自民党の岸田文雄政調会長が、9月の総裁選に「立候補しない」と表明し、3選を目指す安倍晋三首相の対立候補は、石破茂元幹事長と野田聖子総務相の2人となった。出馬に必要な20人の推薦人確保すら難しく、劣勢が伝えられる野田氏だが、「初の女性首相候補」としての存在感を示す。
ただ、7月19日に朝日新聞が報じた「金融庁の担当者を呼び、無登録での仮想通貨交換業を行なっていたとして金融庁から通告を受けていた業者を同席させたうえで、庁のスタンスを説明させていた」という問題は、夫の野田文信氏も絡んでいるだけに、今後、大きな問題に発展しかねない。
報道を受けて野田氏は、「仮想通貨業の一般的な説明を受けただけで、圧力ではない」と、会見で釈明、政治家としての認識不足を露わにした。秘書が呼び付け、監督官庁の担当者が議員会館の野田事務所に出向き、違法を疑われる業者に説明するのは、圧力以外の何物でもない。疑わしき業者は、監督官庁に自ら出向き、「意向を伺う」のが普通だ。
「無登録で仮想通貨交換業」を行なっていたのは、スピンドルという仮想通貨を運営するBLACK STAR&CO。同社は、野田氏が「知り合い」であると認める歌手で俳優のGACKTがスタッフとして参加、「広告塔」にもなっている関係で、スピンドルには「GACKTコイン」の別名もある。
また、野田氏とGACKTの関係をとりもったのは夫の野田文信氏であり、スピンドルの立ち上げ時からBLACK社を支援、後述するように仮想通貨交換業者にスピンドルの上場を働きかけるなど、深く関与していた。創業メンバーには一定割合のSPDトークン(スピンドルの通貨記号SPDの通貨引換証)が割り当てられており、文信氏も権利を持つ。
つまり、野田事務所による金融庁担当者の呼び出しは、「単なる陳情処理」ではなく、夫妻の知人が絡むビジネスで、しかも夫妻の収入にも直結する。他の「スピンドルの政治優遇」や、「売却による利益確定」などの事実が発覚すれば、政治責任は免れず、総裁選出馬どころではない。