先日は錯視によりエッシャー展を断念した。
だが、上野には他にもたくさん美術館があり、
様々な展覧会をやっている。
そしてエッシャーの代わりに
縄文展へ行った。
その感想を書こうと思う。
多くの縄文人で満ち溢れていた。
マンモス狩り帰りのOLや、
石斧や黒曜石の矢尻を携えた武器商人、
他にも釣り針職人などが、
あたりをうろついている。
もちろん会場は高床式倉庫だ。
ネズミ返しがついており、
齧歯類の侵入を拒む。
私はそれらに感銘を受けながら、
会場へ入った。
中は様々な縄文土器が立ち並ぶ。
オーソドックスな土器から、
火焔式土器まで多種多様だ。
それらを見ていると、
「わぁ~、胸が土器土器する~」
という心の声が聞こえたが、
聞かなかったことにした。
私は感情を殺して先に進んだ。
土器以外にも釣り針や黒曜石など、
多くの縄文アイテムがあった。
だが、やはり主役は、
なんといっても土偶だ。
土偶・・・それは人間の三大欲求、
土偶、埴輪、古墳の内の1つ。
ここにはそうした原初の欲求を満たす
様々な土偶があった。
それらを見ていると、
なんだか幸せな気分になる。
しかし、しばらくすると、
私は見るだけでは
満足できなくなっていった。
見ているだけでは我慢できない。
なんとしても土偶が欲しい。
そのためには物々交換が必要だ。
私は交換できそうな物がないか、
ポケットの中を見てみた。
だが、そこにあるのは、
夕飯のために拾っておいた
どんぐりだけだ。
一応試しにスタッフに渡してみたが、
即座に貝塚に捨てられた。
何か、何か交換できるものはないか?
ここで私はハッと気づいた。
私が村を出る時に長老から、
「本当に困った時に開けなさい」
と、小袋を持たされていたのだ。
今こそそれを使う時だ。
私は恐る恐る袋を開いた。
すると中から美しい勾玉が出てきた。
これならいける!
私はすぐさまそれを交換し、
無事、土偶を手に入れた。
これで私ももう立派な縄文人だ。
私は満足感と土偶を胸に抱き、
竪穴式住居へと帰っていった。