【スポーツ】[高校野球]逆転サヨナラ 広陵連覇 広島商を抜く23回目の優勝2018年7月29日 紙面から
◇広島大会 広陵5-4広島新庄第100回全国高校野球選手権(8月5日開幕・甲子園)への出場を懸けた地方大会は28日、7大会で決勝が行われ、広島大会では昨夏の甲子園大会準優勝の広陵が広島新庄に延長10回、5-4でサヨナラ勝ちし、2年連続23度目の出場を決めた。東兵庫大会では昨春センバツ4強の報徳学園が8年ぶりの夏切符を勝ち取った。奈良大会では奈良大付が天理に延長11回、10-9でサヨナラ勝ちして初出場。仙台育英(宮城)、愛工大名電(西愛知)、近江(滋賀)、近大付(南大阪)も名乗りを上げた。29日は東東京と南神奈川の2大会で決勝が行われる予定。 松本知樹内野手(3年)が本塁を駆け抜けると、広陵の三塁ベンチ前で歓喜の輪ができた。4-4で迎えた延長10回。激闘に幕を下ろすサヨナラの生還だ。中井哲之監督(56)は「厳しい試合になると覚悟していた。きょうはどうしても勝ちたかった。頑張ってくれた控えの3年生を中心に感謝したい」と声を詰まらせた。 ノーシードから頂点を目指した今大会。準決勝では広島商に競り勝った。接戦での強さはこの日も健在で2度、ビハインドの展開をはね返す。延長10回に左中間へサヨナラ打を放った藤井孝太外野手(2年)は「絶対に走者をかえしてやろうと思った」と語った。 中井監督はリードされると空を見つめ胸の中でつぶやいた。「勝たせてくれと言いました」。3月28日。父・千之さんが病気により78歳で他界した。「控え選手を大事にするとか支えてくれている人に感謝をするとか、人として大事なことを教えてもらった」。広陵野球部の精神である「ありがとう」は父が原点とも言える。野球はもちろん、人としての立ち振る舞いなどを教えてくれたかけがえのない人だった。 褒められたことは一度もない。それでも「最後におまえには負けたかな、と周りの人に言ったみたい」。伝え聞いたその言葉がうれしかった。この日は月命日。どうしても勝ちたかった。 「自分の勝利数にはこだわりはない」。それでも1つだけ超えたい数字があった。広島商の優勝回数だ。この日でそれを超え、県内最多の23回を数えた。「監督になったときから目標にしていた。上に行ったので、ますます頑張りたい」と力を込めた。 記念の100回大会は、西日本豪雨の影響で開幕が当初の予定から10日遅れた。新聞などで見る被災地の様子に、野球ができることへ感謝の思いが募った。「広島の代表として戦う。少しでも良いニュースを届けたい」。準優勝した昨夏から1年が過ぎた。夏の甲子園で初めての日本一になることが何よりもの恩返しだ。 (市尻達拡)
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