朝鮮戦争の休戦から六十五年。日本の至近で起きた戦争は、法的にはいまだに戦争状態にある。ようやく、米朝をはじめ関係国間で正式に終結させる動きが出てきた。半島非核化に生かしたい。
一九五〇年六月から朝鮮半島全域で繰り広げられた朝鮮戦争は、三年後の七月二十七日に「休戦」となり、戦火がやんだ。
戦争前とほぼ同じラインによる南北分断という結果に終わったが、代償は極めて大きかった。
民間人を含め五百万人以上が犠牲となった。南北に分かれて住む離散家族は約一千万人にもなる。
北朝鮮の核・ミサイル問題の根本的な解決には、休戦状態を終わらせ、関係国が平和協定を結ぶことが必要だと、専門家の中で長く論議されてきた。
しかし休戦協定の締結には、約二年もの長い時間がかかった。捕虜の扱いや、休戦ラインの設定など、関係国の利害が複雑に絡んでいたためだ。
平和協定締結も簡単ではない。このためまず関係国が「終戦」を宣言し、信頼関係を築く構想が生まれた。法的義務のない、いわば政治的な申し合わせである。
南北の首脳が四月二十七日に発表した「板門店宣言」に、「今年中に終戦を宣言する」という目標が盛り込まれたのも、こういった構想の反映といえる。
トランプ米大統領も、「(朝鮮)戦争は終わるだろう」と述べ、前向きな姿勢を示していた。
ところが米国は、ここに来て慎重になった。非核化の実現より終戦宣言を先行させると、北朝鮮に在韓米軍撤退などを求める口実を与えかねず、不適切だとの指摘が出ているからだ。
これに対して北朝鮮は、「終戦宣言をしてこそ平和が始まる」と反発し、米朝間の非核化協議は停滞に追い込まれていた。
休戦状態とはいえ、軍事的緊張は変わっていない。もちろん日本にとっても、巻き込まれかねない危険な状態だ。
北朝鮮は北西部のミサイル実験場で、主要施設を解体していると伝えられる。北朝鮮地域で死亡した米兵の遺骨返還作業も、二十七日に行われた。
歓迎したいが、まだ米国や国際社会は、北朝鮮に十分な信頼を置いていない。非核化に向けたロードマップを提示するなど、より踏み込んだ努力を示すべきだ。
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