イースシリーズタイトル

この記事は、今日までつづく日本ファルコムのアクションRPG『イース』シリーズについて、読めば知ったかぶりできる知識を得られるようにまとめたものになります。一部ネタバレもありますので、ご注意ください。この記事をキッカケに『イース』シリーズの魅力にふれていただければ幸いです。

※2018年7月21日19時、画像追加。
※2018年7月22日19時、ワンダラーズ・フロム・イースの解説を追加。
※2018年7月22日20時、イースIVの解説を追加。






そもそも『イース』って何?
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ゲームタイトルになっている『イース』とは国の名前です。このシリーズは、70歳をこえるまで世界各地を冒険した冒険家アドル・クリスティンが、自身の冒険を記した書物「冒険日誌」をゲーム化した…という設定であり、ゲームタイトルの後につく数字は、「イースから何番目の冒険」という意味だと後付け設定がなされました。

「イース」という国に関する冒険は、ゲーム1作目と2作目で終了しており、その他の作品にはほとんど出てきません。ただし、まったく出てこないわけではなく、間接的に関わりがあるといった繋がりは存在するため、シリーズすべてを遊んでおくと、ニヤリとする場所が出てきたりするのも、このシリーズの特長かもしれません。


『イース』
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イース1パッケージ

=物語について=
冒険家アドル・クリスティン最初の冒険「古代イースの滅亡」の物語です。

故郷の村を飛び出して、冒険を求めて各地を転々とするもののアドルは冒険と出会うことができないでいました。そんなとき、海の向こうにある呪われた国エステリアのウワサを耳にします。エステリアは銀の産出で賑わう小さな国でしたが、ある日、突如、国に渡ろうとすると嵐が吹き荒れ、どんな船も沈んでしまうことに。嵐の結界と呼ばれ、今では誰もエステリアに向かおうとする者はいないとか。アドルはここにこそ自分が求める冒険があると考え、単身、小舟でエステリアに向かうのですが、嵐に遭って船はあっけなく波に飲み込まれてしまいます。

運よくエステリアに流れ着いたアドルは、エステリアの人たちの手厚い看病を受けて回復。しかし、エステリアの惨状を知って愕然とします。エステリアはある日突然現れた魔物の脅威にさらされ続けており、人々は疲弊しきっていたのでした。そもそもなぜ魔物が現れたのか。すべてが謎。助言をもらうために町の占い師サラのもとを訪ねたアドルでしたが、逆に、サラからイースの書の探索を依頼されます。

イースとは、かつてエステリアの地にあった国の名前。2人と女神と6人の神官によって統治され、魔法の金属クレリアによって繁栄を極めた国だっと聞きます。しかし何かが起こり、一夜にしてイースは消滅。6冊あるといわれるイースの書はイースの神官たちによって書かれたもので、イースに何が起きたのかが記されているという。そこに今、エステリアに起きている事態解決のカギがあると感じたアドルはサラを依頼を引き受けるのでした。

1冊目のイースの書があるのは、バキュ=バテッドといわれる巨大クレーターの山頂にあるサルモンの神殿。中は迷宮となっており、巨大な魔物によってイースの書は守られているという。その探索の途中、アドルはなぜか、神殿の地下に幽閉されている記憶喪失の少女フィーナを救出する…。

=ゲームについて=
当時のパソコンゲームは高難易度な作品ばかり。そんな中、「今、RPGは優しさの時代へ。」というキャッチコピーのもと、難易度を抑えて、手応えを感じつつ誰でもクリアできるアクションRPGとして、『イース』は生まれました。

本作は『太陽の神殿』という同社のアドベンチャーゲームのマップ移動シーン、「キャラがちょこちょこ動くというところに敵と戦わせたら面白いよね」というところからアクションの着想を得ています。「半キャラずらし」というキャラを半分ズラして敵に体当たりしていくと、カシュッカシュッとダメージを与えられるシステムは、シンプルなアクションでありながら、敵との場所取りとタイミング合わせが必要で、かつ、地形によって戦略が変わってくる奥深さがありました。今でも面白いです。

=裏話=
本当は1作だけで完結する予定だったが、内容がディスクの予定枚数に入らないこと、開発期間が足りないことから、急きょ、ラストダンジョン「ダームの塔」が作られ、むりやり完成させたという経緯があります。ダームの塔に入る前にレベルMAXになってしまうのはその名残り。しかし、全25階の広大なマップを、アクションだけで踏破するというシチュエーションが、逆に作品としての盛り上がる後半となったのは、ケガの功名というやつかもしれませんね。

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(エステリアのミネアの町。冒険はここからはじまる!)

