シンパシーを感じていました
たいへん……たいへん長らくお待たせいたしました。
前回まで
竜の魔物が現れた。
シンが首長竜の首を切り落とした。
首狩り族認定。
「まったく、お前たちは……魔法で先制するからジッとしていろ!」
「おう」
「あはは。すいません」
「も、申し訳ございません!」
さっきと同じ失敗をしかけた俺たちにオーグからの叱責が飛んだ。
俺とトニーは慣れたもんだけど、ミランダは非常に畏まって謝罪していた。
「そんなに謝らなくてもいいのに」
「なんでよ!? 殿下なのよ!? 王太子様なのよ!? なんでそんなに軽いのよ!!」
ミランダに、もっと気楽にいこうぜと話しかけたらキレられた。
なんでって言われても……。
「オーグだから?」
「もうやだ……胃に穴が開きそう……」
「大丈夫かい? シシリーさんに治癒魔法かけてもらうかい?」
「なんで皆同じこと言うのよぉ」
ミランダも、結構俺たちとの付き合いが長くなってきたから、その辺りの耐性もできてると思ったんだけど、そうでもないみたいだな。
「大丈夫だって。オーグはそんなことで目くじら……」
『GYAWOOOOOO!!!!』
「おっと、放置しすぎたか」
「怒ってるねえ」
ミランダを慰めようとしたら、竜たちに吠えられた。
あまりに放置しすぎたらしい。
しびれを切らして咆哮をあげた。
「今だ! 全員撃て!!」
『はい!!』
その瞬間を狙っていたのだろう。
オーグの号令で魔力を集めていた皆が一斉に魔法を放った。
俺とトニーを除くアルティメット・マジシャンズ十人から一斉に放たれた魔法は、先ほどと同じく暴君竜を先頭とした竜たちに大きなダメージを与えることに成功し、竜たちの足が完全に止まった。
「うっし!!」
その様子を見て、俺はジェットブーツを起動。
俺の前にいる暴君竜に向かってダッシュした。
『GUWO!』
向かって来る俺に対して、暴君竜が身構える。
そして俺は、先ほどと同じように暴君竜の頭上に向かって飛ぶ……フリをした。
暴君竜の方も、さっきの俺の動きが脳裏に残っていたのだろう。
釣られて頭を上にあげた。
頭が上にあがったことで出来た体の下のスペースに、ジェットブーツを起動して飛び込む。
するとそこには、無防備な暴君竜の足があった。
「もう首狩り族なんて言わせねえからな!」
その暴君竜の右足に向かってバイブレーションソードを一振。
あまり太くない暴君竜の足は何の抵抗もなく切断できた。
『GYAAAA!!』
四肢の一つを切断されたことによる激痛により暴君竜が悲鳴をあげて暴れまわる。
このままだと暴れる暴君竜に巻き込まれるので、もう一本の足を切断しつつ体の下から脱出する。
体を支えるものが無くなったので地面に崩れ落ちる暴君竜。
体の下から脱出する途中だった俺の目の前に、崩れ落ちてきた暴君竜の……。
「あ」
しまった。
つい反射で……。
「ああ……首刎ねちゃった……」
目の前に頭が落ちてきたもんで、つい刎ねちゃったよ。
最後は魔法を使って倒そうかと思っていたのに……。
まあ、竜の魔物の中では一番強そうな暴君竜を倒せたことでよしとするか。
さて、他の二人は……。
「おお、カッケー」
トニーの方は、左右に持ったバイブレーションソードを流れるように振るい、かたい皮膚の鎧竜に確実にダメージを与えていた。
鎧竜の四本の足のうち、二本はすでに無い。
そして、固そうな体は傷だらけだ。
「うーん、分厚いなあ」
舞うようにバイブレーションソードを振るっていたトニーは、鎧竜から一旦距離を取った。
特に苦戦はしていないようだけど、決め手にも欠けているようだ。
そんなトニーは、少し考えた後もう一度剣を構えなおした。
「しょうがな。これでいくか」
トニーはそう呟くと鎧竜に向かってジェットブーツを起動した。
そして、鎧竜の目の前で上空にジャンプしたかと思うと、眼下の鎧竜に向かって風の魔法を撃った。
