沖縄県名護市辺野古への米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設の是非を問う県民投票が早ければ年内にも行われる公算だ。沖縄に新基地が必要なのか、全国民が「わがこと」として考える機会にしたい。
翁長雄志知事に県民投票条例制定を直接請求するため市民有志が始めた署名集めは二十三日まで行われ、二十二日時点で必要数の三倍に迫る約六万六千筆に達した。
沖縄で県民投票が実施されれば一九九六年以来。前回は「日米地位協定の見直しと米軍基地の整理縮小」を争点とし、投票者の九割が賛成した。今回は、新基地建設のための辺野古の海の埋め立てについてのみ賛否を問う。
新基地を巡る沖縄の民意は、二〇一四年知事選で建設阻止を掲げた翁長氏が当選したのをはじめ直後の衆院選の県内四小選挙区、一六年の参院選県選挙区で反対派が勝ち明確に示されたはずだった。
しかし、政府は現地の反対運動を排除し、一七年四月から護岸工事を強行している。来月中旬には土砂投入を始める構えだ。
政府側には、幅広い政策や人柄を選ぶ選挙で新基地賛否の民意は測れない、との言い分がある。前知事による埋め立て承認は違法だったとして承認の「取り消し」に打って出た翁長氏と政府との訴訟も「民意がいかなるものかは明らかではない」などの判断により最高裁で知事側敗訴が確定した。
翁長氏は近く、環境保全などの条件を国が守らないとして、取り消しより重い承認の「撤回」に踏み切る方針で、再び政府との法廷闘争が予想される。県民投票に法的拘束力はないとはいえ、埋め立て反対が多数を占めた場合、政府は「(普天間の移設先は)辺野古が唯一」との主張を貫けるのか。
沖縄では十一月に知事選も行われる。翁長氏は再選出馬への態度を保留しているが、対抗馬擁立を目指す自民党などは、推薦候補が勝利した二月の名護市長選の再現を目指して新基地の是非を争点から外そうとするかもしれない。その場合でも、県民投票で辺野古移設の是非が問われることになる。
朝鮮半島情勢の変化で日米安保の意義が問い直されている。なぜ沖縄に基地が集中しているのか、今後も必要なのかは国民全体で考えねばならない問題だ。安保の現状維持を前提とするのなら、今回の県民投票の結果次第で、普天間の国外・県外移設を本格的に検討することも必要となる。そんな覚悟を持って推移を見守りたい。
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