『ナザリック』 『パンドラズ・アクター』 『(アインズ様の姿が)アルベドに死ぬほど愛されて眠れない』
というお題目を元に作られました。
ありがとうございます、kaiwai様!
お題目短話-1 アインズ様愛を極めよう!
「おはよう、アルベド」
いつもの日。いつもの朝。いつものナザリック。いつものアインズ様の執務室。何気ない一日の始まり。私はいつも通りこうやっ──
「あら、今日はあなたなのね、パンドラズ・アクター」
「ブフォ!?」
──こう──やって、アインズ様の不在の代わりを行うはず──なのに──
「なぜ分かったのですか!!」
「私は階層守護者統括よ。分からないと思われる方が分からないわ」
さも当然とばかりに言うアルベドを見たときのショックと言ったら──私のショックを受けたランキングでもベスト3に入るほどのものだった。
「あ──あぁ──なぜバレるんだ──」
アルベドは笑顔で言外に『仕事怠るなよ、ん?』と威圧を私に投げかけるとさっさと執務室を出て行ってしまった。アインズ様の時にはしつこい位ずっと一緒に居るとおっしゃっていたのに。
ゆっくりと全身を見る。どこかおかしいところはないか、と。しかしおかしいと思える場所がない。
私はパンドラズ・アクター。アインズ様──アインズ・ウール・ゴウン様に作り出された宝物殿の領域守護者であり、アインズ様を含む至高の41人全てをコピーすることができる最上位のドッペルゲンガー種である。それこそ千変万化の顔無しと呼ばれるほどのものであり、時折他のドッペルゲンガーから変身のコツを指導してほしいと懇願されるほどの存在なのだ。そのはずなのだ。
「そういえばアルベドにはタブラさんの変身も一瞬で見破られたな」
ゆっくりと大仰に動く。今の姿はアインズ様なのだから、アインズ様らしく。至高の存在としての姿を。
しかし何故分かるのだろうか。これはドッペルゲンガーとしての沽券にかかわる問題である。アインズ様に作られた存在としてのプライドの問題なのである。
「失礼します。書類をお持ちしました、アインズ様」
「うむ、ご苦労、デミウルゴス」
そんな風に悩んでいたら、書類一枚どころか一文字すら進まないままにデミウルゴスが新しい案件を持ってきてしまう。さっさと終わらせて、私ではどうにもならない案件のみをアインズ様のところへ持って行かねば業務が滞ってしまう。しかし胸に残るしこりが集中を邪魔してしまうのだ。
「デミウルゴス、私をどう思う」
出ていこうとしたデミウルゴスを思わず呼び止めてしまった。忙しいはずなのに何をやっているのだ私は。しかしアインズ様的に言うならば、気になることは即その場で聞かないといけない。
「ふむ、それは──『アインズ様を上手くやれているか』という話ですか?」
「ぐはぁっ!!」
思わず断末魔を上げつつ椅子からずり落ちるという、アインズ様ならば絶対にやらないことをやってしまった。それほどに精神的に辛い言葉だった。
「そ、そんなに私はアインズ・ウール・ゴウンには見えないのか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。普段の貴方はアインズ様と全く区別がつきません。ですが──まぁ恐らくアルベドに看破されて精神的に不安定になっているからでしょうね。私でも分かる程度の差異が見え隠れしていますよ」
なるほど、と頷く。つまり普段は全く問題なくやれているわけだ。ではあのアルベドの看破能力は一体何なのだろうか。アインズ様の様に、そういった類のものが一切通用しないスキルでも持っているのだろうか。
「やはりアルベドはそういったスキルを持っていたりするのか」
「いえ、そういう話を聞いたことはありませんね。むしろ、理由は他にあります」
『ガタリ』と椅子が動く。私は無意識のままに立ち上がっていたのだ。それ程に焦っているのだ。私の変身能力を打ち破るものが何なのか。スキルですらないというそれは一体何なのか、と。
