【ニューヨーク=高橋里奈】米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」は23日、北朝鮮北西部の東倉里(トンチャンリ)にあるミサイル発射施設「西海(ソヘ)衛星発射場」で、主要構造物の解体が始まったとする分析を発表した。6月の米朝首脳会談で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長はミサイル発射施設の閉鎖を約束したとされ、北朝鮮が合意を守る意思を見せ始めたとの指摘もある。
20~22日に撮影された商業衛星写真の分析によると、ミサイル関連の物資を運ぶためのレールが敷かれた構造物などが解体され始めた。解体の作業は「二週間ほど前に始まったようだ」としている。衛星写真では緑の森に囲まれた発射施設のなかに複数の構造物が散在し、一部で解体が始まった様子がうかがえる。
38ノースは発射施設の一角では、資材などの残骸が地面にならんでいるとも指摘した。クレーンや車両などを使い、ロケットや弾道ミサイルを組み立てる建造物の屋根などを撤去した跡もあるという。地下の運搬設備がさらされている様子も判明した。
弾道ミサイルのエンジンの開発に使われたロケットエンジンの試験台なども撤去が進んでいるとみられる。
西海衛星発射場は北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の技術を開発するうえで、重要な役割を果たしてきたとされる。解体の開始について38ノースは、金氏が6月のトランプ米大統領との会談での合意を実行する「重要な最初の一歩」と評価。信頼関係の構築に向けた前向きな姿勢との見方を示した。
北朝鮮は米本土を射程にいれるICBMの開発を進めてきたが、米朝首脳会談を機に発射実験を中止すると表明した。
北朝鮮の非核化を巡る米朝間の交渉は現在難航している。北朝鮮が西海衛星発射場の解体によって会談での合意事項を守る姿勢をアピールし、米国の信頼を得ようとしている可能性もある。