GOOD PROFESSOR

明治大学
明治大学大学院 情報コミュニケーション研究科

石川 幹人 教授(学科長)

いしかわ・まさと
1959年東京生まれ。東京工業大学大学院総合理工学研究科物理情報工学専攻中退。’83年松下電器産業(現パナソニック)入社。’ 89年通商産業省(現・経済産業省)の国家プロジェクトに参加。’ 97年明治大学文学部助教授。’ 02年同教授。’ 04年より現職。この間に’ 02年米デューク大学客員研究員。ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)発起人メンバー。元岡記念賞(’ 93年・東京大学工学部)・情報文化学会学会賞(’ 07年)。博士(工学)。

著作は『心と認知の情報学 ~ロボットをつくる・人間を知る~』(勁草書房)『トンデモ超能力入門』(対談および分担執筆・楽工社)『人はなぜだまされるのか~進化心理学が解き明かす「心」の不思議』(講談社ブルーバックス)など多数。
「石川幹人のページ」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.isc.meiji.ac.jp/~ishikawa/

オカルトをもタブーとしない「超心理学研究」

石川研究室の入る駿河台「研究棟」
JR御茶ノ水駅から続く明大通り

明治大学情報コミュニケーション学部(情報コミュニケーション学科だけの単科学部)の石川幹人教授が今週の一生モノプロフェッサー。その来歴と実績は非常に異色で興味深いものがある。まずは順を追って紹介していこう。

東京工業大学大学院で心理物理学を学んでいた石川先生は、電器メーカーに就職して「放送用文字図形発生装置」の開発に取り組む。テレビの野球中継でおなじみの「SBOカラー表示」の第1号機は若き日の石川先生の手によるものだ。

さらに電機メーカー7社の精鋭が当時の通産省の主導で集められ、国家プロジェクト「第5世代コンピューター」の開発に携わることになる。メンバーに選ばれた先生は人工知能の開発を担当する。人工知能といえばロボットの基幹部分にあたる頭脳の研究だ。

その後、石川先生は明治大学に赴任し、後進の指導に当たることになる。ここでは各種情報論の教育を担当する。

2002年、石川先生は米デューク大学に赴いて超心理学の研究を始める。同大学は超心理学研究のメッカとして知られる。それまで最先端科学の研究分野にいた先生が、超能力や超常現象などの超心理学分野の研究を始めたのである。

「70年代にユリ・ゲラー氏(Uri Geller)を中心とした超能力ブームがありました。ちょうど中学生・高校生時代のことで、それ以来わたしも超心理学に関心をもっていました。その発祥の地であるデューク大学に客員研究員で行く機会を得ましたので、科学的な観点から研究してみようと始めたのです」

その萌芽は少年時代にすでに芽生えていたというわけだ。

日本の大学で唯一の「超心理学研究室」

駿河台キャンパスの建物群

’ 03年に帰国した石川先生は「メタ超心理学研究室」を立ち上げて主宰する。日本の大学において超心理学を研究する場は現在ここだけだという。

「科学で重要なことはオープンであること、つまり公共性があることです。一部分でも隠されたところがあると、それはオカルトになってしまいます。占いなどは、根拠が示されない法則を含んでいるためオカルトに分類されるのです。ときにはオカルトによって救われることもあるかもしれませんが……」

石川先生はそう語る。’ 08年にNHKテレビでエスパーを主人公にしたドラマ『七瀬ふたたび』が放映された。この作品の科学監修を務めたのも石川先生である。その本格的な研究が認められてのことだ。

また最近は、情報学・心理学・超心理学に加え、科学リテラシーや社会学まで研究の範囲を広げているという。あらためて先生の多様な才能を思わずにはいられない。
次に所属する明治大学情報コミュニケーション学部の特徴について伺った。

「学部・学科名になっている『情報コミュニケーション』は裏腹の関係にある2つの言葉を合わせたものです。つまり、人々による流動的な営みが『コミュニケーション』であり、その中から安定的に明文化されてくるものが『情報』になるわけです。

その観点からすると、社会と人間とのあいだで取り交わされているものの総体について学ぶのが情報コミュニケーション学部だといえます」

従来の伝統的な法学部や経済学部などが社会の制度を中心に学ぶのに対し、情報コミュニケーション学部では「良き市民をめざした社会科学」を学ぶのだという。

「ですから狭いことを深く学びたいという人より、いろいろなことに興味があって、それらのつながりを学際的な視点で学びたいという人に向いていると思います」

年度ごとにテーマ設定が異なる石川ゼミ

駿河台「アカデミーコモン」

なお明治大学情報コミュニケーション学部にはコース制が敷かれている。学生たちは、(1)社会システムと公共性(2)組織と人間(3)言語と文化(4)メディアと人間――の4コースからひとつを選択して学んでいく。

さらに情報コミュニケーション学部を特徴づけるものにゼミ演習がある。1年次学生を対象にした「基礎ゼミ」をベースとして、2年次の「問題発見テーマ演習」に始まり、「問題分析ゼミ」(3年次)「問題解決ゼミ」(4年次)へと続く展開はユニークである。

「これは個々の学生が自分の興味や関心のあるテーマ(社会的問題)を探し出し、それについて年度を追うごとに自分のなかで深めていってもらいたいという狙いがあります」

そこで石川先生のゼミだが、毎年度テーマを設定してゼミ生の募集をしている。そのため、学生に人気のある心理学や情報社会をテーマに掲げる年には定員を超える希望者が集まるが、テーマを自由に選べとした年度は非常に少ないということもあったそうだ。

先生自身は、ゼミ生の数に振幅があってもほとんど意に介していないようだ。

「各ゼミ生の興味がわたしの守備範囲を超えてもOKとしています。そういうテーマを選んだゼミ生には専門の先生を紹介することもあります。超心理学については興味を示す学生はあるのですが、これをテーマに研究してみようという人は意外なほど少ないですね(笑い)」

これだけは石川先生にも予想外の少なさであると苦笑する。いまの若者の関心は別のところにあるということだろうか?

インタビューの最後にあらためて学生への指導方針について聞いた。

「最近の傾向ですが、自ら動く学生が少なくなってきた印象があります。こちらから逐一指示をしないと動かないようでは問題です。何ごとにも自分から積極的に進むべき道を見つけるように指導しています」

こんな生徒に来てほしい

情報コミュニケーション学部は学際的な学部ですので、広い興味をもっていろいろな分野について学んでみたいという人に向いています。教員にも社会経験を積んだ人が多くいますから、その指導で身に付くものは多いと思いますよ。高校生のみなさんは普段の生活のなかで人間や社会の本質について考えるクセを付けていてほしいですね。そんな意欲にあふれた人を歓迎します。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。