「とても簡単な理由ですよ。アルベドは、アインズ様を愛しています。一番に。誰よりも。強く、ね」
そう言うとデミウルゴスは足早に執務室を出て行ってしまった。仕様もない事で呼び止めてしまったのだ。それでもなおこうやって相手してくれたデミウルゴスには感謝しかない。
「愛──か──」
「愛ですか、アインズ様?」
それから全能力を使って一気に執務を終わらせた私は執務室を出てアウラの所に来ていた。アウラは沢山のペットがいるから愛について知っているかもしれないと思って。
「うーん──すみません、分からないです」
「アウラでもダメか」
「ボク──でも?」
「うむ、アウラは沢山のペットが居るだろう。だから、愛を持って接しているのかと思ってな」
「愛──かは分かりません。徹底的に上下関係を叩き込んで絶対に反抗できないように躾けているだけですし」
逆らえない様に徹底的に痛めつける。のは、愛なのだろうか。そういえばアインズ様は時折アルベドに押し倒されている。押し倒す。つまりマウントポジションだ。最も殴ったり関節を極めたりするのに適していると言えるだろう。つまり、アルベドはアインズ様の上位に立ちたいという事?それが愛?いや、何か違う気がする。普段のアルベドはアインズ様を決して下に見えているわけではない。むしろ至上の存在として見て居ると言って過言ではない。ということは違うのだろうか。
「申し訳ありません、アインズ様。お役に立てなくて」
「いや、構わんさ。仕事を邪魔して悪かったな、アウラ」
少し気落ちするアウラの頭を優しく撫でる。アインズ様はよくこうして頭を撫でるのが好きだったから。ん?そういえばこうやって撫でることを何と言っただろうか。
「あ、あのぉ──アインズ様。そろそろ恥ずかしすぎて辛いので放していただけませんか?」
「ん、おぉ。すまん」
いかんいかん。考え事をして撫ですぎてしまった。こういうものは適量が大事なのだ。そういえばアウラもよくペットたちを撫でていたはずだ。
(なるほど、相手を撫でる。これも愛の一つなのかもしれませんね!)
「おや、こんなところでどうされましたか、アインズ様」
アウラと別れて、誰かに会わないかと第九階層をぶらりと歩いていると丁度部屋からセバス・チャンが出てきた。ここは何だったかとプレートを見ると、茶室と書かれている。
「セバスか。ちょっと皆に話を聞きたくてな」
「そう言う事でしたら、アインズ様自ら赴かれなくとも。一言お呼びになれば我々一同、喜んで馳せ参じますのに」
確かにアインズ様であればそれで良いのだが、私はアインズ様をやっているだけであってアインズ様ではない。仕事であれば別だろうが、流石に私用で呼ぶなど職権乱用というものだ。
「皆忙しく働いているのだ。たまには構わんだろう」
「そうでございますか。して、どのようなご用件で──?」
「うむ、実は──」
そう言いかけた時だった。セバスの後ろのドアがそっと開いて女性たちがぞろぞろと出てくる。総勢8人。だがメイドのホムンクルスたちではない。さて誰だったかと逡巡する間に、軽く会釈しながら皆通路の向こうへと消えていった。
第九階層に居るのだからナザリックのものではないわけがない。そして私があまり知らないということは最近ナザリックに来た者たちのはずだ。だとすれば人間だろう。
「あの者たちは息災のようだな」
「アーニア達ですか。はい、アインズ様のご厚恩によりこのようにナザリックにて元気にさせて頂いております」
あぁ!と心の中で柏手を打つ。あの子達は確かデミウルゴスの異種族間の交配実験の被験者たちだった──はずだ。確か、それでセバスがリ・エスティーゼ王国から拾ってきたはずである。
「そうか、あの様子ならば交配実験もうまくいっているようだな」
「ブフォッ!?」
──なぜかセバスが盛大に咽ている。年なのだろうか。いや、この姿はあくまでたっち・みー様に作られたもので、単純に年を取っているからではないはずである。
