座談会後編はコチラ!:『BORDER BREAK』PS4版ならではの要素は? 手軽さと奥深さが共存する楽しさをトコトン語り合う! 青木P×百渓D×石井ぜんじ座談会!! 《後編》
『ボーダーブレイク』はいかにして始まったのか
ぜんじ:8年以上ゲームセンターで稼動している『ボーダーブレイク』ですが、最初に開発が始まった経緯を教えてください。
青木:『ボーダーブレイク』が稼動を開始したのが2009年9月ですが、開発自体は2006年くらいから始まっていました。当時はゲームセンターに『機動戦士ガンダム 戦場の絆』(バンダイナムコアミューズメント)が登場し、人気を集めていました。ガンダムという強力なブランドを使ったとはいえ、大型筐体であれだけの敷地面積を使っても収益性があった、というのは凄いことでした。
ぜんじ:『戦場の絆』は、先に特殊な大型筐体が発表されたんですよね。これをどうやって活かすのかと思っていたら、ガンダムというIPでうまくまとめてきた、といった印象があります。
青木:セガには『電脳戦機バーチャロン』という、代表的なロボットゲームのタイトルがあります。そこで『戦場の絆』と勝負できるようなロボットゲームが新たに作れないか、という話になりました。それで『ボーダーブレイク』が始動したのですが、結果的には『戦場の絆』とも『バーチャロン』とも違ったものになりましたね。
筐体はコンパクトになり、機体はロボットですが、ゲームのベースとなるシステムはTPSに近いものになりました。
ぜんじ:セガは1999年に『アウトトリガー』という、トラックボールを使ったFPSをアーケードでリリースしています。まだ日本ではFPSが一般的に知られていない時期の作品でしたが、『ボーダーブレイク』を見たときにそれを思い出しました。
青木:あの当時はTPSやFPSを知らない人が多く、FPSといっても「え? RPG?」と勘違いされるほど認知度が低かったです。また人同士が銃で撃ち合うのも殺伐とした雰囲気になりそうで、そういうタイプはアーケードには向いていないのではないかと思いました。
そこで、人をロボットにすれば殺伐とした雰囲気が和らぐのではないかと。このようにさまざまな要素が重なって、『ボーダーブレイク』ができていったように思います。
しかし開発はスムーズにはいきませんでした。会社に承認を受けられない期間が何年も続き、作ってはやり直し……を繰り返しました。最終的にはOKをもらいましたが、そこからリリースするまでさらに半年かかったり。
その半年で次のバージョンの開発を進められたので、結果的にはちょうどよかったと思います。
ぜんじ:『ボーダーブレイク』が最初にAOU 2009 アミューズメント・エキスポに出たときに、僕は会場でプレイしました。そのときから盛り上がりを見せていましたね。
青木:満を持してお披露目をしたのが、2009年2月でした。1月には秋葉原GIGOなど少数の店舗でテストをしてAOUアミューズメント・エキスポに出展、という流れです。2月の時点でほぼ完成していたのですが、ラインナップの都合で9月まで伸びて、偶然ですが2009年の9月9日という、999の日に稼動を始めたんです。
ぜんじ:最初にロケテストをしたときの感触はどうでしたか。
青木:ロケテストをするまで、手応えはまったくわからなかったですね。今のように告知やPRをバンバン打てるわけではなく、ティザーサイトがある程度でした。Twitterも今ほど盛んではなく、僕がブログにロケテストをやるよ、と書いたくらいです。
そのときに名前を青木にするのは嫌だな、と思い、3秒で考えたハンドルネームが“牛マン”だったんです。丑年生まれなので牛マン(笑)。
そのくらいの告知しかしていなかったので、当然多くのお客さんが来るとは思っていませんでした。当日はあいにくの雪模様だったんですが、開店前に行列ができているのを見て「なんだろう?」と思ったら『ボーダーブレイク』の順番待ちでした。
プレイしたお客さんの声や感想を聞き、喜んでいるのを見て、社内でも「いけるんじゃないか」という雰囲気になりましたね。
百渓:ロケテスト前日の深夜4時くらいに搬入を終えて、お店の外に出たら、傘をさして待っている方がいて驚いた、という話があったのを覚えています。
青木:ロケテストではほぼ100%の稼働でしたし、面白い!という声もたくさんいただきました。とはいえ、そのときはこれほど長く続くとは思っていませんでしたけど(笑)。
家庭用へ移植する決断とその理由
ぜんじ:家庭用に移植しようと思ったのは、いつごろのことですか?
