旧優生保護法に関わる国家賠償訴訟で、政府に対して違憲性の見解を示すよう地裁から求められたものの政府が拒否した件。
https://digital.asahi.com/articles/ASL7Q533ML7QUCLV001.html旧優生保護法の違憲性、国は見解示さぬ方針 強制不妊
2018年7月23日05時05分
旧優生保護法により不妊手術を強制されたのは違憲だなどとして、仙台地裁で争われている国家賠償訴訟で、国は「憲法判断は司法が下すべきだ」として違憲かどうかの見解を示さない方針を固めた。地裁から違憲性の認否を示すよう、裁判初期では異例の要請を受けていた。複数の政府関係者が明らかにした。
(略)
旧優生保護法は1948年に制定された法律です。
法律第百五十六号(昭二三・七・一三)◎優生保護法
議員立法ですが、衆参いずれも全会一致で成立しています。
当時の国会議席数の状況
1947年3月衆院選で与党・自由党が131議席、民主党が124議席、野党・社会党が143議席、共産党が4議席。
1947年4月参院選で与党・自由党が38議席、民主党が28議席、野党・社会党が47議席、共産党が4議席。
現在も存在する自民党の前身である自由党・民主党、社民党の前身である社会党、そして共産党を含めて全会一致で成立したわけです。中絶の条件など党によって賛否が分かれた部分もありましたが、賛成したことに違いはありません。
ところで優生保護法については、社会党が熱心に進めたこともあり、責任を社会党や場合によって共産党に押し付けようとする言説をちょいちょい見かけますが、提案した谷口弥三郎参院議員は民主党(現自民党)ですから、現存政党の責任を考える上で自民党は逃れられません。
社民党の謝罪
2018年2月22日
http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/02/22/%E6%97%A7%E5%84%AA%E7%94%9F%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%82%82%E3%81%A8%E3%81%A5%E3%81%8F%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E6%89%8B%E8%A1%93%E3%81%AE%E5%BC%B7%E5%88%B6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/旧優生保護法にもとづく不妊手術の強制について
社会民主党全国連合常任幹事会
(略)
2.旧優生保護法に基づく手術の強制は、個人の尊重や自己決定権、幸福追求権、性と生殖の健康・権利、平等原則をはじめ基本的人権を侵害し憲法違反であるとともに、障がい者や患者への差別であることは明らかです。(略)
宮城県においては、不妊手術の強化を求め、1962年に日本社会党の県議の発言があったことがわかりました。社会党時代のこととはいえ、優生学的思想による誤り、人権意識の不十分さがあったことは極めて遺憾です。関係者の尊厳を傷つけ、多くの痛みと苦しみを与えてきた深刻な問題として受け止め、心からお詫びし謝罪いたします。
(略)
共産党の謝罪
共産党は衆参合わせて8議席しかない状態でしたが、それでも「不作為の責任」を認め謝罪しています。
2018年6月7日(木)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-06-07/2018060702_01_1.html旧優生保護法 国謝罪・補償早く
国会の不作為を謝罪
穀田氏「共産党にも責任」
日本共産党の穀田恵二国対委員長は6日、国会内で記者会見し、旧優生保護法について、「国の法律と施策によって、本人の同意もなく不妊手術を強制されるという重大な人権侵害が引き起こされた極めて深刻で悲惨な問題だ」と述べ、問題解決のために「国の謝罪と補償を早急に行う必要がある」との見解を表明しました。
その上で、「私たち日本共産党も、この問題での不作為の責任があり、心から謝罪します」と発言。「被害者が求める補償が速やかに行われるように努力していく責任がある」と表明しました。
人権侵害であることも認めており違憲かどうかについて直接表現してはいないものの、「国の法律と施策」による「重大な人権侵害」という表現は違憲であると強く示唆していると言えるでしょう。
自民党は?
自民党のウェブサイトを見ても、優生保護法についてはろくに言及されていません。記者会見で質問され二階幹事長が「政府側に会見でこういう質問があったということを伝えます」と答えてる程度です。*1
以上を踏まえた上で・・・
改めてこの記事を見てみましょう。
https://digital.asahi.com/articles/ASL7Q533ML7QUCLV001.html旧優生保護法の違憲性、国は見解示さぬ方針 強制不妊
2018年7月23日05時05分
旧優生保護法により不妊手術を強制されたのは違憲だなどとして、仙台地裁で争われている国家賠償訴訟で、国は「憲法判断は司法が下すべきだ」として違憲かどうかの見解を示さない方針を固めた。地裁から違憲性の認否を示すよう、裁判初期では異例の要請を受けていた。複数の政府関係者が明らかにした。
原告は「旧優生保護法は子どもを産むことの自己決定権を奪い、違憲だ」と訴えた。国は違憲性に触れず、救済立法しなかったのは違法ではないと主張。地裁は「判決で憲法判断をする」とし、7月末までに見解を示すよう国に求めた。国は応じないことになる。
政府内では「当時全会一致で成立した法律を、今になって違憲だったとはいえない」など、合憲と主張するべきだとの声が根強い。ただ、すでに自民・公明両党の与党ワーキングチーム(WT)と超党派議連が救済・支援法案の作成に向け協議している点を重視。最終的に「違憲かどうかを判断するのは司法であり、行政が憲法判断する理由はない」(政府高官)とした。
原告側弁護団は地裁が要請した後の取材に、「認否を示さないことは絶対に許さない」と話しており、反発は必至だ。
当日成立に賛成した政党で現存する社民党や共産党は、優生保護法が違憲ないし人権侵害と認めているにも関わらず、自民・公明政権は、「当時全会一致で成立した法律を、今になって違憲だったとはいえない」といって、違憲性への言及を拒否しているわけですから、卑怯というか、卑劣というか、まあ、自民党・公明党の精神を形にしたような対応ではあります。