「セバス。人間と竜人では全てに於いて根本的に差がある。いずれ母体となる彼女たちにあまり負担を掛けさせるな、わかったな」
「ゴフッ──は、はい。アインズ様」
セバスも忙しいだろうに8人も相手させるとは。デミウルゴスも少々性急過ぎるのではないだろうか。これも一応アインズ様に報告しておいた方が良いだろう。
(っと、本題を忘れるところでした)
「セバス、愛とは何だと思う」
「──っ!──は、共に在り続けるという覚悟かと」
なるほど、覚悟か。確かにアルベドは小さな村を救うなどという簡単な事ですら、アインズ様を守るためにとフル装備してくるほどだ。その覚悟たるや、この私パンドラズ・アクター以上といっても過言ではないだろう。なるほど、と合点が入った。あの時の行動は階層守護者統括としてではなく、アインズ様への愛が源泉なのか。
「流石はセバスだな。愛というものへの理解はナザリックでも上位と言えよう」
「ごっふぅっ!!──き、恐縮でございます、アインズ様」
事あるごとに、まるで私が一言喋るごとに胸を押さえながら噴出しているように見える。やはりセバスの体調は悪いようだ。あまり引き留めても悪いか。
失礼します、と生気の抜けた顔で遠ざかっていくセバス。本当にふらふらしている。
「あの8人にじっくり癒してもらうのだぞ、セバス!」
「──ぐふっ」
余程辛かったのだろう。とうとう倒れてしまったか。そういえばアインズ様も超過労働は出来るだけ避けるようにと言われていた。こういった事態を想定されていたのだろう。
(えぇと、こういう時は誰に伝えれば良かったでしょうか)
プレアデス──は、戦闘メイドだ。下手すれば倒れたセバスを引きずって連れていきかねない。
一般メイド──は固定の仕事があり、突発的な仕事をさせる余裕はない。
階層守護者や領域守護者は問題外。私でも良いのだが今はアインズ様の姿なので、誤解を招きかねない。
(確かツアレさんがセバスと懇意でしたね)
『すみません、麗しきお嬢さん<フロイライン>。今手透きですか?』
『この喋り──パンドラズ・アクター様でいらっしゃいますか?はい、今大丈夫ですが、どうなされましたか?』
『日々の過労がたたり、セバスが倒れてしまいました。ですので──』
『すぐ行きます!!』
普段のツアレさんとは比べ物にならない気迫で《伝言/メッセージ》を打ち切られてしまった。彼女は魔法が使えないはずなのに、あちらから切られるとは。
(これも愛なのでしょうか。素晴らしい力ですね)
それから暫くしてセバスと交配実験を行っている8人が勢ぞろいでセバスを連れて行ってしまった。最後は吐血していたが本当に大丈夫だったのだろうか。
『パンドラズ・アクター、今大丈夫か』
『おぉ、これはン─アインズ様!』
突然のアインズ様からの《伝言/メッセージ》に思わずいつもの敬礼をしてしまう。いけない。今はアインズ様の姿なのだ。自重せねば。
『お、俺の声でテンションがパンドラズ・アクターって──』
『すまない、モモン。それで、何の用だ』
努めて平静に切り返したおかげでアインズ様改めモモンも落ち着いてくれたようだ。
『なに、一つアルベドに伝言を頼もうと思ってな』
『それならばモモンが直接送れば良かったのではないか?』
『そう思ったのだが──』
珍しく口籠っていらっしゃる。こういう状態なのは、相手に対してあまり口にできないものであることが多い。至高の存在であるアインズ様ではあるが、こういうちょっとした態度が愛嬌となって──
(そうか──アルベドはこういった小さな部分を目敏く見て居たのですね。ただ支配者然とした完璧なアインズ・ウール・ゴウンではなく、等身大のアインズ様を)
『──というわけなのだが、頼むぞ。パンドラズ・アクター』
『了解した。しっかりと伝えよう、モモン』
アインズ様の話が耳に残っていないということはそう大した案件ではなかったという事。そして、あまり直接言いづらい事。となれば──
(労いと感謝の言葉ですね!わかっていますよ、アインズ様!)
