うなぎを食べているのはどの世代なのか?

(ペイレスイメージズ/アフロ)

うなぎ消費額は2017年で1,189億円

平賀源内の天才的なマーケティングにより夏のスタミナ食として祀り上げられたうなぎは、効果が不確かなのにもかかわらず、現代に至るまで根強い人気を保ち続けています。しかし、最近では絶滅が危惧される事態に陥り、また密漁の横行などあまり印象がよくありません。

本記事では、ややタイミングを失した感は否めませんが、わが国のうなぎ消費について分析してみたいと思います。

うなぎ消費額を総務省統計局『家計調査』を用いて推計し、その推移を見ると、1978年の1,004億円から総じて増加を続け、1997年の1,996億円と推計期間中のピークを付けて以降は減少し、2012年に865億円と底を付けた。それ以降は消費額は回復し、昨年の2017年には1,189億円と1981年の水準近くまで回復してきている。

図1 うなぎ消費額の推移(億円)/総務省統計局『家計調査』から筆者推計(以下同じ)
図1 うなぎ消費額の推移(億円)/総務省統計局『家計調査』から筆者推計(以下同じ)

うなぎ消費額は土用の丑の日に集中

次に、年間を通していつ頃うなぎがよく消費されているのかを確認してみた。図2によると、土用の丑の日のある7月と8月には家計一世帯当たりのうなぎ消費額が盛り上がっていること、特に7月が一番多くうなぎに支出されていることが分かる。図3からは、家計一世帯当たりの年間うなぎ消費額のうち、7月、8月で50%超、7月だけでも40%弱あることが見て取れる。

図2 一世帯当たり月別うなぎ消費額(2017年、円)
図2 一世帯当たり月別うなぎ消費額(2017年、円)
図3 一世帯当たり月別うなぎ消費額のウェイト(2017年、%)
図3 一世帯当たり月別うなぎ消費額のウェイト(2017年、%)

さらに、図4で、7月と8月の日別うなぎ消費額の推移を見ると、2017年では、7月は25日、8月は6日の土用の丑の日がそれぞれの月のピークとなっている。ただし、同じ土用の丑の日と言っても一の丑の消費額が二の丑の6倍と圧倒している。さらに、7月25日の一日だけでうなぎ消費額は166億円にのぼり、年間消費額の14%が消費されている(なお、8月を含めると194億円、16%となる)。つまり、わが国のうなぎ消費は土用の丑の日、特に一の丑に集中しているのだ。

図4 一世帯当たり日別うなぎ消費額(青7月・橙8月、円)
図4 一世帯当たり日別うなぎ消費額(青7月・橙8月、円)

高齢者のうなぎ爆食と若者のうなぎ離れ

図5及び図6は、世代別のうなぎ消費額とウェイトを示したものである。これらの図によれば、わが国のうなぎ消費額1,189億円のうち843億円、7割以上を60歳以上の高齢世代が占め、40歳未満の若者世代はたったの39億円、3%程度に過ぎない。これは高齢世代と若者世代の人口比を勘案しても、高齢世代のうなぎ消費額が大きいことが分かる。しかも、60歳以上の高齢世代の消費ウェイトは年々拡大しているのに対して、40歳未満の若者世代の消費ウェイトは年々低下し、“高齢者のうなぎ爆食”“若者のうなぎ離れ”が同時進行していることも指摘できる。

図5 世代別うなぎ消費額の推移(億円)
図5 世代別うなぎ消費額の推移(億円)
図6 世代別うなぎ消費額のウェイト(%)
図6 世代別うなぎ消費額のウェイト(%)

以上から、やはりわが国のうなぎ消費額は夏、しかも土用の丑の日(一の丑)に集中していることが確認できた。今となっては、平賀源内の呪縛とでも言えるだろうか。しかも、うなぎをよく消費しているのは高齢世代であることも分かった。これは高齢世代ほど過去からの慣習に捕らわれやすいことがあるのかもしれないし、最近の若者のうなぎ離れは所得が一番の原因かもしれない。なぜなら、過去に若者だった世代も経年によりうなぎ消費を拡大させているからだ。ただし、その拡大幅は年々に縮小してきており、いまの若者が高齢者の仲間入りした時、現在の高齢世代ほどうなぎを消費しているかどうかは何とも言えない。もちろん、うなぎに対する態度が、世代によって異なるのか、年齢によるのか、はたまた時代によるものなのかは、コウホート分析等を行わない限り明らかにはならないので、本記事での深入りは避けておきます。

今年の土用の丑の日はこれまでよりもうなぎの絶滅に危機感がより強く持たれた年であり、様々な代用食も増えてきました(ちなみに、私は一正蒲鉾株式会社さんのうな次郎が好きです)。今年は昨年までの土用の丑の日と、どのように違ったのか、あるいは同じだったのか、データが出揃った段階で、また改めて分析してみたいと思います。