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「平成30年7月豪雨」で広範囲に浸水して50人を超える死者が出た岡山県倉敷市真備町では、河川にバックウオーター現象が生じる地形的特徴以外にも、様々な水害リスクがあったことが浮かび上がってきた。予算や人員が限られるなか、全ての対策を取ることは不可能だが、それを補完するソフト対策などにきちんと取り組めていたかどうかが重要になってくる。氾濫した後の対策を誰が責任を持ってやるべきか。新たな課題が突き付けられた。
真備町のなかでも犠牲者が多かったのが有井地区だ。高梁(たかはし)川水系の小田川の左岸に合流する末政川が集落を南北に貫くように流れる。河床が周囲の地面よりも少し高い「天井川」として知られており、決壊によって多くの家屋が被害を受けた。
今回の豪雨では、1つの河川で複数の破堤や越流が目立った。水があふれ出ても川の水位が下がらないほど、大雨で水が供給され続け、様々な箇所で堤防が浸食したとみられる。
真備町の浸水範囲が、洪水ハザードマップ通りだったことも、大雨が長時間降り続いたことを裏付けている。
そもそも洪水ハザードマップは洪水浸水想定区域図を基に作成する。同図は簡単に言うと、計画規模の雨を降らせて、複数の決壊箇所を想定し、破堤点別に決壊したシミュレーションを実施。それぞれで最大となる浸水深を表示したものだ。そのため、一般的には実際の浸水エリアよりも、シミュレーションは過大な結果となる。ただし、今回は破堤が複数箇所に及んだせいか、ハザードマップ通り甚大な被害となった。