「これで良し。まさかナザリックで密かに売られていた俺の等身大抱き枕カバーを作っていたのがアルベドとはなぁ──上手くパンドラズ・アクターが止めるように言ってくれればいいけど」
宿屋にある自室のベッドに寝ころびながら軽くため息をつく。話によればその抱き枕は物凄い人気らしい。しかし俺の抱き枕など貰って誰が喜ぶのだろうか。もしかしてサンドバック代わりだったりするのだろうか。
「やめやめ。頑張ってくれよ、パンドラズ・アクター」
(フフフ──いざ勝負ですよ、アルベド。新生パンドラズ・アクターを見せて差し上げましょう。愛を知った私に隙は──)
「そこに居るのは──パンドラズ・アクターね。何をしているのかしら?」
一瞬で全身の力が抜けてしまった。思わず床に突っ伏してしまうほどに。なぜ柱に隠れていた私に気付いたのか。そもそも喋ってすら居ないのになぜ私だと分かったのか。
「ふふっ。なぜ分かったのか分からないって顔してるわね、パンドラズ・アクター。優しく言ってほしい?厳しく言ってほしい?」
「き、厳しく頼む」
両膝をついて両手をつく。ペロロンチーノ様曰く『失意体前屈』の姿をした私の元にアルベドが歩いてくる。一体何が駄目だったのか。何がいけなかったのか。全力でアインズ様をしているはずなのに。
そう思って厳しく評価してほしいと言った。言ってしまった。今ほどその言った瞬間の私自身を殴り飛ばしたいと思った時はないだろう。
「立て」
「──は?」
「立て!!」
「は、はい!」
突然アルベドの雰囲気が変わったのだ。普段の柔らかい雰囲気などない。普段が羊皮紙程度の柔らかさと仮定するならば、今は七色鉱の一つであるセレスティアル・ウラニウムが羊皮紙程度の柔らかさに感じる程度の硬さだ。恐ろしいなどというものではない。流石は守護者統括というべきか。
弾かれるように立ち上がった私の顔をジロリと睨みつけてくる。正直言ってすごく怖い。単純な強さからくる恐怖ではない。底知れぬ『何か』を感じる怖さだ。
「まず下顎骨!幅が0.017㎜広いわ!長さは0.024mm長い!」
「はい!──え?」
「次頬骨!0.05度外に向いてる!──幅も片方辺り0.0027mmも出ているじゃない!」
「え、あの──」
「さらに蝶形骨!」
「待ってください!何ですかそれは!?」
なぜ突然幅や長さが違うというのか。しかも最小単位が万分の一ミリである。それをアルベドは目視で測っているというのか。いや、そもそもだ。
「私はアインズ様のお姿を完璧にコピーしているんです。外見に誤差があるはずが──っ!?」
『ガシリ』と両肩を掴まれた。いくら今アインズ様の姿をしているからと言ってここまでピクリとも動けなくなるだろうか。スキルか。それとも単純な力の差か。その答えは──
「おいこらパンドラズ・アクター──」
「な、何ですか!」
「アインズ様──ナメんじゃねえぞゴラァ!」
気迫だったのだ。
凄まじいまでの彼女の気迫が私を竦み上がらせていたのだ。声を上げようにも上ずり、裏返ってしまう。まるで蛇に睨まれた蛙である。
「そのコピーとやらはいつ取ったァ!」
「も、もちろんこの世界に来てすぐ──ひぃ!?」
「毎日とれや毎日ィ!アンデッドだからってナメんじゃねえ!アインズ様は毎日変化なさってンだぞ!!」
そう言い放つと、彼女は手を緩めた。どさりという音が嫌に耳に響く。それが、自分が尻餅をついた音だと気付くのに暫く時間がかかってしまう。それ程衝撃的だったのだ。
しかし手を離したアルベドにはもうあの気迫はない。いつもの彼女に戻っている。まるであれが夢であったかのように。
「分かったかしら、パンドラズ・アクター。貴方は姿を似せられるという能力に感けているせいで、中途半端に似せているだけなの。技術が足りない。能力が足りない。情熱が足りない。思想が足りない。理念が足りない。気品が足りない。そして何より──優雅さが足りない。私から言わせれば、稚技ね」
「私の能力が──稚技──」
「確かに貴方はアインズ様に作られた、アインズ様にもっとも近い存在と言えるでしょう。でも、それは最もアインズ様を見辛い位置に居ると自覚なさい」
そう言われて渡されたのは、クッション。いや、抱き枕<ピロー>だ。それもただの抱き枕ではない。
「こ、これは──アインズ様の──しかもこんなに精巧に──」
「理解したかしら、パンドラズ・アクター。精進なさい」
そう、写真よりも精巧に描かれた等身大アインズ様の抱き枕だったのだ。しかも細部まで分かりやすいように防具を付けていない状態のモノ。こんなにも素晴らしい物をアルベドは作り上げたというのか。
優雅に立ち去る彼女は、只管に大きかった。アインズ様を知るものとして。あれほど大きい彼女を超えられるのだろうか。
(いや、違う。そう、私は彼女を超えなければならない!アインズ様に造られたものとして!!)