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(占い師のサラからイースの本探索を依頼される。しかし彼女は何者かに殺されてしまう)

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(サルモンの神殿にいるボス・ジェノクレス。しかし、もっと強いのが控えているのだ)

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(神殿の地下に幽閉されていた謎の女の子フィーナ。彼女の正体は本作では明かされない)

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(さらなるイースの書を求めて、魔物が湧きだしてきたというラスティン廃坑へ潜る)

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(廃坑の縦穴。ここは廃坑内で唯一、HPが回復できるところ。強敵揃いのダンション唯一の癒し)

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(ダームの塔に挑戦してすぐ敵につかまってしまうアドル。助けに来てくれたのは盗賊ドギ)

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(裏切りのダルク=ファクト!彼にダメージを与えられる武器はイースの書の中にヒントが!)

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(そして感動のエンディング…しかし、よくよく考えると謎が全然解けていないことに気づく)


『イースII』
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イース2パッケージ

=物語について=
「古代イースの滅亡」の後編です。

エステリアに魔物を甦らせたのは、イースの6人の神官の1人ファクト、その子孫であるダルク=ファクトでした。しかし、彼も操られていた傀儡の1人。本当の敵は、古代イースを滅亡に追い込んだ「魔」そのもの。それは今もなおイースにいるのでした。700年前に突如この世界から姿を消したイース。その真実は、魔力の根源・黒水晶のチカラによって迫りくる魔の軍勢から身を守るために、国ごと天空に逃れたのでした。エステリアに残る巨大なクレーターはイースの中枢があったその場所だったのです。

6冊目のイースの書に書かれていたこと。それは、6冊のイースの書を集めたものに大いなる力が授けられるというもの。魔物もダルク=ファクトも気がつかなかったその力とは、はるか天空に浮かぶイースへ、イースの書の持ち主を運ぶという神官たちの希望そのものだったのです。かくして、強烈な光に包まれたアドルは、はるか天空へと飛び立っていきます。

しかし、イースの書が書かれた頃の神官たちは気が付いていませんでした。「魔」とは、「聖」たる2人の女神に対なす者。地上にいた6体の魔物たちは、6人の神官の対となる存在だったのです。2人の女神が地上にいたということは、対なす「魔」はイースにいるということ。そう、イースは「魔」から逃げたつもりでしたが、「魔」を内に秘めたまま天空に上ったのでした。

まばゆい光を感じて振り向く少女。そこに落下する赤毛の少年剣士。たどり着いた先はイース。ここは「魔」の領域。最後の戦いが幕を開けようとしていた。

=ゲームについて=
前作のヒットを受け、無事に後編の制作が決定する。キャッチコピーは「優しさから、感動へ」。前作のゲームバランスはそのままに、ストーリーの強化が図られました。とはいえ、前作は多くの謎が残ったままの終了だったため、本作では散りばめられた伏線がすべて収束するという点に注目です。

ゲームシステムは基本的に前回と同じですが、本作から「魔法」が追加されました。これは6人の神官から授かるというもので、攻撃方法になるもの、探索補助になるもの、最終決戦用など、用途はさまざまです。

ゲームのテンポアップが図られており、アドルの移動速度は前作の2倍に。これにより、前作以上に広大なマップを疾走する感じが増し、ハイスピードアクションの体になってきました。本作は前作と違い、敵の中枢に向かって進撃していく物語のため、このスピード感はいい演出にもなっています。

=ヒロインについて=
『イースII』のヒロイン・リリアは、当時、絶大な人気を誇りました。その人気ゆえに、ミスリリアコンテストが開催されたぐらいですから。リリアは病弱な娘という出会いからはじまる、献身的に主人公に尽くしてくれる行動派な女の子。萌え要素てんこもりです。

が、本作の真のヒロインは『イースI』から出演しているフィーナなのでした。アドルにとってフィーナが特別すぎる存在であることは、本作のエンディングを見ればわかります。解釈は人それぞれだと思うのですが、私はアドルにとってフィーナとの出会いは人生観が変わるほどの衝撃だったと思うわけで。エンディングでずっと空を見るアドルから、すぐにリリアをはじめとする別のヒロインに鞍替えするイメージが湧かないのです。

アドルにとってフィーナは、初めて恋に落ちた完璧すぎる女の子であり、お互いの立場上、別れは必然だったのだけど、もう一度彼女に会うためにアドルは冒険をつづけている。そんな風に思えるわけです。

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(オープニングの1シーン。当時の技術でかなりアニメーションします。バックに流れるTo Make The End of Battleは名曲!)

