俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:コヘヘ
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「私は愛されないのね」
少女は求めた答えを聞く。
知っていた。自分の歪みはもはや治らない。
それを伝えても、彼は自分を愛せず、これ以上は苦しませるだけだろう。
ならば、全てを捧げよう。その先の『勇者』とやらに。
「そうですね。無理です。
全てを偽れるならきっと『勇者』になれるでしょう。
ですが、それは『魔王』を倒せますが、救う『勇者』にはなれない」
王女は語る。
倒せるが救えない勇者など自分も少女も望んでいないことを知っている。
言わば運命共同体。知らないならそれでよかった。
だが、知ってしまった今もう止めることはできない。
全てはたった一人のために、『本心』から言うだけだ。
少女には全て打ち明けた。
少女は愛されないとはっきり告げた。
「そう、ならば私は『人間』で良いわ」
『力』を誇示するしかできないことは少女にはわかった。
これまでの歪みは絶対矯正できない。
『世界』を魅せつけられようとも、吐き気がするものを先に知ったから。
少女は『世界』を愛せない。致命的に理解し合えない。
ならば『彼』の嫌う『人間』であろうと決意する。
本当の自分をさらけ出すのに躊躇はない。
私は彼の『側』にさえ入られれば良い。
『世界』は確かに素晴らしかったが、それ以上に酷い『世界』を自分は知り過ぎた。
もう手遅れだった。
彼に言えば無理をするだろう。
結果、何もかも失うだろうことはわかった。
私は救われるが、彼は絶対救われない。
ならば、完全にぶちまけて愛されないことを心から願う。
「私は幸せだった。『側』に入れるだけで十分」
もはや、いらないのだと少女は自嘲する。
彼は傷つくだろう。それを知っていて本音をぶちまける。
『側』に入れる優しさを利用するのは...
…私は偽れない。もう、遅い。遅かった。
「私はあなたが羨ましいです。たとえ愛されなくても『答え』が貰えて」
王女は本心から思う。
少女が怒ると知りながら、いや、寧ろ攻め立てて欲しい。
有り得たかも知れない幸せを捨てさせるのだから。
「怒らせて気を紛らわせようとしたって無駄よ。私は『側』にいれるわ」
少女はそれを察して、笑う。
自分からすれば、
王女がもはや『側』にいることを完全に放棄する方が理解できない。
嫌われようが、『側』にいて欲しい。
もう見捨てられたくないから。
「…私は『側』に入れなくても良いのです」
王女は本心から言う。
もうこの世に未練がない程、美しく楽しい『世界』を見たから。
後は『答え』が聞ければ良いだけ。
全部終わったら消える覚悟もできている。
私は幸せだったから。
「そこが理解できないわ。あの『騎士』もそうだけど」
少女と致命的にずれている共犯者を笑う。
最終的には自分は残るだろう。嫌われようが後悔されようが。
どんな形でも。残りたい。
『側』に置いて欲しい。他には何もいらない。
「いいえ、『魔王』に一泡吹かせることができるのは『人間』だけ。
あの無自覚な『勇者』を際立たせるための布石です。
私は幸せでした。本当に何もいりません」
王女は断言する。理解してもらおうとは思わない。
布石の一つだ。もはや失敗は許されない。
目の前の少女の思いを利用した。
もう、自分は許されない。
「奇遇ね。私もよ。もういらないのよ。たとえ嫌われても後悔しないわ。
彼が苦痛でも最後に癒せる『勇者』がいるのなら、
私は道化にだってなってみせるわ。これから話すのは皆『本心』ですもの」
王女の覚悟を察して、少女は笑う。
結局、二人とも同じなのだと確信した。
もはや、自分の歪みは治せない。
この王女に教えられた。自分でもわかっていた、知っていた。
だが、苦痛を与える憎まれ役には最適なのだ。
…最終的に彼が幸せならそれでよい。
これから私は、本心の言葉を言う。
だが、それを受け止めてもらうのは、全て諦めている。
彼と私の『世界』なんて認めてくれるはずがない。
愛して貰えるはずがない。
ただ、私は彼の『側』にさえ入られれば良いのだから。
あの孤独にもう耐えられない。
彼に嫌われようが知ったことではない。
だから、『人間』を、本心をぶちまけよう。
「では、いくわね。…ありがとう」
少女は満面の笑みでその場を後にした。
最後の願いは守られたから。