そのために何をしなければならないのか。その答えは──
「やっと帰ってこられた──やはりナザリックは落ち着くな」
「これは、お帰りなさいませ。アインズ様」
リ・エスティーゼ王国の雑事も大分落ち着き、久しぶりにナザリックに帰ってきた。少しばかり雰囲気が違う気がする不思議な感覚が纏わり着いてくる。
「少し痩せたか、セバス」
「は──お陰様で──」
痩せた、というよりも窶れた感じのあるセバスだがその眼光は相変わらずだ。パンドラズ・アクターの話では過労で倒れたらしいし、それとなく気を付けておいた方が良いだろう。
「そういえばアルベドの姿を見ないな」
いつもなら『アインズ様ぁ~』って帰るなり走り寄ってくるのだが、一体何をしているのか。
「アルベド様でしたら、今は宝物殿でパンドラズ・アクター様と何かをしているようです」
「ふむ、では行ってみるか」
いつの間にパンドラズ・アクターと仲良くなったのだろうか。いや、仲良くなってくれたのだろうか。
あまりに奇抜に作りすぎたために、こいつ友達作るの無理かもしれない。と半ば諦めてしまう程だったというのに。何か共通の趣味でも出来たのだろうか。
「宝物殿へ!」
リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンに願えば一瞬で宝物殿へと転移出来る。正確にはその受付兼パンドラズ・アクターの生活の場であるが。
「パンドラズ・アクター?居ないな」
いつも座っているソファーには誰も居ない。しかし居る気配はする。この宝物殿のどこかに居る様だ。
「──こっちか?」
そう思って向いた方は、主に縫製系の生産素材が保管されている区域だったはずだ。
その区域へと歩いていけば、何やら楽しそうな声が聞こえて来る。
「──で、これが──」
「ほう、それは素晴らしい。では──というのはどうでしょうか」
「ふふっ、やるわね。流石は私が見込んだだけの事はあるわ」
本当に楽しそうだ。しかしなぜだろう、少しだけ悲しい気分がするのは。頬が暖かいのはきっと心が温かいからなんだ。きっと。
「はいる──ぞ──って、なんじゃこりゃあ!?」
そこ──縫製素材倉庫にあったのは、俺だった。
俺、俺、俺。ただただ只管俺。壁一面にある超巨大な俺の顔。その周囲に張り付けてある抱き枕カバーらしき等身大の俺。しかもなぜか裸。デフォルメ化されたぬいぐるみの俺は床一面に敷き詰められている。
一言でいうなら、俺部屋である。俺の部屋ではなく、俺部屋。この差がわかるだろうか。俺は分かりたくない。だから──
「お前ら──謹慎3日」
ため息交じりに二人を処罰するしかできなかった。
お題目外伝でも、要望した方の予想を外したい!その一心で書いてます。
良い意味で外せましたでしょうか?
実は要望通りでしたか?
どちらにせよ、楽しく読んでいただけたら幸いです。