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(イースIIのヒロイン・リリア。実は重い病気にかかっており、もうすぐ死んでしまう運命だったのですが…)

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(こちらはランスの村。イースIIは、ここからサルモンの神殿に向かう進撃の物語です)

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(イースの女神から与えられる新たなチカラ、それは「魔法」!魔をつくり出し、魔を滅ぼせる諸刃にして唯一の手段)

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(落盤に巻き込まれてしまった医者のフレア=ラル。実は彼、イースIVとイースVIにも再登場。重要な役割を担う)

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(強敵ベラカンダー襲来!イースの魔に剣は効かない!倒すのは、新たに授かったチカラ「魔法」だ!)

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(サルモンの神殿を守るノルティアの氷壁。ここで語られているさらわけた女の子がリリアであることは後に分かる)

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(ザレムさん、寒くないですか?)

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(ついに到着したサルモンの神殿!しかし、外部、内部、地下水道と分かれており、広大なマップを走り回ることとなる)

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(イースIIの見せ場の1つ、鐘つき堂!幹部ダレスによって行われるこの死刑の儀式によって、マリアは殺されてしまう)

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(すべての戦いが終わった後、みんなに2人にしてもらうアドルとフィーナ。2人の出会いと別れが、イースって物語なのです)


『ワンダラーズ・フロム・イース』
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イース3パッケージ

=物語について=
エステリアでの冒険から3年後の物語。ダームの塔で助けられた盗賊のドギと意気投合したアドルは、彼と2人で旅を続けていた。そんなとき、ドギの故郷について不吉な噂を聞くことになり、2人は一路フェルガナ地方に向かうこととなった。アドル=クリスティンの冒険日誌「フェルガナ冒険記」のゲーム化という設定です。

=裏話=
もともとはイースシリーズとは別の作品として作られていたタイトルでしたが、『イースI』『イースII』のヒットを受け、シリーズして開発することが決められてしまったという経緯あり。ただし、イースの話は『II』で終わっているため、タイトルに「イース」と付けても「イースIII」にはしないということで決着。「ワンダラーズ・フロム・イース」とは「イースから来た放浪者」という意味でアドルとドギのことを指す。

=ゲームについて=
上記で書いた通り、もともとイースとして作られていなかったということもあり、ゲームシステムはまったく違うものに。ジャンルは横スクロールアクションRPGへ。当時のPC環境では、背景のスクロールをはじめ、主人公や敵の動きといった処理が難しく、カクカクしたものになりがち。加えて、アクションRPGというのは、ゲームバランスの調整が非常に難しく、手応えがないか、とてもつなく難しいものになりがちでした。余談ですが、多くのおじさんたちはこのゲームをゲームパッドを使わず、キーボードを叩いてアクションしていた時代です。そのような中で、美しく多重スクロールする背景、ジャンプ斬りや下突きといった多彩なアクション、躍動する巨大なボスキャラなど、当時のアクションRPGの限界を突破してきた作品作りは、さすが日本ファルコムといったところ。このスゴさは、アクションが得意なコンシューマへの移植作品を見ただけでは、分かりづらいかもしれません。

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(ティグレー採石場の縦穴。背景の川は水が流れるアニメーションをしつつ、多重スクロールによって奥行き表現がされている)

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(最初の敵デュラーン。剣を扱って攻撃をしてくる。倒すと剣が地面に突き刺さり、調べるとロングソードを得られる)

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(イルバーンズ遺跡の地下にある溶岩地帯。後ろからプロミネンスが追いかけてくる。ここはひたすら追いかけっこ)

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(出たー!火竜ギャルバ!吐き出してくるプレスを避けながら、高いところに上って、頭上めがけて下突きを入れろ!)

