漆黒の英雄モモン様は王国の英雄なんです! 【アニメ・小説版オーバーロード二次】   作:疑似ほにょぺにょこ
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5章 ナザリック 善意の会談編-終

「フンーフンフンー──」

 

 無事、リ・エスティーゼ王国とアインズ・ウール・ゴウンの会談は終了した。俺たちはナザリックを後にし、帰路についている。ラナー王女様──ラナーが首なし馬を甚く気に入ってくれたために先に馬車を引っ張っていた馬だけ返し、今は首なし馬が1頭で馬車を引いている。そのため俺でも御者が出来るので、俺が御者をやらせてもらった。決して馬車の内部の話を聞くためではない。決して。

 とはいえ、俺には御者の経験などあるはずもない。経路を首なし馬に言うだけであとは首なし馬が勝手に進んでいる状態である。

 しかし本当に良かった。成功。大成功である。リ・エスティーゼ王国と完全に友好関係を結ぶことができたのだ。思わずユグドラシルのフィールドBGMを口遊んでしまっても仕方のないというものである。

 このまま予定通りにいけば、アウラとマーレに扇動されたバハルス帝国がナザリックへと派兵するはずだ。そして起こる大戦。その勝利をラナーに捧げればラナーの影響力も盤石なものとなるだろう。

 懸念材料となるのは、未だ沈黙を続けるスレイン法国。傾城傾国を所持するプレイヤーが居るはずなのだが、未だにアクションがないのが逆に恐ろしい。そして八竜を頂点とするアーグランド評議国だ。まず間違いなくこの二国はちょっかいを掛けてくるだろう。それもバハルス帝国との激戦の最中に。最も俺たちが油断しているときに。だからこそ今回の大戦には特に注意して行わなければならない。バハルス帝国ばかりに目を向けていれば、八竜やプレイヤー達にあっさりとナザリックを奪われるということに成り兼ねないのだ。

 

(けど、今は──今だけは喜びに浸りたいなぁ)

 

 

 

 

 

「まずは会談の成功。おめでとうございます、ラナー様」

 

 ナザリック地下大墳墓を出発しておよそ半刻。最初に口を開いたのはクライムだった。今馬車に乗るのは私とクライム。そして今モモン様が御者をして下さっているのでガゼフ様とブレイン様。そして蒼の薔薇リーダーであり私の友人であるラキュース。そして内部護衛の一人としてティナさんが居る。いくら王家が所持する中でも特に大きい4頭立て馬車とはいえ、6人も乗れば少々手狭になってしまうが、内密の話をするためなので仕方ない。しかし、この4頭立て馬車を立った1頭で引くとは。たった1頭しかくれなかったと最初は思ったのに、首なし馬の能力をまざまざ見せつけられてしまった。その能力の高さを喧伝するためにあえて1頭で引かせたのか。この首なし馬だけでもアインズ様のあらゆる思惑が透けて見える気がして無からなかった。

 

「成功。と言っていいのかよくわからないわ、クライム。終始──アインズ様の掌の中でころころと転がされた気分ですもの」

 

 少しばかり苦笑した顔を作って皆の顔を覗く。表情と雰囲気から察するに、どうやら別行動をなされたガゼフ様、ブレイン様は成功したようだ。

 

「そういえばガゼフ様はセバス・チャン様に、ブレイン様はシャルティア・ブラッドフォールン様にお会いしたのですよね」

「あぁ、ブレインやクライム君の評価を聞いて一度お会いしたいと思って居たのでな。噂に違わぬ善き御仁だった」

 

 早速食いついてきたのはガゼフ様だ。様々な憶測が飛び交う中、ただのいちメイドを救出するというまるで英雄の如き行動をとられた御方。それほどの方が上位とはいえアンデッドの従者をしているというのはどうも納得がいかなかったために、ガゼフ様にそれとなく会ってみないかと話をしてみたのだが──

 

(まさか本当にアインズ様の従者をしていたとは──ではなぜリ・エスティーゼ王国に?ソリュシャンなる貴族の娘の従者をしていたらしいけれど、その娘もアインズ様の関係者?とすると、そのソリュシャンなる貴族の娘の父はどこかの国に仕えているはず。そして我が国にはソリュシャンという名の年頃の娘を持つ貴族は居ない。他国の貴族だという前提で言うならばアインズ様は既にその国と繋がりを持っていることになる。あり得るとすれば?帝国?無い。アインズ様の配下であるとされるダークエルフの兄妹が暗躍しているという情報が既にある。評議国?無い。世界の平定を求める竜王が死の王と手を組むとは思えない。スレイン法国も同じ。最近きな臭くなっているローブル聖王国?いや、そもそも我が国の情報を得てどうするというのか。そもそも我が国の情報を得るために貴族の娘を使うか?では偽名?それが最も可能性が高い、か。ならば我が国に既にアインズ様と仲の良い貴族がいることになる。それも、貴族の娘の護衛のために自分の執事を貸し与えるほどに懇意にしている貴族が。──まだ情報が足りない。何か足掛かりはないか。そう言えばイビルアイ様の話では──)

