New Generation Chronicle:力武健次――在野の孔明、問題解決の彼岸にみたプログラムの本質 (1/8)

回を重ねた「New Generation Chronicle」。自分のサイトなどでこの連載について言及する方も増えてきた。そうした方の中から、今回はネットワークセキュリティの研究者、力武健次氏を取り上げる。

» 2008年02月06日 04時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 ソフトウェア/ハードウェアの分野、そして老若男女を問わず、注目の開発者たちを取り上げてきた「New Generation Chronicle」。回を重ねるごとに、一般に大物と呼ばれるような開発者であっても、新進気鋭の開発者であっても、開発者の真理とでも表現すべき共通項によってゆるやかに疎結合しているような印象を受ける。

 これまで同連載では、「Web2.0」「バイナリアン」「マエストロ」といったスレッドで登場人物をカテゴライズしてきた。当然のことながらここから漏れてしまう才気あふれる開発者は多く存在する。喜ばしいことに、自らのブログなどで100の質問に回答しているケースも目にするようになった。こうした動きをミームの視点から捉え直せば、興味深いことになりそうだ。

 今回登場する力武健次氏もこの連載に呼応した1人だ。同連載でのカテゴリ分けでいうなら小飼弾氏同様、マエストロスレッドに属するであろう同氏は、一般的にはネットワークセキュリティの研究者として知られる人物である。

 当初予期しなかったこうした反応に対し、予定外ではあるが「New Generation Chronicle:サポーターズスレッド」と称して彼らを取り上げたい。ほかのスレッドとの違いは、必ずしも次の質問者にバトンが渡ることを確約できないという点だが、その代わりとして興味深い人物が登場することもあり得る。

 ここでは、同氏が自身のWebページで回答している内容を再構築して掲載する。なお、本記事では一部の回答については省略している。完全版を希望される方は力武氏のWebページをご覧いただきたい。どちらかといえばアカデミックな分野での活躍が目立つ同氏だが、それ故か、質問に対する答えは、開発者というものの存在がうまく言語化されている印象を受ける。長文となってしまうが、開発者には一読の価値があるはずだ。

ネットでボヤく暇があるならバグ直せ。コード書けなかったら……

力武健次氏 CCシャツを着た力武健次氏(撮影:力武健次)

Q1 お名前、年齢は?

力武健次。0x2A(10進で42)歳。よく調べたらMultics(1963年)より後(1965年)だね。

Q2 ネット上ではどんな名前で通していますか? その由来は?

Kenjiと呼ばれてる時代が長い。本名だから。JJ1BDXというのもある。これは1976年から使っているアマチュア無線のコールサイン。最近はDr.Macrofieldというのもつけてみた。Macrofieldという名前を思いついたのは1979年。音楽活動とかで使ってた。

Q4 座右の銘は何ですか?

昔使ってたのは、Fix bugs while you whine on NetNews. If you can't write code、 pay for support.(ネットでボヤく暇があるならバグ直せ。コード書けなかったらカネ払って支えろ)。今は、カネ払う方にシフトしてるかなあ。ダメだなあ。

Q5 ブラウザ、メーラー、テキストエディタはそれぞれどんなものを?

 Opera、Internet Explorer(苦笑)、w3m、mutt、JVim 3.0-j2.1a-skk1.2.17(の私家版)。

 Operaは一画面全部使って表示、ってのが気に入って、シェアウェア時代もサポートしてました。なぜかFirefoxにはご縁がなくて。IEはIEじゃないと嫌だという商売人さんが多いときには使ってます。画像を見たくないときはw3m。そういえばmixiのデザインが気に入らないから、ほかのえらい人たちが配ってくれているCSSを自分で直して入れていますが、これはアドインかな?

 Emacsは特別嫌いというわけじゃないけど、自分では使わない。Emacsじゃないとダメ、という人たちの考え方に同調できないから。メーラーといえば、Gmailは、メーラーといってもいいんじゃないかなあ。

Q6 開発環境はどんなものを使っていますか?

あるものならなんでも。make、RCS、CVS……。subversionを使ってみたいと思いつつも、そこまで行ってない。遅れてるよね(subversionの参考書ってWebで読めるんですね。素晴らしい)。ただ、特にコマンドラインでなければならないというこだわりはありませんよ。AVRならAVR Studioでいいんじゃないかな。Windowsをコマンドラインだけで使うって大変でしょ。

Q7 開発の3種の神器を挙げるとしたら何ですか?

力武氏愛用の筆記用具。ラミーの万年筆とモレスキンのノート、手帳はファイロファックス(撮影:力武健次)

自分自身の思考力は当然として、PCとネットは分けて考えるべきじゃないと思うから1つ、でいいかな。とすると、最後は、書きやすい筆記具(ペンとノート)

Q8 今の自分が形成される上で最も影響があったと思う出来事は?

1974年から1975年(9歳から10歳)まで米国で暮らしたこと。これ以来、いつも居心地の悪い生活を送っています。

Q9 はじめてPCに触れたのはいつごろですか? また、そのときのマシンは何でしたか?

最初のコンピュータ(PCじゃないよ)は、1974年、NTT大手町データ通信局にあったDEMOS(科学技術計算システム)。最初のPCは、AppleIIとPET2001とどっちが先だったかなあ。1978年であることは間違いない。

Q10 最初に触れた言語は?

FORTRAN。PCを触れる前には、APL、Algol、PL/Iなどの話も読んだ覚えがある。その後、8008のアセンブリ言語から、8080を経て、まじめに実機で書けるようになったのは6502のアセンブリ言語とBASIC。Z80機器は、結局自分で動かしたのは2001年で、東芝の互換CPUの上だった(秋月のAKI-80)。

 最初にC言語に触れたのは1984年ごろ。MS-DOSの上でいろいろ遊んでいるうちに覚えた。その後はほぼ同じ時期にVAX/VMSと4.2BSD/4.3BSD UNIXを使うようになった。そこでawkとかBourne shell(sh)とか。

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