参加者は22名でした。
テーブルごとに約5,6人の4つのグループに分かれて、持ち寄ったプロットに対して意見を寄せ合いました。
今回、プロ作家さんが5名参加してくれたので、各テーブルに先生役として1人ずつついてもらうという、非常に豪華な会になりました。
プロ作家のHさんによると、今回のプロット会に提出されたプロットはレベルの高い物が多かったそうです。特に初持ち込みの人のはすごくよかったそうです。
これは、まさにその通りで、今回、アニメ化されたプロ作家さんも匿名で参加していたのですが、その先生から、これはおもしろいので、このあたりの欠点を修正すれば受ける! と評価されていたプロットもありました。
最近は、ファンタジー世界に現代社会の風刺的な要素を盛り込んだ作品が流行していますが、この作品その流れに乗っていました。おもしろい作品とは流行を必ず取り込んでそこに独自の解釈を加えているように感じます。
また、この世界ではエルフは人間の奴隷にされているという設定の小説もあって、最近はエルフの扱いがかなり変わってきたなぁと感じました。
エルフは人間ではないので、奴隷にしても罪悪感を感じにくいのでしょうね。
また、なろう小説を読んでいる人は30代後半がボリュームゾーンで、彼らが求めているのは自分を愛し、世話してくれる母親のような女性であり、奴隷というのはその願望を満たすのに都合が良い、という話をしました。
アングロサクソン系の傲慢な男尊女卑ではなく、自分に自信がないから立場の弱い女性を求めるという弱さに端を発した男尊女卑です。
こういった奴隷ハーレム系の物語は、海外から差別的な思想だと攻撃されやすいので、アニメ化されにくいそうです。
後半は、新人賞を受賞した作家さんによる新人賞対策の講義を行いました。
新人賞を受賞した作家さんと、なろうから書籍化された作家さんは、根底にある思想が正反対です。
前者は、読者の興味を引くような新しいおもしろさを持った作品を作ろう。後者は、とにかく徹底的に読者の好みを調べてそれに合わせた作品を作ろう、という考えです。
なろうから何作品も書籍化されている作家さんによると、なろうで人気を出すための最大のコツは「自分を殺すこと」。すべてを読者に合わせることで、キャバクラ嬢になることだ、と言います。
しかし、新人賞を受賞した作家さんは、それではコピーの拡大再生産になるので、新しいおもしろさを作り出していくことに価値がある、自分がパイオニアになりたい、という思想を持っていました。
また、新人賞そのものがそのような思想で運営されているので、これはと思うような斬新なアイディアの作品は佳作や特別賞を与えられて書籍化されるそうです。
講義の時間が余ったので、誰か前に出てしゃべりたい人いますか? と尋ねると、カクヨムで総合ランキング2位を獲得したというタイリクオオカミさんが、Twitterを活用した上手な小説の宣伝方法と、これからの小説の売り方についての持論を解説してくれました。
タイリクオオカミさんは、いわゆるテンプレートから外れた小説を書いているのですが、更新速度と、Twitterでのプロモーションが抜群にうまく、私がノベル道場という小説の批評依頼ができるWebサービスを開設した時、サーバーが落ちるほどのユーザーをここに連れてきてくれたことがあります。
そのため、テンプレから外れていても、なろうやカクヨムでランキング上位に食い込むことができるという、まったく新しい方法論で人気を出しているので、5人のプロ作家さん全員が食い入るように聞いていました。
彼の方法論を要約すると、これらの小説の売り方、人気の出し方とは、
作者のキャラクターをSNSで発信して、固定ファンを作り、彼らに支持してもらうこと。
小説というコンテンツを売るのではなく、作者のキャラで売ること。
そのために必要なのは、
1.プライベートを開示する自己開示
2.宣伝は最小限にする。宣伝のし過ぎは嫌われ、拡散力が落ちる
3.アンチに対しては、ご意見を参考にしますと応える。これで味方にできる
4.ときどき意図的に炎上を起こす。反対意見がありそうな極論を投下して、議論を起こす。しかし、議論には参加しない。
5.作者のキャラは小説の内容に合ったものにすること。キャラがおもしろければ小説を読んでもらえ、かつ叩かれにくくなる。
ハーバードの最新の社会心理学を持ち出して、講義していたので、大学の講義を聴いているような気分でした。
また、炎上の上手な火消し方法など、過去に実践して効果をあげた方法を披露してくれたので、かなりためになりました。
タイリクオオカミさんの話は凄かったので、また講義をしてもらいたいと思います。