メルカリは24日、スタートアップ関係者らを対象にしたイベントを東京都内で開いた。同社は先週、新規事業として始めた3つのサービスを8月下旬に終えると発表したばかり。登壇した小泉文明社長は「違うと思ったらクイックに撤退を判断する。経営者は有限なリソースをどこに充てたらいいのかを考えるべきだ」と述べた。目先は金融事業に人材を割きながら新たな事業の柱を探っていく。
同日の「THE BUSINESS DAY」にはメルカリの組織づくりや戦略を聞こうと、400人近くが集まった。
新事業の開発を担う子会社、ソウゾウ(東京・港)の掛川紗矢香取締役は「本体とは全く違う領域でフリマ(フリーマーケット)アプリ級のビジネスを作りたい」と意気込みを語った。事業開発の担当は10人に絞る一方、メルカリの金融子会社として17年11月に設立したメルペイでは8カ月で200人を雇ったという。
終了する3つのうち、「メルカリメゾンズ」はブランド品に特化したフリマ。「メルカリNOW」は同社が査定した額で買い取った不用品を出品するサービスで、「ティーチャ」は語学や料理など個人のスキルの仲介だ。最も古いメゾンズでも開始は17年8月、ティーチャは18年4月に始めたばかりだ。
小泉社長は「ある事業から撤退したら、逆に他の事業の成功確率が上がったと考えればいい」と話した。6月にマザーズに上場し、時価総額が7000億円を超えた同社だが、まだ設立から5年半ほど。フットワークの軽さで「フリマの次」の模索を続ける。
急ピッチで会社を成長させた秘訣について、小泉社長はいくつかのエピソードを披露。14年3月に調達した14.5億円のうち3億円を5月のテレビCMにいち早く投資したことや、売り上げがゼロだった14年2月にヤマト運輸の幹部に配送サービスの提案を持ち込んだ事例を紹介した。フリマアプリの競合がひしめいていた当時を振り返り、「勝ちきるしかないと踏み込んだ」と語った。
(企業報道部 吉田楓)
[日経産業新聞 2018年7月25日付]