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匂宮家と具平親王家
2009/07/04(Sat)
前回、源氏物語の浮舟についてちょっと考察しましたが、この絡みでもうひとつ気になったことがありました。源氏物語よりも少し時代は下りますが、藤原道長の後を継いだ長男・頼通の微妙な家庭事情はその筋では有名な話で、この人は熱愛する正妻・隆姫女王に不運にも子どもがなかったのです。で、自分が子沢山で大成功した父・道長から「何をしてるこの甲斐性なし!」と怒られた(笑)せいかどうか知りませんが、一度は天皇からの「娘を貰ってくれないか」という申込さえ断ったのに、結局よその女性に子どもを産ませてしまうのですね。
とはいえ、その「よその女性」が奥さんの身内だったことから、話がややこしくなってきます。まず最初が従兄弟にあたる源憲定の娘・対の君で、父の死後頼通夫妻に引き取られて女房になっていたのが、そのうち頼通に目をかけられて男の子を産んだものの、この通房という長男は結局20歳で亡くなってしまいました。
しかしその後、頼通が新たに寵愛するようになった藤原祇子(進命婦)という人が問題です。彼女は頼通の母倫子に仕える女房で、どうもかなり身分低い人だったらしいのですが、相性が良かったと見えて頼通との関係は結構長く続き、実に五男一女をもうけたのでした。
で、この祇子の素性なんですが、一応?藤原頼成の娘ということになっています。頼成は隆姫の異母弟ですからやはり身内ですが、母親の身分が低すぎて父・具平親王から認知されずに養子に出されたらしいのです。しかもさらにややこしいことに、「栄花物語」等によると祇子本人も実は具平親王の落胤である、即ち隆姫や頼成の異母妹であるらしいとか言われていて、何だかもうごちゃごちゃですね。
為平親王女=====具平親王=====?
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隆姫女王 藤原頼成
∥ |
∥ |
∥ |
藤原頼通=====藤原祇子
(関白) | (具平親王落胤?)
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┌――――――┤
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藤原寛子 藤原師実
(後冷泉皇后) (関白)
ともあれ、身分低いにもかかわらず多くの子、特に娘を産んだことで祇子は正式な?妾として認められ、娘の寛子は皇后に、末息子の師実は頼通の後を継いで関白にまで出世します。ただし寛子より先に生まれた息子たちは全員よそへ養子に出されており、これは正妻・隆姫が嫉妬深かったせいだとか、いや既に血筋のいい養子がいたからだとか色々言われていますが、それはひとまず置いておきましょう。
で、ここであらっと思ったのですが、身分高い貴公子と宮家の姫が結婚して、しかしその後宮家の姫の劣り腹(嫌な言葉ですが)の妹が後から寵愛を奪ってしまったというこの構図、何だか匂宮と中の君、そして浮舟の関係と妙に重なります。幸か不幸か浮舟は子を産むことはありませんでしたが、もし匂宮が浮舟誘拐に成功していたら、遠からずこんな泥沼愛憎劇が展開されるのは必至だったでしょうね。
考えてみるとそもそも浮舟の母・中将の君もまた、八の宮の北の方の姪でその死後に宮の寵愛を受けた召人であり、今でこそ考えられないような話ですが、当時はよくあることだったらしいです。ちなみに例の道長もまた、奥さん(源倫子)の姪を愛人にしていたことで有名ですが、倫子は逆に「下手によその女性に手を出されるより身内の方がいい」と割り切っていたようです。まあ彼女の場合は既に大勢の子どもをもうけていて、自らも従一位にまでなった押しも押されもしない正妻でしたから、旦那の火遊びのひとつやふたつで今さら目くじら立てることもなかったのでしょう。
それにしても、具平親王といえば紫式部とも血縁にあたり近しい間柄であったともいわれる人で、源氏物語の夕顔も親王の愛人がモデルだという話もあるそうですが、過去の話ならまだしも未来のことまでこうも重なってくると、一体この作者は何をどこまで見通していたのかとやっぱりちょっと怖くなります。頼通のように子どもを産ませる片端から養子に出したり、かと思えば娘だと手のひらを返したように大切に入内させたりというのもどうかと思いますが、具平親王や八の宮のように認知さえしないというのもあまりに無責任というか、現代の感覚ではやはり「女(と子ども)を何だと思ってるんだ!」と怒りたくもなりますが、逆に言うならそういう時代だったということが「源氏物語」の生まれた一因でもあったのかもしれません。もちろんそうした中でも要領よく生きていった人もいたのでしょうが、多分作者自身はそれができず、その理由も自分自身でよく判っていたのだろうなあと、何となく思いました。
しかしこうして色々調べてみると、「紫式部日記」に登場した折の若き頼通(当時17歳)の言葉「人はなほ、心ばへこそ難きものなめれ(女性は気だてのいいのが一番だけれど、なかなかそうはいかないものですね)」は何とも意味深というか、彼は祇子のどんなところを愛したのだろうとまた気になります。源氏を始めとする平安物語の男主人公はよく、身分低い愛人のことを「気の置けない可愛い相手」として気に入っていたと描かれていますが、結局のところ対等な人格として認めていなかっただけだとすると、それはそれで悲しい話ですね。
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