 

 ガゼフ様の言葉を聞きながらセバス・チャン様の情報を整理していく。そして一人の貴族が脳裏に浮かんだ。

 

(レエブン候──そう、確かイビルアイ様の話では、遥か昔からレエブンの性を名乗る物が居たと言っていたはず)

 

 レエブン。その名が出た瞬間、一瞬で絡まった糸が解けて一本になっていく。

 

(そもそもレエブン候がモモン様を知っていたのはなぜ。あの魔族襲撃という突発的な事件であるはずなのにピンポイントでモモン様を呼べたのはなぜ。やはり、レエブン候は──)

「──というわけで、戦士長という立場を抜いて個人的にも、仲良くなりたいと思うほどの御仁であった。流石、ブレインが『様』付けで呼ぶだけの事はあったな」

「だろう?ブレインもやっとあの御方の良さが分かったみたいだな」

 

 そろそろ思考を切り替えないと。どうやらブレイン様の話は終わるようだ。簡単にまとめれば、善性の強い人。そして途轍もなく強い人。ということになるか。人の見る目のあるガゼフ様の言葉だ。まず間違ってないと思っていいだろう。ではなぜアインズ様の従者をされているのか。その理由さえわかれば私たちの味方になってくれる可能性もあるのかもしれない。

 

「そういえば、ブレイン様の武器が変わっていますね。もしかして、シャルティア・ブラッドフォールン様より頂いたのですか?」

「ん、ああ。そうだ。聖遺物級<レリック>らしい」

 

 嬉しそうに話しだすかと思えば、言葉少なく俯いてしまった。話題を間違えたのだろうか。そう思った時だった。

 

「──すまねえ!」

 

 ブレイン様が突然誤ったのだ。皆が息を飲む。想定外だったために私も少なからず驚いてしまった。事情を知っているだろうガゼフ様だけが腕を組み、目を瞑ったまま微動だにしていない。

 余程の事なのだろう。突如静かになった馬車の中にブレイン様のすすり泣く声だけが響く。そのまま時間が過ぎていくのか、そう思えた。が、動いたのは──

 

「──あの貴族の言っていたことは間違いだった。そうだな、ブレイン」

「あぁ。シャルティア様は──シャルティア・ブラッドフォールン様は本当に操られていたんだ。つまり──」

「ゴウン殿とヤルダバオトが敵対関係にあることは間違いない、ということか」

 

 ガゼフ様の言葉にブレイン様は小さく頷いた。そうか。私が王から無理に推し進められたことがあったのと同じ様に、ブレイン様は誰かに情報を与えられていたのだろう。

『アインズ・ウール・ゴウンとヤルダバオトは繋がっている。その証拠に、シャルティア・ブラッドフォールンは操られていたのではなく、自分の意志で動いていた』と。

 しかしそれは根も葉もない情報だったわけだ。そんな情報を吐くとすれば──

 

「リットン伯──ですね、ブレイン様?」

「──あぁ。今更隠しても仕方ない。確かに俺にその情報を与えたのはリットン伯爵だ。勿論俺もその情報を鵜呑みにしていたわけじゃない。だが、もしその情報が本当なら──」

「アインズ様は途轍もない芝居を打っていたことになる、ですね」

 

 それこそ国を丸ごと巻き込んだ大芝居だ。失敗すれば良くて国落とし。下手をすれば世界の敵<ワールド・エネミー>の認定を受け、世界中から派兵されることになっただろう。

 そんな下策をあの智謀の持ち主が打つだろうか。自身の力に絶対の自信があったとしても、そんな暴挙に出るとは考えられない。そもそもその説が本当に正しいのであれば、モモン様すら共犯ということになる。それこそ有り得ない。もし共犯だったならイビルアイ様はあの時に死んでいたはずだ。それなのに、イビルアイ様は生きている。いや違う。逆だ。イビルアイ様はモモン様に助けられたのだから。その一手だけでもこの説は瓦解する。そんな稚拙な話なのだ。

 

「俺が見たあの吸血鬼はあんな嫋やかなヒトじゃなかった。血を好み、死を求める。正しく皆が思う異形種<モンスター>だった。今では納得さ。あれ程の御方。確かにセバス様が仕えるに相応しい気品と強さを持たれていた。下手な貴族よりもずっと、な」

「俺は少ししか相対しては居ないが、それでもそれなりにゴウン殿の事は見て居る。あの御仁であれば安心して後方を任せられると思う程の傑物であると、そう確信するほどの御方だった。だからブレイン。お前の考えが間違っていることは最初から分かっていたのだ。その妻たる者がそんな化け物然としたモノであるはずがない、とな」

 

 

 

 

 

(よしっ!)

