内々定がやっと出たと思ったら取り消された。簡単な話だ、うつ病という病気に注目され、面倒な人材は要らないと切り捨てられた。
一ヶ月二ヶ月ほど前か、某信用金庫の説明会を受け、履歴書を提出し筆記試験を受けた。ぜひ面接に来てくれと言われ、グループディスカッションを経て面接を二回受け、どれも好感触。一般職で応募したが、何度も総合職で来ないかと打診された。断ったが。
さて、トントンと話が進んで最終面接の次の日に電話が来た。ぜひうちに来てくれと。二つ返事で了承したが、その前に他の選考をすべて終わらせてほしいというようなことを言われた。
「私どもとしてはぜひ来ていただきたいが、本当に来てくれるかわからないので、他の選考が全て終わってから内々定をお出しします」
その日、選考が進んでいた2社を蹴った。すぐに電話をかけ直し、内々定を出してもらったのだった。
一週間後、内々定受諾の誓約書とともに届いたのは、健康報告書というものだった。既往歴を事細かに聞かれる。その中で私を青ざめさせたのは、『うつ病などの精神疾患にかかったことがありますか』という質問だった。
健康報告書にははっきりと、ここで書いたことが嘘だとわかったら解雇の対象になると書いてあった。医者やカウンセラーとも話した。親とも話した。入ってからバレてクビになりたくない。長く勤めたいということもある、嘘をついて後ろめたい思いをして入りたくない。私は医者から、就労可能と言う言葉をもらい、企業に求められれば就労許可書も出すと言われ、勇気をだして本当の事を書いた。
それからすぐに本社に呼び出された。
現在の症状、通っている病院、服薬の状況などを細かく聞かれた。私は全て正直に答えながら、医師からも就労可能と判断されていること、アルバイトも接客だが二年続けていること、大学にもしっかり通い単位も取っていることなど、アピールできることは全てした。人事の男性は真剣な顔で聞きながら、最後には笑って、おそらく大丈夫ですよと言った。この場で内々定を取り消されることはなく、その日は8月に内定者向けのインターンシップがあるということまで聞いて帰った。私はここですっかり安心してしまっていた。人事の男性は、『今日の結果は上に報告し最終判断は上が行う』と言っていた。
それから数日後、再び本社へ呼び出された。
入ると、先日とは打って変わってどこか硬い表情をした人事の男性がいた。
「上に報告し判断を仰いだが、あなたの体のことを考えて、やはり健康な人でも精神に負担をかけることの多いうちの職場では、あなたは」
そこまで聞いて、やっと私は呼ばれた意味を理解した。
足元の地面が崩れていくようだった。
何度も何度も働かせてほしいとアピールした。判断をした人と会わせてほしいとさえ言った。何も受け入れてもらえなかった。
今は症状が良くても、再発したときに責任は自分の会社に来る。
この一点のみだった。
その後のことはよく覚えていないが、気づけば自宅の布団の上でスーツも脱ぎ捨てた下着だけの格好で転がっていた。泣きすぎて頭が痛かった。叫びすぎて喉が枯れていた。
苦しいが、これは書き残しておかなくてはと思う。何をするのが正解だったのか、私にはわからない。既往歴を隠して入社して、その後どうなっていたのかなんてわからない。けれど悔しくて悔しくて、悔しくて惨めで泣けて仕方がない。私はなんのために病気を治そうとしてきたのか。
立ち上がれない。きっともう少し時間が必要だ。けれど現状として私には選考中の企業も内々定の出た企業もない。できるだけ早く動き出さなければと思う。ツイッターでも、たくさんの人に様々な情報をもらった。慰めの言葉もたくさんもらった。本当にありがたかった。同時に自分が惨めで情けなかった。社会の厳しさも知らず、幸せだなんだと大層なことを言って正直者であろうとしていた自分が恥ずかしかった。もっと私はいろいろなことを知り、考えなくてはならない。