金融政策は全員が現状維持予想、副作用の議論は活発化-サーベイ

  • 来年3月までの引き締め予想は32%、前回調査から増加
  • 日銀は年内にも10年債の金利目標を上げたいとソニーFH
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

日本銀行が30、31両日に開く金融政策決定会合は、エコノミスト全員が現状維持を予想した。一方で、日銀内では副作用の累積への懸念が強まっており、副作用軽減の必要性に関する議論が徐々に活発化してくるとの見方が出ている。

  ブルームバーグが17-20日にエコノミスト44人を対象に調査した。20日以降に日銀の政策変更に関する報道が相次いだが、23日に再確認できた8人のエコノミストの予想に変更はなかった。

  調査では、金融政策の当面の現状維持を予想する回答者が多く、年内の引き締め予想は1人(2%)と6月の前回調査(11%)から大きく減少した。来年3月までは14人(32%)と逆に前回(27%)から増加した。緩和を予想したのは3人にとどまり、いずれも来年4月以降とみている。

  日銀は2%目標達成を掲げ異次元緩和を始めて5年以上たったが、6月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比0.8%上昇と目標の半分以下、基調を示す生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは0.2%上昇にとどまる。日銀は決定会合で、物価低迷の背景について点検するとともに、超低金利長期化による金融機関への悪影響や市場機能低下など、累積する副作用を軽減する方策を議論する。

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  ソニーフィナンシャルホールディングスの菅野雅明チーフエコノミストは23日の電話取材で、一連の報道を「日銀が思っていたより早く市場とのコミュニケーションを開始した」と述べ、10年金利目標引き上げ時期を「2020年末」から「2019年1月」に前倒したことを明らかにした。

  菅野氏は「日銀が意図的なリークで市場との対話を開始したことに、年内にでも10年債の金利目標を上げたいという意図が強く出ている」と指摘する。ただ、「来年の1月に105円を割っているような円高になっている場合にはやりたくてもできない」と述べた。

  事情に詳しい複数の関係者によると、日銀は早すぎる正常化への動きと受け取られない形で副作用を軽減できる方策に焦点を当てており、長短金利操作やリスク資産の買い入れ額の変更など、現時点で大きな政策変更が行われる可能性は低い。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは調査で「2020年度までの物価見通しが引き下げられ、物価目標がまだ数年実現しないことが基本シナリオとなれば、副作用軽減の必要性に関する議論が今後徐々に活発化していく可能性は高い」と分析した。しかし、実際に政策調整に踏み出すかどうかは「景気や市場動向、政治的了解を得られるかにかかってくる」との見方を示した。

  長期金利柔軟化検討という一部報道が流れた20日夜、1ドル=112円40銭近辺で推移していた円ドル相場はニューヨーク時間に1円程度、円高に振れた。調査では、日銀が近い将来に金利の引き上げに踏み切った場合、何%円高が進むか聞いたところ、回答した36人の平均は6.3%だった。中央値は5%、最大は15%で最少は1%。

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