 

 思わず声を上げそうになってしまった。御者をしているため隣に誰かいるというわけではないが、先ほどから──いや、ずっとイビルアイがこちらを監視し続けている。恐らく中の話を盗み聞きしようとしていると思われているのだろう。しかし俺は基本的に操作している時以外は微動だにしていない。これならば盗み聞きしているとばれないはずである。

 しかし──とうとうあの懸念。『こいつら繋がってるんじゃね?』が払拭されたのだ。やはりリットン伯だったようだ。あの伯爵は最初の噂を広めた人物の一人だったのでなんとか尻尾を掴もうとしていたのだが、のらりくらりと躱されていた。それがやっとその尻尾を掴むことができたのだ。これを喜ばずして何だというのか。

 

(だけど噂を広めた相手がわかっても手出しできないんだよなぁ)

 

 相手はこと政治と噂にかけては百戦錬磨の手練れだ。平凡な社会人だった自分とは正しく格が違う。下手に手を出したら最後。決して抜け出せぬ底なし沼に引きずり込まれることになるだろう。そう思えるほどの相手なのだ。やはりここはラナー達に情報を流してもらうのが得策。餅は餅屋、である。

 

(そういう意味でもラナーを味方に引き入れたのは良かったな)

 

 味方とはいえ、真の、ではない。あくまで公的な、利害関係が一致しただけの関係だ。今は、という前置詞が付くが。

 これから何年も何十年も。いや、子々孫々と関係を続けて行くつもりでいる。そうしていく間に本当の仲間といえる相手になってくれるかもしれない。それくらいの希望的観測を持つ程度にはラナーの事を信用していた。

 

(セバスとシャルティアは上手くやってくれたみたいだな)

 

 セバスはたっち・みーさんの子であるためか、善性が非常に強い。だから全く心配はしていなかった。しかしぺロロンチーノさんと同じく小さな失敗の多いシャルティアは別だ。もし不用意な発言をしていたならば、と思うと背筋がぞっとする。この平穏な雰囲気で帰れるのは、数多の偶然が積み重なった結果なのだと理解してしまったから。

 

(失敗していたら全員殺して、ドッペルゲンガーに入れ替えなければならなかったんだよな。あぁ、恐ろしい)

 

 俺が欲しているのは傀儡ではない。共に笑える友を。仲間を。そして、いつか皆に会えた時に誇れる姿を。モモンガとして、アインズ・ウール・ゴウンとして。そのためには出来るだけ失敗は避けなければならない。

 

(心が休まる日が来るのはいつなんだろうなぁ)

 

 皆の思うナザリックの主としても確りとしなければならない。問題山積だというのに、一体どこから手を付ければいいのか分からない。せめて手遅れになる前に終わらせていかねばならないから。

 

 

 

 

 

「呼んだかい、ツアー」

 

 あぁ、声がする。ゆっくりと目を開ける。視界に入るのは何も変わらないいつもの神殿。ゆっくりと頭を上げると見知った顔が見えた。リグリットだ。

 

「あぁ。相変わらず気配が読めないね、リグリット。一つ、話しておかなければならないことがあったんだ」

「話しておきたいことだって?」

 

 私の言葉にリグリットの整った眉が少しだけ顰められる。彼女の美しさは年老いてなお、翳ることはない。私は彼女の言葉にゆっくりと頷いた、そうだ、と。

 

「実は遥か昔──六大神の時代よりもさらに昔、ドラゴンたちですら記憶に残す物は少ない程の昔。とても気になる名前があったのを思い出したんだ」

「随分と勿体ぶるじゃないか。えぇ、ツアー?」

 

 昔から変わらぬいつものやり取り。分かりやすいように順を追って説明しようとする私と、早く結論を言えと急かすリグリット。懐かしい。懐かしいけれど、それを今言っている暇はない。早く伝えねばならない。

 

「六大神が生まれる遥か昔に、位階魔法と呼ばれる今の魔法すらない時代に、善神と呼ばれる者が居たんだ」

「へえ、そのカミサマは聞いたことがないね」

 

 だろうね、と彼女の言葉に頷く。竜王<ドラゴンロード>クラスでも名前すら知らない者が大半のはずだ。そもそも知っていたらこんなに安穏としていたのだろうか、と思う。

 

「その善神の名は──」

 

 遥か昔に思いを馳せる。1000年も生きて居ないこの身だけれど。竜王としての力が、始原の力が私に呼びかける。決して忘れるなと。その名は尊き名。全ての善の始まりというべき名。

 

「──ナインズ・オウン・ゴール。そして、かの神が伝えた大国の名が、ナザリックなんだ。どうだい、リグリット。かの神の名はナザリックというダンジョンの主──アインズ・ウール・ゴウンという名に似ていると思わないか」

 




とうとう二次創作の醍醐味、完全オリジナル設定ぶち込みです。
このお話から少しづつオリジナル設定が紛れ込んできますので、丸山くがね様原作の方と混同されませんようご注意くださいませ。

こう書いておけば『この設定違うんじゃね』って突っ込みがなk──ゲフンゲフン──

冗談はさておき、この辺りから丸山くがね様が公開されてない設定が増えてきますので、オリジナルで勝手に設定作っていきます。
原作終了してないのに突撃した初期ハガレンアニメのように見てもらえると助かるかもしれません。
あれほどの完成度はありませんけどね!






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