p. ASIN: B000JA19ZG \2900 [amazon]/[kinokuniya] ※ m01a
◆松枝亜希子,2008,「向精神薬への評価――1960年代から80年代における肯定的評価と批判」『Core Ethics』Vol.4:465-473.
◆松本雅彦,1975,「精神医学的診断と反精神医学」,『臨床精神医学』4(5):479-486.
◆仙波恒雄/矢野徹,1977,『精神病院 その医療の現状と限界』星和書店.
◆Shorter, Edward 1997 A History of Psychiatry:From the Era of the Asylum to the Age of Prozac, John Wiley & Sons,Inc. =19991110 木村定訳,『精神医学の歴史――隔離の時代から薬物治療の時代まで』,青土社,391 p. ISBN-10: 4791757645 ISBN-13: 978-4791757640 [amazon]/[kinokuniya] ※
◆立岩 真也 2002/04/01 「生存の争い――医療の現代史のために・2」,『現代思想』30-05(2002-04):41-56 ※ 資料
◆立岩 真也 2011/06/01 「社会派の行き先・8――連載 67」,『現代思想』39-8(2011-6):- 資料
◆立岩 真也 2013 『造反有理――身体の現代・1:精神医療改革/批判』(仮),青土社 ※
◆「東京大学精神医学教室120年」編集委員会 編 20070331 『東京大学精神医学教室120年』,新興医学出版社,286p. ISBN-10: 4880026611 ISBN-13: 978-4880026619 6825 [amazon]/[kinokuniya] ※ m.
◆富田三樹生,1992,『精神病院の底流』青弓社.
◆臺弘,1993,『誰が風を見たか』星和書店.
◆吉田おさみ,1983,『「精神障害者」の解放と連帯』新泉社.