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(ドギの幼馴染であるチェスターとその妹のエレナ。この2人の出生と、マクガイア城主の野望が物語に大きく関わってくる)

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(エルダーム山脈には、孤児のドギに生きる術を教えたという師匠が住んでいる。細かく描かれている背景が本作の売り)

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(エルダーム山脈に住む幼鳥リガティ。美しい姿で旅人を惑わす)

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(本作最大の山場バレスタイン城!背景に描かれている姿は美しいが、内部は殺人トラップと強敵だらけ)

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(マクガイア王に取り入っていた側近のガーランドは実はガルバラン配下の生き残り。精霊の守護が破られ、ガルバランは復活することに)

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(わずかな光しかさしこまないガルバラン島での戦い。いよいよ最終決戦まであとわずか)

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(いよいよガルバランと対峙するために、ガルバラン島にある闘技場の外壁を駆けていくアドル。このような演出もカッコイイです)


イースIV
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=制作背景=
結論から言うと、日本ファルコム製の『イースIV』は存在しません。

『イースI』と『イースII』、そして『ワンダラーズ・フロム・イース』は、その時代の限界に挑戦する意欲的な作品たちでした。しかし、制作スタッフの多くが日本ファルコムを抜け、新しい会社クインテッドを作ってしまいます。日本ファルコム内にイースを作れるスタッフがいなくなってしまったわけです。そんな折、続編制作の打診をしてきたのが、PCエンジン版『イースI・II』と『イースIII』を手がけたハドソン。社内に生産ラインがないということで一度は断ったものの、原案と音楽を日本ファルコム、開発は別会社という分業体制を打診され、『イースIV』開発プロジェクトがスタートすることとなります。

PCエンジン版はハドソンが、スーパーファミコン版はトンキンハウスが、メガドライブ版はセガと日本ファルコムの共同チームセガ・ファルコムが担当することになりました。

イース4パッケージ
ハドソン版『イースIV Dawn Of Ys』

日本ファルコムの原案をベースに、いろいろとオリジナル要素を付け加えた豪華版。『イースI・II』と『イースIII』で好評だった米光亮さん編曲によるイースらしいズンダカ節BGMがCD再生で聞ける唯一のイースIV。豪華声優陣を使い、画面端にキャラのカットインが入る演出にも力が入っている。有翼人エルディールの声は池田秀一さん。20数時間遊べるイース。

問題点は、開発陣がイースを分かっていないこと。長山豊さんと伊藤丈夫さんのシナリオアレンジがイースっぽくない。ひどい。オリジナル要素で加えた殺戮王アレムのくだりがすべて安っぽく、くだらないつじつま合わせのために原点である『イース』と整合性の合わない(ファンが納得しにくい)設定を加えた結果、少なくても私の中でかなり悪い印象になった。

さらに悪口を書かせていただくと、ゲーム中盤に『I』の舞台であるエステリアが出てくるわけですが。その扱いが90年代のクソアニメを見ているような内容。リリアとの再会とか、フィーナとの再会とか、どうやったらあんな低級な演出にできるのか。というか、お前イースやってないだろ。仕事なめてんのかくらい、個人的には激怒プンプン。エンディングには卒倒するかと思いました。

と、ネガティブなことばかり書いてしまい、まるで本作が出來の悪い作品のように思われたかもしれませんが、まったくその通りです。ただ、黄金伝説とかけた最強魔法エルドランとか、物言う石という名前でふたたび黒真珠を登場させるとか、悪くない箇所も少なくないわけで。しかも、他のイースIVに比べると一番面白いという…この私の複雑な心境をご理解いただきたいところです。

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トンキンハウス版『イースIV MASK OF THE SUN』

日本ファルコムの原案に忠実に作られた、原作重視のイースIV。何が問題かというと、特に際立ったところがないという点。フツウのどこかにあるようなアクションRPGになってしまい、ストーリー原案と音楽だけでは、日本ファルコムのゲームは作れないんだということを強く感じた一品です。

悪いゲームではないのです。過去作のこともきちんとまじめに勉強しており、「『イース』を作ろう」という意気込みは感じます。しかし、過去作の模倣にこだわるあまり、インターフェースの在り方やスーパーファミコンのアクションRPGとしてどうするか、イースの新作としてのビジョンが定まらなかったという印象です。

電撃メガドライブ
セガ・ファルコム版 『イースIV MASK OF THE SUN』

開発中止。マジでふざけんなよ。ファルコムが関わっているメガドライブ版だけが最後の希望だったわけですが、残念な結果に終わってしまいました。

つづく


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