政治団体代表の又吉光雄さんが20日、左腎がんのため亡くなった。74歳だった。世界経済共同体党の代表を務め、「又吉イエス」の名で東京や沖縄で政治活動を展開し、数多くの地方選挙、国政選挙に挑んだ。特定の支持母体を持たず落選を重ねたが立候補を続け、インターネットでの知名度は高く、注目を浴びた。これまでの歩みを沖縄タイムスの紙面などで振り返った。
又吉さんは1944年生まれ、宜野湾市大山出身。63年に普天間高校、68年に中央大学商学部を卒業。設計会社、商事会社、自動車販売会社、税理事務所などに勤務した後、学習塾を経営、世界キリスト教会の牧師などを経て、世界経済共同体党の代表になった。
沖縄タイムスの紙面に初めて登場したのは、1997年6月11日。地元、宜野湾市長選挙に立候補したときだ。これが、又吉さんの初めての選挙だった。
当時、沖縄タイムスの記者として初めて又吉さんに会った崎浜秀也写真部長は「本人が『イエスです』というから、『誰がイエスですか』と再度尋ねると『だから、私がイエスです』というやりとりがあったと記憶している」と話した。
市長選の翌年、1998年6月10日、参議院選挙沖縄選挙区に立候補することを表明した。
この時は、日米安保は必要との認識を示しながら、普天間飛行場は本土に移転し、跡地を農地に転用すると主張。新石垣空港建設計画の中止など17項目を公約に掲げた。
離島も回り、自らの政策を訴えた。
「物質主義に追われ、社会が崩壊している状況。その解決を有権者と考えたい。市場原理万能主義に日本を向かわせない」と語っていた。
又吉さんの勢いは止まらない。
7月12日にあったこの参院選の投票からわずか1カ月。県庁記者クラブで11月の県知事選に出馬することを表明した。
しかし、10月21日にあった県知事選の公開討論会のルールに賛同できず、出席を見合わせた。討論会の幹事は「互いに話し合ったが、ルールを受け入れてもらえなかった」と話した。
政策については
(1)県、日本、世界を利益至上主義・市場原理万能主義に向かわせない
(2)日米安保は当面必要。普天間飛行場は本土へ移設
(3)海・山・川・農地などの保全は人間の精神・心の問題として、また動植物の生態系を守り食糧生産のためにも不可欠
(4)米軍基地のPCB汚染・赤土流出などの環境汚染については個々の処理・使用基準を定め、県が定期、任意に立ち入り調査できるようにすべき―など11項目を挙げた。
得票数は稲嶺恵一候補が37万4833票、大田昌秀候補が33万7369票、又吉光雄候補が2649票という結果だった。
さて、この知事選から3年後の2001年7月の地元・宜野湾市長選に再び挑んだ。この時、革新陣営が候補者を立てられず、保守の候補者と又吉さんの一騎打ちとなり、新聞紙面に初めて顔写真が掲載された。
選挙結果は、比嘉盛光氏が2万1232票、又吉さんは2111票だった。
そしてこの5カ月後の11月、又吉さんは名護市辺野古に移り住み、翌年2月の名護市長選に出馬することを表明した。
「米軍普天間飛行場の県内移設は許されない。本土移設すべきだ」と話し、農林漁業中心の社会実現などを公約として掲げた。
選挙結果は、岸本建男氏が2万356票で当選し、宮城康博氏が1万1148票、又吉さんは80票だった。
そして再び2002年の県知事選。国政、地方選を含めて6回目の出馬となった。
政策は
(1)公共事業により失業者を救済
(2)在沖米軍基地の県内移設反対
(3)テレホンクラブを県条例で廃止して、少女買春事件を防止―などが柱だった。
この時は、稲嶺恵一氏が35万9604票で歴史的圧勝となったが、又吉さんは前回の2649票から1681票伸ばし、4330票だった。
しかし、この知事選後、又吉さんは東京に進出し、沖縄タイムスの紙面ではほとんど見られなくなったが、衆・参合わせて少なくとも11回の国政選挙に立候補していた。
又吉さんが代表を務める世界経済共同体党のホームページによると、国政選挙の出馬にかかる供託金300万円は、軍用地料などでまかなっていたようだ。
ページには又吉さんの選挙にかける熱い思いと、日本の政治へのコメントが綴られている。
「ショートコメント」と題したコーナーは380まで回を重ね、最後のコメントでは安倍首相を痛烈に批判した。
「カジノ法案。首相安倍晋三の頭は優雅なカジノ遊びということであろう。人間性・社会性などどうでもいいといったところだ。こういう政治家に日本を任せてはならない。日本がどうなるかわからないからだ。首相安倍晋三、即刻、退陣せよ。 」(2018年6月16日付)
それから2週間後の6月30日、健康上の理由により、政治活動を終え、ホームページを閉鎖することを告知する。
最後のメッセージは「長い間のご支持・ご支援をありがとうございました。尚、唯一神又吉イエスの名称と存在は従来通りであります」だった。
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