青木:移植の話は、アーケードが稼動して3年目くらいには出てました。人気があったのでアーケードだけではもったいないよね、という話が社内で盛り上がりまして。
とはいえ、家庭用を出してしまうとアーケードが廃れてしまう、という不安とジレンマがありました。最初のうちは上層部の判断だったのですが、僕がやったほうがいいと思ったのは、「ボダオフ」という地方のユーザーさんとふれあうイベントのときですね。
ぜんじ:「ボタオフ」は地方を回って行うイベントですけど、このような試みはとてもいいことだと思います。地方のファンは喜んでいると思いますよ。
青木:ありがとうございます。その「ボダオフ」をやっているときに、『ボーダーブレイク』は稼動を開始してからだいぶ経っているので、ユーザーさんの環境の変化があるんですよね。近くのゲーセンがなくなったりとか、子供が生まれてなかなかゲーセンに行く機会を作れなくなったりとか。
それなら『ボーダーブレイク』が家で遊べるようになればいいのかな、と。ユーザーさんからも家庭用に期待している、という声を聞いていたので、それが後押しになって、開発でも真剣に考えてみようということになりました。
PS4版の開発は、2015年くらいから始動しています。先にプログラマーがざっくり移植して、動かしてみたものがあったんです。それを元にして、全体の設計を考え、どういうマネタイズにするのか話を進めていきました。
実際に動いているのを見せるのが、いちばん説得力があります。それを見せることで社内承認が進んでいった、という感じです。
基本無料の採用は、より多くの人に遊んでもらうため
ぜんじ:PS4版の基本無料というスタイルは、いつ決まったのでしょうか?
百渓:最初から基本無料が前提ですね。パッケージという選択肢もあったのですが、家庭用に移植するにあたり、より広く、より長くお客様に遊んでいただきたいというコンセプトがありましたので。『ボーダーブレイク』の場合、新しいお客さんが入りやすくして、マッチングできる人数を確保していったほうが盛り上がると思うので、基本無料でいこうと。
ぜんじ:パッケージだと、最初にある程度のお金を払わなければいけないですからね。すでにゲームセンターで遊んだことがある人ならいいのかもしれないですが、知らない人がやったことのないゲームにお金を払うのは、どうしても抵抗が出てきてしまいます。
近年はゲームに限らず、基本無料で体験してもらい、その後に課金してもらうという」ビジネスが多くなってきていると思います。
百渓:新しいお客さんが今からゲームセンターに行って始めるには、ハードルが高い部分もあると思うんです。それでもっと広げていくために、家庭用のフリー・トゥ・プレイを選択しました。
ぜんじ:今は昔と比べてゲームセンターの数が減ったので、ゲームセンターで存分に遊べる環境自体が希少かもしれませんね。
百渓:地方に行くと、「車で2時間かけてゲームセンターに通っているけど、そろそろしんどい」というようなプレイヤーもいます。
ぜんじ:それだけのめりこめるプレイヤーがいるというのは、優れたゲームだという証明です。もう少しプレイヤー層が広がらないのかな、と思うんですが。
青木:このような状況は、僕らとしては機会損失している、ともいえると思います。PS4版なら24時間遊べるので、ゲームセンターでは遊べないお客さんにもやっていただけるのではないかと。
ぜんじ:ゲームは好きだけどゲームセンターには行かない、という人にも、話題になればいいなと思いますね。
青木:ゲームセンターにまったく興味がない人というのはいますからね。ゲームセンターでは長期間運営している『ボーダーブレイク』ですが、世間的にはいまいち知名度がないと思っています。
やっとPS4のような、人目につくところに出て来られたなと。そこで新たな多くのユーザーに気づいてもらって、遊んでもらえればいいなと思います。
アーケード版の2~3倍の速さの展開を目指す
ぜんじ:リリース後の展開は、もうある程度決まっていますか。
青木:PS4版の展開は、9年間やってきたアーケードと比べて2~3倍のスピードで進んでいく予定です。アーケードの9年を3年で消費するイメージですね。ゲームセンターは深夜は閉店していますが、PS4版なら24時間遊べます。そのぶん消費スピードが速いのではないかと。
そのスピード感で運営していって、まずは3年、できれば10年続けていきたいです。どちらにしても、数年で止めてしまうようなことはありません。ユーザーも長く遊べることを求めているでしょうし、アーケードで最近出てきた機体や武器が出てこないと、納得がいかないでしょう。そこはしっかりやっていきたいですね。
ぜんじ:アーケードには出てきていない武器や機体パーツなども追加されますか?