頭を風圧に押され、這いつくばるように地面に押さえつけられた鎧竜の頭に向かって、バイブレーションソードを構えたトニーが降下してきた。
「ここなら薄いだろう!?」
そう言ってトニーは、鎧竜の頭頂部にバイブレーションソードを突き立てた。
恐らく、鎧竜の皮膚が厚くて体とか首とか切っても致命傷を与えられなかったんだろう。
その点、頭頂部には厚い皮膚など無い。
頭蓋骨を貫通したバイブレーションソードは、そのまま鎧竜の脳を破壊した。
大きくビクンと跳ねた鎧竜は、その後崩れ落ちて沈黙した。
「おー、やるじゃん」
「はは、ちょっと苦戦しちゃったなあ」
鎧竜の体を傷だらけにしてしまったことが、トニーにとっては反省点らしい。
けど、俺の目にはそうは映らなかった。
「やっぱ、二刀流カッコいいなあ」
「そうかい? ところでミランダさんは?」
「ああ、あっちも問題無さそうだぞ」
トニーの様子を見ながら、ミランダのことも見ていたけど、角竜との間合いを図っているのか、緊張を解すためなのか、角による攻撃をジェットブーツを使いながらヒラヒラと躱していた。
「おお~」
「やっぱり現役は動きが違うねえ」
俺もトニーも、自分では鈍っていないつもりだったけど、現役で剣術の修行ばかりしているミランダとは体捌きの面で随分差を広げられてしまったようだ。
「俺らは魔法学院だからなあ」
「しょうがないのかもしれないけど、ちょっと悔しいねえ」
そんな風に自己弁護をしていると、今まで躱すことに重点を置いていたミランダの動きが変わった。
「あ、決める気だねえ」
トニーの言葉通り、ミランダは突進を躱されてバランスを崩した角竜の懐へジェットブーツを起動して飛び込んだ。
そして、心臓があると思われる位置にバイブレーションソードを突き刺すと、血が噴き出すよりも早くその場を離脱。
剣は的確に心臓を貫いていたらしく、大量の血が噴き出し角竜はそのまま絶命した。
おお……そういえば、ミランダの戦闘を間近で見たのは初めてだけど、カッコいいな。
「ふう」
戦闘が終わって一息ついたミランダと合流し皆のもとへと戻る。
すると案の定……。
「ウォルフォード君はやっぱり首狩り族」
「ぐっ! やっぱり言われたか……」
リンから首狩り族の認定を頂いてしまった。
「トニーって意外とエグイのね。脳に剣を突き刺すとか……」
「いや、あれは仕方ないじゃないんだよ。皮膚が厚くてさ」
マリアからの評価に、トニーが慌てて弁明している。
ああいうのって、実際にやってみないと分からないものなんだよなあ。
そんな中、一番の賞賛を受けていたのはミランダだった。
「凄いねミランダ!」
「カッコよかったです、ミランダさん!」
「ねえ! こうヒラヒラ躱してグサッて刺すとこカッコよかった!」
シシリー、オリビア、アリスからの賞賛を受けてミランダは照れ臭そうにしていた。
「い、いや。あれくらい騎士ならできて当然だから」
「そんなことないわよぉ」
謙遜するミランダにユーリが声をかけている。
なんというか、概ね女子からの好意の方が大きい。
これって……。
そんなミランダを見ている俺の肩をマリアが『ガッ!』と掴んだ。
「シン……それ、ミランダが気にしてるから言わないであげてね」
「お、おお……」
そういえば、マリアも後輩女子からよく慕われている。
その辺りにもシンパシーを感じているのかもなあ。
「……なにかムカつくこと考えてない?」
「い、いや?」
そんなやり取りをしている時だった。
『まったく、こんなふざけた連中の相手をしないといけないとはね』
俺たち以外、人間は誰もいないはずのこの場に、俺たち以外の人間の声がした。
「この声っ!」
「まさか!?」
そう思って索敵魔法を使うと……。
「魔人……」
魔都の城壁の上に、複数人の魔人たちが立っていた。
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