携帯3社は2018年5月9日に新たなメッセージングサービス「+メッセージ」を始めた。ところが開始直後、3社のうちソフトバンクだけがアプリの配信を中止した。利用者が過去のメッセージデータを消してしまう誤操作が相次いだためだ。ソフトバンクがアプリの配信を再開したのは、約50日間が経過した6月28日のこと。競合する3社が協力して「打倒LINE」を狙った異色サービスは開始早々つまづいた。

 「アンインストールしたら今までのメール全部消えた(白目)」、「メールアプリが勝手に更新されて、なんじゃこりゃ!と戻したらメールデータ全て消えた。え、嘘でしょ……?」

 2018年5月9日、Twitterに悲痛なつぶやきが相次ぎ投稿された。原因はソフトバンクが同日に配信を始めたメッセージングアプリ「+メッセージ」(プラスメッセージ)のトラブルだ。

 +メッセージは携帯電話番号だけで送り先を指定でき、テキストや動画、スタンプをやりとりできる。NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの携帯3社が5月9日、Android向けに一斉に提供を始めた。3社は公言しないが「打倒LINE」を意識している。

 新サービスはSMS(ショート・メッセージ・サービス)の進化版で、携帯通信事業者の業界団体GSMA(GSM Association)の標準規格「RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)」に準拠する。3社間で相互にメッセージを送受信できるよう、仕様や機能などを統一。アイコンやUI(ユーザーインタフェース)も3社でそろえた。

 ところがアプリの配信を始めて1日近くが経った9日午後10時ごろ、3社のうちソフトバンクだけが突如配信を停止した。再開したのは6月28日。約50日間配信を停止したことになる。

 配信を止めた理由は、利用者が過去の送受信メッセージを誤って消してしまうトラブルが相次いだことにある。

 +メッセージアプリの配信方式は各社で異なる。ソフトバンクは既存のアプリ「SoftBankメール」を自動で更新し、置き換える方式を採った。アプリの自動更新機能をオンにしていた利用者に5月9日から順次配信していた。

 だが+メッセージのアプリのアイコンを見た複数の利用者は、SoftBankメールの後継アプリだとは気づかず「インストールした覚えのないアプリがある」と誤解。アプリのアンインストールを試みた。このアプリは削除できない設定で、アンインストールを選択するとアプリが初期化されて出荷時の古いバージョンに戻る。このとき、これまでSoftBankメールで送受信したメッセージも全て消えてしまった。バックアップを取っていない場合、一度消えたデータを元に戻すのは極めて困難だ。「操作が慣れているSoftBankメールに戻したい」と考えてアプリを初期化し、データを意図せず消してしまった利用者もいたという。他の2社に同様のトラブルはなかった。

図 大手3社におけるメッセージングアプリの移行方式の違い
見慣れないアプリを消そうとしてデータが消えた
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