百渓:その予定です。アーケード版をずっと遊んできてくれた方にも、アーケードにはない新しさをしっかりと提供して、新鮮さを感じながら楽しんでもらえるようにしていきたいと考えています。
武器、機体と課金要素について
ぜんじ:武器や機体パーツは、課金で手に入れるのでしょうか。
百渓:メインはフレームロットになります。武器と機体パーツを抽選で手に入れてください、というものになります。
そのほかには月額制のプレミアムサービスがあって、毎週専用のフレームロットを一定回数利用できたり、ハンガーを複数使えたりと、さまざまなサービスを受けられます。これは相当お得なので、腰をすえてプレイしようと思っている方はぜひ利用していただきたいですね。
オペレーターとボーダーは販売です。ボーダーを育てると、チップがもらえるという仕組みです。欲しいチップを持っているボーダーを購入してもらえれば、チップは必ず入手できます。
今回のゲームの設定として、チップは戦闘データの集合体であって、それをチップ化してカスタマイズに使えるということになっています。
オペレーターやボーダーは容姿やボイスが変わるので、お好みに合わせて購入いただければと思います。最初に選べる6人のボーダーは、バトルなどで手に入る「ボーダーズチェック」という通貨でも買いやすくなっているので、まずそれをそろえつつ、他のボーダーを購入するかを考えていただければと思います。
ほかのボーダーもボーダーズチェックで購入できますが、高額なので手に入れるまでの道のりは長いです。
青木:フレームロットについては賛否両論があると思います。個人的な考えですが、目的のものを意地でも手に入れるというのではなく、手に入ったものでカスタマイズを考えて遊んでいく、というスタイルでもいいのではないでしょうか。
もちろん最初にガッツリ課金していただいたら我々としては嬉しいんですけど、少しずつ集めていくことで、ゆっくり自分の環境が変わっていくという楽しみを感じてもらえれば。
ぜんじ:少しずつ装備が充実してくるところは、RPGに似ているところがあると思います。アーケードでもひとつの武器がとても強いというバランスではなくて、わずかな違いになっていると思うので、抽選でもいいのかもしれません。
青木:このゲームの場合、いわゆるペイ・トゥ・ウィンにはしづらいですね。もともとの武器コンセプトがあるので、最強武器のようなものは作れないと思います。
百渓:『ボーダーブレイク』はプレイヤースキルのウェイトがとても高いです。例えば今のアーケード版の初期装備と最新装備ではさすがに差があると思いますが、超上級者と中級者が戦ったら、やはり中級者は勝てないのが現状だと思います。
PS4版は提供の仕方がアーケード版とは違うので、武器や機体のパラメータを見直しています。多少強さ的なものが階段状になっているところはあると思います。それでも中級者が上級者にマウントを取れるということはないでしょうし、プレイヤースキルの幅が広いのでそれほど気にならないと思います。
特定の強力な武器を手に入れないと楽しめない、ということにならないようなバランスを目指しています。
青木:PS4版はパラメータがアーケードとは少し違うぶん、手に馴染まなかった武器が馴染むようになるかもしれません。アーケードに比べてSNSなどに発信しやすいので、『ボーダーブレイク』を酒の肴にしながらワイワイ楽しんでもらえたらいいなと。
またPS4版には、図鑑モードがあるんですよ。これは二次創作を楽しむファン向けに用意したものです。アーケードではプレイ時間の都合で入れられませんでしたが、PS4版なら消費GPを気にせず、集めたパーツをじっくり鑑賞できますので。
ぜんじ:図鑑のようなものがあると、全部コンプリートしたいと思う人がいますからね。これは人間の性でしょうか。
青木:コンプリートしたいですよね(笑)。
ぜんじ:PS4版は基本無料のシステムですが、無料でもそれなりに遊べますか?
百渓:一般的なソーシャルゲームのように、無料でフレームロットのチケットがもらえるタイミングもありますし、プレイヤーレベルが上がるとシュライクやヘヴィガード初期などの機体パーツ、別バリエーションの武器が揃っていきますので、それだけでも楽しむことはできます。
またボーダーズチェックで毎月決まった数のフレームロットのチケットが買えるようになっているので、その枠内なら課金は必要ありません。もちろん、条件達成によるチケット入手もあります。
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というわけで前編はここまで。後編は、アーケード版とPS4版の違いや本作ならではの魅力についてじっくり語ってもらう。
座談会後編はコチラ!:『BORDER BREAK』PS4版ならではの要素は? 手軽さと奥深さが共存する楽しさをトコトン語り合う! 青木P×百渓D×石井ぜんじ座談会!! 《後編》
●聞き手・構成/石井ぜんじ:80~90年代に発行されていたアーケードゲーム雑誌「ゲーメスト」元編集長。『ボーダーブレイク』好きのライター。現在のクラスはACE。
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