トップ > 中日スポーツ > スポーツ > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【スポーツ】

[高校野球]三重・白山高が奇跡の甲子園 10年連続初戦負け、山あいの弱小高

2018年7月26日 紙面から

白山-松阪商 初の甲子園出場を決め、喜びを爆発させる白山ナイン=三重県・霞ケ浦球場で(金田好弘撮影)

写真

◇三重大会 白山8-2松阪商

 山あいの弱小校が奇跡を起こした。第100回全国高校野球選手権の三重大会決勝が25日、三重県四日市市営霞ケ浦球場で行われ、ノーシードの公立校の白山(はくさん)が8-2で松阪商を破り、春夏通じて初の甲子園出場を決めた。就任6年目の東拓司監督(40)は大体大で巨人・上原とともにプレー。「万年1回戦負け」とやゆされた弱小校を「雑草魂」で夢舞台に導いた。

    ◇

 最後の打者を三ゴロに打ち取り、マウンドにできた歓喜の輪。人さし指を立てて喜びを分かち合う選手たち。ミラクルVの白山ナインには、どことなくぎこちなさがあった。

 「スタンドにこんなにたくさんの人がいるのは夢のようです」

 2013年4月に就任した東監督は、観客で埋め尽くされたスタンドを見渡した。就任当初を思い返しながら、目には涙が浮かんでいた。

 白山に赴任した5年前。部員は新入生の1人を加えても5人だった。事実上の休部状態、グラウンドは草が生えっぱなし。草むしりから始まった。何とか部を辞めた生徒を呼び戻し、夏の三重大会に出場。学校での壮行会では、生徒からやじが飛んだ。「出場するのは辞めとけ」「どうせコールド負けだ」

 結果は5回コールドで1回戦負け。やじの通りだったが、大体大で巨人・上原とチームメートだった東監督の雑草魂に火が付いた。「絶対に甲子園に出たい」

 最寄りの名松線・家城(いえき)駅は「2時間に1本しか列車がこない」と知られる。山あいの、田んぼに囲まれた学校。グラウンドは広かった。「広さだけはある」。広い甲子園と同じ距離にポールとフェンスを置き、そこを目がけて打撃練習。冬場には1日1時間半の筋トレで筋力を培った。「最初はまったく飛ばずに遠すぎたかなと思ったけど、ポンポンと飛ぶようになってきた」

 技術と勘は実戦を重ねて養った。エアコンの効かないマイクロバスに選手を乗せて県外などで年間160回の練習試合をこなした。

 就任5年目を迎えた昨夏、初めて初戦を突破。今年は菰野、海星と優勝候補に1点差で競り勝って決勝に進出した。決勝では鍛え上げた打撃が5回に爆発。打者一巡の猛攻で一挙6点を加えて甲子園への道をたぐり寄せた。

 5年前はやじられた壮行会。今年、「甲子園に行きます」と宣言すると、生徒たちから拍手が湧いた。「こういう環境の中で選手たちが努力して頑張ってくれた。それが1番じゃないですかね」。監督と選手の雑草魂が、甲子園への道を切り開いた。 (谷大平)

 

この記事を印刷する

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