来年夏の参院選から不思議な選挙が行われる。これまで選挙区と比例代表の二つの方法で行われていたのに、その比例代表に「特定枠」が設けられるのだ。
この特定枠は定数を四増(改選数二)してまかなう。当選順位をあらかじめ決めておく拘束名簿式を使い、「島根・鳥取」「徳島・高知」の合区によって、選挙区から出馬できなくなった候補を救済するというのだ。
合区は一票の不平等を解消するためにつくられた制度である。それなのに「特定枠」という理屈に合わない制度をつくれば、不平等の解消という本来の趣旨からの逸脱である。
しかも、現在の自民党の実力からみて、ほとんど確実に当選は見込まれるのだから、誰が考えても、特定枠が「特等席」であると思うだろう。そして「これが選挙ですか?」と問うのではないだろうか。
思い出してほしい。二〇一七年九月の最高裁判決は、たしかに初の合区での選挙を「合憲」とした。だが、不平等の大きさから二人の判事は「違憲」、さらに二人も「違憲状態」だった。多数派が合憲だったのは、合区の評価の他に、次の選挙までに抜本見直しをするという国会の約束を重視していたのだ。
改正公選法は埼玉も二増(改選数一)して、一票の格差を三倍未満に抑えることにはなる。ただ、何とも目くらましの手段だ。抜本改正はいつやるのですか? (桐山桂一)
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